十九ノ罪 偽報
7体の天獣と戦ってから約一週間、地上ではあらぬ噂が流れていた。
——悪魔が世界を滅ぼそうとし、それに天使が対抗している……。
「現在、東京都内で被害が少ない地域は港区、新宿区、墨田区、文京区、江戸川区……の計17区。東京郊外では八王子市以外の27の市町。渋谷区、八王子市、目黒区、世田谷区、杉並区に関しては依然として被害状況、負傷者、行方不明者、いずれも確認できておりません。」
「視聴者からの映像では、未確認の大型の巨大兵器が5機と謎の白い光が確認されています。これは、一体どういうことなのでしょうか?」
「これは、我々の知らないところで我々以上の科学力を持ったどこかしらの国が開発した兵器で、我が国を占領しに来たのではないか!」
「このような巨大兵器を造ることができる国がどこにあると言うのですか!これは明らかに未知の科学力!この羽を見てください!この羽は≪蝿の羽≫を彷彿とさせる。そして、他の巨大兵器にもそれぞれ地球上の生物であろう装飾の様なものがあります!兎の耳の様な長い耳、熊のような大きな手、ライオンのような鬣、蛇のようなしなやかな鞭、これらはある共通点を持っています!」
「共通点?」
「それは、七つの大罪です。七つの大罪とは憤怒、色欲、強欲、嫉妬、傲慢、怠惰、暴食の七つを罪としたもので、その罪ごとに実在の動物が関連付けられているのです。色欲ならば兎、嫉妬なら蛇と言ったように」
「ならこれらはその七つの大罪がすべて関連していると」
「えぇ、おそらく……。そう考えると全てが一致するのです!つまりこれは、地獄の悪魔たちが我々人類を滅亡させようとしている証拠なのです!!」
「そんな、非現実なことがあるか!」
「非現実的と言うならこの巨大兵器がこの現実世界に登場していると言うこと自体が非現実的ではないでしょうか!」
「因みに、この映像の前には5体の巨大生命体が存在していたそうなのですがそれにについてはどうお考えでしょうか?」
「その巨大生命体は恐らく、悪魔たちのペットと言ったところでしょうか……。しかし、お互いがお互いを襲っていたという話を耳にする限り仲間割れをしたか、はたまた、別の種類なのか……。モンタージュの羽を見るにこれは天使の羽と酷似しているような気はしますが。」
「……ということは、その謎の生命体は、この悪魔の兵器を討伐するためにやってきた天使が寄越した存在であると言うことですかね」
「そういう考え方もできると思いますね」
「年末から年始にかけて渋谷周辺で起きた謎の大爆発、あれも恐らく悪魔の仕業であると考えられます!!つまり、あのときから悪魔の進行は始まっており、それをかの有名な予言者ノストラダムスは予言していたのです!!」
コメンテーターのその発言に、周囲は呆れて頭を抱える人、その話に聴き入っている人、唖然としている人と様々な反応をしていた。
「何勝手なこと言っているんだよこいつら!!あたしらはあの化け物達から街の人たち守ってんのに、あたしらが化け物扱いかよ!」
修復したモニターで地上の映像を見ているsin僟隊の面々は動揺を隠せない様子でいた。
「まぁ、悪魔の機体って言うのは間違っちゃいないがな」
「そんなの酷いですっ!それじゃ、私たちは一体何のために……!!」
「おい、アンタら。アンタらが俺らをこんな目にしたって言うのは本当か……!?」
その声は傑たち同様に天使の被害にあった人間の声だった。
彼の周りには同じ被害にあった人物たちがおり、sin僟隊の面々を刃物のようにとがった目つきで睨みつける。
「どうりでおかしいと思ったよ。特にお前、あの時その悪魔の言葉にすぐ乗っかったよな。お前も悪魔の一人なんじゃねぇか?でないと、そんな胡散臭い奴の言うことなんか誰が信じるかよ。」
その声に一番早く反応したのは橋姫だった。
