この弱さが僕の始まり
「先日無茶をして、皆を危険にさらしてしまい、申し訳ありませんでした」
頭を下げるアインスに、カルミナは弱弱しい声で返す。
「……気にするな。私も顔を殴って悪かった」
「……今後のことで、ちゃんと話がしたいと思って」
アインスの言葉に、カルミナの背中が少しだけ強張ったように見えた。
「正直な話、カルミナさんやミネアさんの前でいいかっこしようと思っていました。……自分の能力を証明しようと、皆の前で胸を張れるようになりたいと思って、二人を頼る選択をしなかった」
「……」
「……でも、やっぱり自分はまだまだで、二人のような優秀な冒険者にはまだなれそうにないです。だから……僕は……」
カルミナは少しだけ息をのんで、唇を噛んだ。
カルミナの緊張が対面しなくても伝わってくる。
勇気を振り絞るように、アインスは一呼吸おいてから真っすぐと顔を上げた。
「二人の隣で、胸を張れる冒険者になりたい‼ 僕を信じてくれる二人の期待に応えたい‼ いい女の隣に並んで立てるような、いい男になりたい‼」
「——!」
「だから……」
心の内を叫んで、ほんの少しだけ涙があふれてきた。
弱い自分を曝けだすのは、情けないし、怖い。
だけど、きっとここがスタートだ。
バーティーの未来、そして僕だけの浪漫。
組織として、個人として成長するために必要なこと。
熱を持った目じりを力強く拭ってから、アインスは深く頭を下げた。
「……いっぱい成長したいです。冒険者として、いろんなこと教えてください。今後ともよろしくお願いします」
それでは、ともう一度一礼してから、食堂を後にしようとする。
ドアに手をかけたところで、「あ」と何かを思い出したかのようにアインスは間抜けな声を上げた。
「これ、ミネアさんからです」
近くの机に酒瓶を置いて、改めて一礼してから食堂を後にした。
誰もいなくなった食堂。
カルミナはよろよろと立ち上がって、アインスが残していった酒瓶を手に取った。




