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攻略準備。いざ砂漠の国へ

 ダンジョン攻略に当たって、連盟の管理する城下町で、食料や道具の準備を行うことになった。


「また厄介なところにあるダンジョンだな」

「砂漠の国……【マグナサバナ】ですか」


 マグナサバナは国土の7割が砂漠に襲われた国だ。攻略対象のダンジョンは砂漠の中にある街の傍に存在している。

 転移の巻物(スクロール)は登録した地点にしかワープできない。最寄りの転送地点ワープした後は、そこから目的地まで。何日かかけて砂漠の中を歩いて進むことになる。

 ダンジョン攻略分の水や食料だけでなく、道中の分まで纏めてこの城下町で補充しなければならない。暑さや寒さ対策の装備品の準備も必須だろう。



 城下町の宿を借り、アインスがマグナサハラの環境や生息する魔物、そして死亡者の詳細データをもとに、ダンジョンの攻略計画を作成し、共有する

 アインスの作成した攻略計画に、異を唱える者はいなかった。反対にアインスから懸念点などをカルミナたちに質問をした。


「アンデッドは今回は出ないだろう。ダンジョンがわざわざアンデッドにするような人材はいない」

「心配なら聖水を少しだけ用意しましょう。少量ならそんなにかさばらないし」


 前回の会議に比べ、議論が弾む。

 アインスも気兼ねなく意見するようになったからだろう。


 攻略計画が固まると、一行は市に出て、攻略の準備に取り掛かろうとした。

 席を立ったカルミナたちに、アインスは新たな冒険者証と一緒に渡されたゴールド袋を机の前に置く。


「これ、ギルドのお金にしてください」

「……いいのか?」


 前のギルドで不当に支払われなかった給料ということは、カルミナのギルドに入る前の、アインスの所有物。つまりアインス個人の財産だ。


「……わざわざ共有資金にしなくても、私やアインス君の私財にしてもいいのよ?」

「さりげなく自分のものにしようとするんじゃあない」


 人の金を懐に納めようとした画策したミネアをカルミナが小突いた。


「いいんです。そんなにあっても使わないし。……それに、今回は最高の攻略にしたいです。ギルドの為に役立ててください」

「……わかった。私が責任を持って預かろう」


 アインスの金は今回の攻略準備の為の費用に宛てることに決定した。

 一行は冒険者で賑わう市に出向く。


 追加で購入したのは大量の水や食料だけでなく、日中の陽ざしから身を守るための、薄手の長袖の服と、夜間の寒さから身を守るための厚手の防寒着。砂原の砂底を潜って強襲する魔物が多い為、それをあぶりだすための音爆弾。あとは魔力を素早く補給するための魔力ポーションや、怪我をした際に治癒力を向上させる回復効果のあるポーションだ。


「あれも買っていこう」


 カルミナに連れられて入ったのは、秘宝店だ。


「店主。あのクロスボウを売ってくれ」

「おお、カルミナ様。あれに目を付けられるとはさすがの選定眼ですな」


 少々小太りな店主の男が胡麻をすりながらやってくる。


「Bランクダンジョンで見つかった秘宝です。特殊なまじないがかかっているらしく、装填された矢が、一定の距離内ならどんな環境下でもまっすぐに、一定の速度で飛んでいきます」

「強風下や、水中でも扱えるということだな」

「おっしゃる通りです」


 持ってみますか。と店主の提案に、カルミナがアインスに向かって頷いた。

 店主から渡されたクロスボウは、少し重いが持てなくはない。

 試しに構えてみると、「中々様になっているぞ」とカルミナが太鼓判を押す。

 これは良いかもしれない、と目を輝かせるアインスを見て、「いくらだ」とカルミナが店主に訊ねた。


 提示された金額にアインスが目を剥いたが、カルミナはマジックバックからゴールド袋を取り出し、一括現金払いで買い取った。


「いいんですか? こんなに高価なものを」

「構わんさ。役に立ててくれ」


 パーティーの金とはいえ、元々はほとんどがカルミナの私財だろう。

 片目を瞑って見せたカルミナに、アインスも観念したようにクロスボウを受け取った。

 好意を引け目に感じるよりは、好意に応えられるような冒険者になろう。

 そう決意したアインスは、力強い表情でクロスボウをマジックバックにしまう。


 矢じりに塗るための毒をいくつか購入し、攻略の準備は整った。


 準備を整えた一行は、市場の北にある転移場へと向かう。


「行き先はマグナサバナだ。巻物(スクロール)を頼む」


 青い印が押された依頼書を見て、受付の者がマグナサバナ行きの巻物を取りだした。

 通常は依頼の承認印は赤いインクで押されるが、一部依頼では青い印で承認印が押される。青い印は巻物使用許可の証明だ。対象地域への転移巻物が無料で使用できる。

 転移の巻物は、普通に買えば一つ100万ゴールドは下らない高級品だ。それをタダで利用できるのはありがたい。

 最も、利用できるのは一定以上の難易度の依頼だけだが。


「お気をつけて」


 青い印に見合わない低ランクダンジョンの攻略依頼書を見て何かを察したのか、転移前に一言添えて、一礼してきた。

 どうやらこういうケースは珍しくはないようだ。


「行くぞ! 砂漠の国【マグナサバナ】!」

「おー!」「はい!」


 カルミナの号令に、ミネアたちが元気よく答える。

 転移の魔方陣が輝きを増し、カルミナたち一行を目的地の国へと転送した。



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