「そんなことないじゃない!!確かに、ここにいる博士は胡散臭いかもしれないけど、私たち人間の事を思っての事だったのよ!!それに、あたしたちがアンタらを地獄に堕としたっ!?ふざけないで!あたしたちをこんな酷い目に合わせたのはアイツら天使のせいよ!!」
荒々しくかつ息もつかぬ勢いで反論する。
「天使は俺たち人間を幸せに導く存在だろ!!そんな存在がどうして俺達を、どんな理由で俺達をこんな地獄みたいな場所に追いやるんだ!言ってみろ!」
‘‘天使は人間を幸せに導く存在‘‘
その言葉に面々は疑問を持った。
天使が俺達を幸せに導く存在なのであればどうして俺達は幸せじゃなく、理不尽な思いを今までしてきたのか。
もし、本当に天使がそういう存在なのであれば、俺達は今頃幸せに家族と共にテーブルを囲み何気ない会話をしながらおいしいご飯を食べていることだろう。
そんな思いが傑の脳裏にふと思い浮かぶ。
「なんだ?図星すぎて何も言い返せないか?」
男は捲し立てるようにさらに続ける。
「やっぱりお前らは、悪魔の手先なんだな!!人間みたいな姿しやがって!その腹の中では俺らの事を食べてやろうとか思ってるんだろう!ふざけんな!!誰もお前らの思い通りになると思うなよ!!俺は昔、喧嘩強かったんだよ!まずはかわいこちゃんに化けてりゃ誰も襲いに来ないだろうってたかをくくってるそこの女からだ!どうせお前の中身は薄着たねぇ豚みたいなクソ悪魔だろっ!」
拳を強く握った男は傑の後ろで怯えている夢魔へと一直線に走る。
「おいおいおい!!男の後ろに隠れるなんてそこまで女になりきるこたぁねぇだろう!」
強く握った拳は傑の脇をすり抜け夢魔の顔面に僅か10㎝のところまで来た時。
傑はガラ空きの腹部へと膝蹴りを入れ、男は少し宙へと浮く。
それは以前の傑の力より少し威力が増していた。
男は腹を抱えのたうち回っている。
そんな男に傑は汚物を見るような目で一瞥し、視線を目の前の集団に戻した。
「俺達が悪魔?俺らは確かに悪魔の力を借りている。それは事実だ。だがな、俺らは一切お前たちに手を下していないし、お前達みたいにクソみたいな言葉もぶつけていない!俺とお前ら、どっちが悪魔だよ……」
静かで冷徹なその言葉に視線の先にいる烏合の衆は肌を震わせる。
「あ、悪魔だ……。」
「こ、こいつらは人間なんかじゃない!」
人々は傑の言葉に耳を貸さず、行動だけを切り取り好き好きに勝手なことを言う。
この光景に他のメンバーも拳を握り怒りを抑える者もいた。
「別にいいんじゃない??どうせ俺ら悪魔の言いなりだし。ま、それにこの人たちは生き返る意思がないってことでしょ?俺達を非難するってことはさ」
三吉は相も変わらず他人事のような発言をするが、後半の言葉に全員が‘‘それもそっか‘‘と頷いた。
「しかし、八瀬さん。あなたは前回の戦いで死のうとしていませんでしたか?」
そんな言葉をかける亜久良に三吉は「そんなこと言ったっけ?」と言わんばかりに舌を出した。
「とりあえず、俺らが人類を滅ぼす存在かどうかはこの先の戦いを見て判断しろ。もしそれでも俺らをそう思うなら仕方ない。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、タダじゃねぇ。その時はテメェらも死の更に先を覚悟してもらうぞ」
傑の表情は正に鬼の形相だった。
第十九話読了ありがとうございました!
今回で第一章完結です!
自分たち人類の為に戦ってきた主人公達でしたが、風向きが一気に変わります!
地獄、そして地上にいる人間達とは今後、分かりあえることができるのでしょうか?
次回二十話から第二章が始まります!こちらは現在カクヨムで現在進行しておりますので更新期間が少し空きますので、ご了承ください。それでも呼んでくれる方は今後もよろしくお願いします!




