十八ノ罪 暴飲暴食
———天獸の爆発1分前
「皆!早くその場所から離れろ!!」
「駄目だ!この大きさで爆発するならどこに逃げても間に合わない!」
「このままじゃ、東京だけじゃなく県の一つや二つ無くなるぞ!」
白い天獸は50m級ほどの大きさに膨れ上がり、その場にいたsin僟隊の4名は逃げるか、鞭で爆発しないよう解析するか、味方に防御力を上げ衝撃に備えるか、もう諦め死を受け入れるかとそれぞれが別の行動をとっていた。
「もう無理じゃね?もう潔く死のうよ。もうしんどいよ」
「馬鹿!諦めるんじゃねぇよ!ここまでやったんだから!まだ何か手があるはずだ!」
「無理ですよ!!あんなに大きくなっちゃったらどうしようもなくないですか!?」
「私が頑張って‘‘防御機構ヲ与エシ粒子‘‘を撒きます!これでどうにか爆発に持ちこたえてください!」
皆がそれぞれの方法で行動する中、彼女だけは違った。
冷静に且つ冷淡に自身の中にある感情を押し殺す。
それは、彼女にとって最大の怒り。
暴食のパイロット 安綱 童子。
彼女は今、天獸に対し激しい怒りを覚えていた。
「父ちゃん。母ちゃんがいるこの街を壊させはしない……!」
「お前を喰ってやる……!!」
童子の感情に呼応するかのようにベルグラの機体は緑色に発光し始め、爆発寸前の白き天獸へと立ち向かう。
「やめろ!童子!死ぬ気か!」
「童子ちゃん!危ないですよ!」
亜久良と夢魔が呼び止めるが、それでも童子は止まらない。
童子の脳裏に、走馬灯のように過去の映像が流れ始める。
(父ちゃん……。父ちゃんの作るチャーハン最高においしかった。また食べたいなぁ。うちが地獄に堕ちた時、周りに父ちゃんや母ちゃんの姿は見えなかった……!なら、まだこの街に二人とも残っているはず!絶対に死なせはさせないっ……!うちの生命に代えても!)
童子の乗るベルグラが蝿の羽を広げ空高くへと舞い上がる。
その姿を遠くから見る二つの影。
その影は、力強くお互いの手を握り合う。
限界を迎えた光の天獸の皮膚は割れ、隙間からは白い光が漏れでる。
その光を吸い込むかのように腹部の口を開き‘‘蝿王の暴食‘‘を発動しようとしたとき、激しい爆発音とともに辺り一帯は真っ白い光に包まれ、それと連動するようにアンフェールの研究室にあるモニターは映像が乱れ、途切れた。
「おい!おい!橋姫!三吉!夢魔!亜久良!童子!」
アンフェールがメンバーの名前を呼びかけるが応答はなく、無言の緊張がその場に走る。
———10年前。
「うち、父ちゃんと母ちゃんが大好きな店を大きくなったら継ぎたい!!父ちゃんの作るチャーハンと母ちゃんの作る優しくてあったかい卵スープが大好きだから!」
「おう!それは嬉しいこと言ってくれるねぇ!童子!」
「そうね~。童子はほんと優しくて親思いの自慢の娘だよ~」
当時幼かった童子にとって、両親が経営するお店は自慢のお家だった。
地元のおっちゃんやクラスの同級生も家族で来るなどとても繁盛して、そのことは童子はとても誇らしく思った。
「いっぱい食べて、大きくなれよ?」
「うん!うち、いっぱい食べる!」
(うちは絶対、命に代えてもこの街だけは守る……!お願いベルグラ……。うちにもっと食欲を……。もっと、もっともっともっと!!食べさせて……!!)
