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VSダンジョンボス

 

 翌日、アインスたちはダンジョンの攻略を再開した。

 相変わらず魔物のいない、罠が設置されているばかりのフロアを延々と歩かされる過酷な環境が広がっていた。


 それでも水や食料の心配をしなくて良くなった分、心身ともに大分余裕がある。

 特に水に関しては、オアシスの階層で手に入れた秘宝で無限に生成できる。水が冷たいのもありがたい。飲むだけでなく、頭がのぼせそうになった時、秘宝のスイッチを起動して、シャワー代わりに水を被って熱中症対策もできる。

 攻略のペースも上がり、今日は2階層進むことができた。




「へえ、火起こし上手いじゃない」

「キリエが上手いんじゃなくて、ミネアが下手なんだよ」

「事実だから反論できねえ……」


 その日の野営から、キリエが火や食事の支度を積極的に手伝うようになった。

 カルミナとも会話が弾み、パーティーに馴染んで来たようだ。

 焼きあがったランドイーターの肉を、皆で火を囲みながらもぐもぐと食べた。


「気になっていたんだけど、その光源石って何か特別なもの?」


 食事が終わり、キリエが鞄から取り出した光源石を眺めている所、アインスが訊ねた。


「うん。母ちゃんの形見。母ちゃん冒険者だったんだ」


 大きさで言えば、Eランクダンジョンで手に入るくらいの大きさか。


「お母さんも、キリエちゃんと同じ【暗殺者】だったの?」

「うん。ランクは低かったけどね。それにこの前魔物から泉を守ろうとして死んじゃったから……」

「そうだったんだ……」


 それで身内を失ったとなれば、余所者に対する怒りも尚更だっただろう。

 沈んだ顔になったアインスたちに、「兄ちゃんたちが気にすることはないよ」と慌ててフォローを入れる。


「それにしても、キリエの【隠密】は見事なものだったな。私の鼻や、アインスの探知眼まで搔い潜るとは」

「自分の存在と30分以内に残した痕跡を、他の人が感知できなくなるスキルなんだ! 凄いでしょ?」

「30分は凄いな。普通なら3分が限度なのに」


 他の同役職の者たちと比較しても、キリエの潜在能力は高いのかもしれない。

 いずれは、うちのギルドに引き抜くかもしれんな。とカルミナが漏らすと、キリエは嬉しそうに頭を掻いた。


 暫く語らった後、交互に夜の番を交代しながら就寝につく。

 日中2~3階層ほど奥へ進み、夜に休む。それを交互に繰り返す形で攻略は進んだ。

 疲れがたまってキリエの足が遅くなった時、カルミナがキリエをおぶって進んだ。キリエもカルミナの好意に甘え、カルミナの背中に身を預けていた。

 夜の番も、アインスだけでなく、キリエはミネアやカルミナと一緒に担当するようになった。二人と仲良く会話をしている様子は、まるでかわいい妹分ができたようだった。


 そして、5日ほど経ち、何やら雰囲気の違うゲートの前にたどり着き、一行は足を止める。


「……恐らく最終層かと」


 アインスの言葉に皆力強く頷き、武器の状態や装備を整える。

 水分を補給した後に、残っていた魔力ポーションを補給し、魔力をみなぎらせてから皆でゲートを潜った。


「僕から離れちゃだめだよ」


 戦えないキリエは、安全地帯があれば【隠密】でそこに避難し、隠れられるような場所がなければ、アインスやミネアの傍で保護する算段だ。良くも悪くも誰からも認識されないため、知らぬ間に死んでしまうかもしれない。




「ここは……」




 ゲートを潜った先に広がっていたのは、ブロックで周囲を囲まれた閉鎖空間。

 不思議と周りは明るく見える。どこから光が差し込むわけでなく、空間そのものが一定の明るさを保っているような不思議な光景だ。


「あった。ダンジョンコアだ」


 アインスが示した先には、ダンジョンの心臓部ともいえる、コアが浮かんでいた。これを壊せばダンジョンは全ての機能を停止し、外へ繋がるゲートが生まれる。中に生息していた魔物も攻略後、一定時間を過ぎればゲートと共に消滅する。


「気を付けて。コアを守るボスがいるはずよ」


 前回のダンジョンではお見えになることはなかったが、通常ダンジョンの最終層には、コアを守る魔物——ボスが存在している。

 ボスがどんな姿や形をしているのかは、相対してみないとわからない。


「! 来るぞ!」


 階層全体が大きく揺れたかと思うと、壁の一部に穴が開き、そこから大量の砂が流れ込んできた。


「この砂……沈む!」


 足元に砂が溜まっていき、歩こうとするも、底なし沼のように砂底に引きずり込まれそうになる。


「皆! こっち!」


 ミネアがすぐさま壁に杖を突き立て、階段のような足場を形成する。


「兄ちゃん、あれなに?!」

「多分だけど……サンドゴーレム!」

「何それ?!」


 階層に砂が溜まっていき、その嵩を少しずつ増して、階層全体を埋め尽くそうとしてくる。

 そしてその砂の一部が、上半身だけの巨人の姿に隆起し、アインスたちを睨んできた。


「砂と一体となって、襲い掛かってくるSランクの魔物だ!あたりの砂を自在に操って、砂の中に生き埋めにしてくる! 捕まったら埋め殺されるぞ!」


 カルミナが襲い来るサンドゴーレムを、剣で切り伏せるが、切った傍から辺りの砂を吸収し、すぐさま体を再生してしまう。


「ミネア! 砂の出てくる壁を塞げないか⁈」

「やってるけど、すぐに別の穴をダンジョンが開けてくる! 先にダンジョンコアを潰さないとじり貧よ!」


 ミネアが階段の増設と、天井付近の空間の拡張を同時にこなしながら、壁の穴を塞ぐが、すぐさま別の穴が開いて、そこから大量の砂が溢れ出てくる。

 この砂を止めないことにはサンドゴーレムを倒せない。

 倒すためには、ダンジョンコアを壊してダンジョンの機能を停止させる他ないが——


「……砂の中にコアを隠したな!」


 サンドゴーレムが砂沼の中にダンジョンコアを取り込んで、その姿をとらえることができない。


 さあ、どうやってコアを壊す。

 カルミナたちが頭を悩ます中、アインスはマジックバックからクロスボウを取り出し、【探知眼】を発動した。


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