ベルグラの腹部、‘‘地獄の門‘‘と呼ばれる口のようなものが大きく広がり、白色の光を吸い込み上げていく。
その音は正に悪魔の啼き声かの如く荒々しくおどろおどろしいものだった。
一瞬にして視界を白く染め上げていた光は一筋の線となりベルグラの腹部へと吸い込まれ、視界は元の世界へと戻る。
「助かった……のですか……?」
「けっ、楽になれると思ったのに……」
「死んじゃう!死んじゃう!死んじゃ……う……?生きてる!?」
「あたしら、何とか助かったみたいだね」
童子とベルグラのおかげで爆発に巻き込まれることなく無事に生還できたことにより一名を除き安心したかのように胸をなでおろす。
そして、光が無くなったことで、身を隠していた人々の一部は外から聞こえる悪魔のような音の正体を確かめるため、姿を現しその原因であろう宙に浮くベルグラに対し携帯電話を向ける。
「もっと、もっと、もっともっともっともっともっと……」
ついに、光の天獸が起こした自爆の光は全てベルグラの内部へと吸い込まれたが我を忘れたように童子はレバーのボタンから指を離そうとはせず、一心不乱にすべてのモノを飲み込もうとする。
コックピット内のモニターにはDesaire70%の数字が映し出されており、これはD指数が70%に到達していることを表していた。
つまり童子は街を守ろうとした結果、急激なD指数の上昇により暴走状態に陥っていたのである。
童子の暴走は収まる気配がなく、戦闘で破壊されたビルの瓦礫や車両、果てには人々の死体までもを吸い込み始め、周囲は荒地になりかけようとしていた。
やがて、童子の異変に気付いた亜久良、橋姫は童子を止めるために必死に声掛けをする。
「童子!!もう戦いは終わったから止めなさい!」
「安綱さん!もう止めてください!!」
二人の必死の呼びかけも空しくベルグラの暴走は止まる気配はなく被害はどんどん拡大していく。
「そうだ!夢魔ちゃん!何か相手を落ち着かせるタイプの技って持ってないの!?」
「え?え?え?落ち着かせるタイプですか!?」
橋姫の問いかけに夢魔は必死にアストに搭載された武装を調べる。
「あ、あった!!これでどうですか!?」
兎の耳からは青藤色の鱗粉がベルグラへと向かうが全て腹部の地獄の門へと吸い込まれていく。
そこで、橋姫は亜久良のルシイドに自身の機体であるレヴィーを上空へと連れて行ってもらい、蛇の鞭でグリモンの口を塞ごうとした。
「お願い!!その大きな口を閉じちゃいなっ!!」
暴走状態のベルグラの怪力にはレヴィーの力では敵う訳もなかった。
そこで、亜久良は傲慢のsin僟の能力を使いレヴィーの能力向上を図る。
「これで何とかなりませんかね……!」
‘‘力ヲ与エシ粒子‘‘
ルシイドの羽根からは紅い粒子が現れレヴィーの中へと吸い込まれていく。
それと同時に橋姫の瞳に映るモニターにはレヴィー自身のパワーが上昇していることを表されていた。
「その力でもう一度、彼女の口を塞いであげてください!!」
亜久良の言葉に、橋姫は「わかった!!」と返事をし再度、蛇の鞭を使いベルグラの腹部を塞ぎ込む。
「お願い!!お願いだから落ち着いて!!!」
ベルグラは野獣のような唸り声を出し、鞭を千切ろうとした。
夢魔と亜久良はそれぞれの機体を使いベルグラの両腕を抑え込み、行動を封じようとする。
「童子ちゃん、落ち着いてください!!」
「このままではこの街が無くなりますよ!!」
***
3人がベルグラと格闘し10分程経った頃、アストの催眠が効いてきたのかベルグラは力を段々と弱めていき、やがて機能を停止したかのように落ち着き、その影響がパイロットにも作用したかのように安綱 童子も眠りについた。
「やっと落ち着いたか……」
「皆さん帰りましょうか……」
「えぇ……」
***
この戦闘から約一週間後、彼等は人類の敵とみなされる。
第十八話視聴ありがとうございます!
今回は童子メイン回でした!
今回詳しく過去を書くことができなかったのでまたいつか詳しく安綱 童子という少女の話を詳しく掛けたらなと思います!
次回十九話、第1章の終わりです!どうぞよろしくお願いします!




