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いざ、ダンジョン攻略

 ダンジョンの中に入ると、そこには延々と続く青い空の下、爽やかな風が吹く広大な草原地帯が広がっていた。

 外の草木がほとんど生えていない岩山とは似ても似つかない光景だ。理屈は分からないが、生えている草も、それを支える大地も、空も風も太陽も、全て本物と同じ性質を持つ。

 アインスはダンジョンに何度か潜ったことはあるものの、何度見ても、ダンジョンと言うものは人知を超えた存在だと再認識させられる。


「……早速来ます」

「スモールウルフか」


 すぐさま【探知眼】を発動させると、こちらに迫ってくる10匹ほどの魔物の存在があった。

 魔物の構成要素、魔力の大きさから、その正体をスモールウルフと判定。狼型の魔物の中でも個体が小さい代わりに、高い草木に身を隠しながら獲物を狙ってくる、集団での狩りが得意な魔物だ。魔物のランクはEだが、群れを成して襲ってくるため、ソロの冒険者からは厄介者扱いされている。

 そんな魔物の正体を、アインスが説明するよりも先に、カルミナは言い当てる。


「右3頼む。残りは私がやる」

「あいよー」


 カルミナの指示に、ミネアは気だるそうに返事をし、杖を構える。


「【液状化】」


 ミネアが杖に魔力を籠め地面に突き立てると、周囲の地盤が途端に緩くなり、その一部が陥没する。


「ガルっ?!」


 小柄な分、素早い動きが得意な魔物だが、地盤が緩んだことにより、それぞれの個体は足を取られ減速、或いはその場で転んでしまう。


「上出来だ」


 そんな無防備な魔物たちを、カルミナは一瞬の剣捌きで切り刻んだ。


「当然でしょ」


 そして右から迫ったスモールウルフたちは、今度は突然硬質化した地面に体を固定され、ミネアが地面を並のように変形させ、飲み込むように押しつぶしてしまった。

 物質の形や状態を操る、【物質魔法】。その中でも指折りの実力者であるミネアにかかれば、この程度の魔物など造作もない。


「……なんで、接敵する前から魔物の正体がわかったんですか?」

「走行の速度や、体から発する匂い、群れで迫る点から推察したまでだ。これでも場数を踏んでいるものでな」


 アインスの疑問に、カルミナは得意げに答える。

 接敵前は200mほどの距離はあったはず。その距離の音や匂いも聞き分けるカルミナの五感も凄まじいが、瞬時に正体を推察できるだけの、冒険者としての経験値も大したものだ。

 カルミナの能力を凄いと思いながらも、早速の出番を奪われてしまい、活躍を見せたかったアインスからすれば複雑な気持ちだ。


「次の階層への入り口はあっちか?」

「……はい。その通りです」


 またも【探知眼】を発動させる前に、次の階層への入り口を言い当てる。


「向こうの方から魔物の息遣いが多く聞こえるのでな。あちらの方ではないかと言う推測だ」


 カルミナの言う通り、次の階層への入り口前には、ダンジョンは魔物を多く配置していることが多い。そのため、基本的には魔物が多く配置されている場所へ向かっていけば、次の階層への入り口が見つかる。


 その魔物の配置から、現場で攻略の段取りを決めることも、【探知眼】持ちの斥候(スカウト)に求められることの一つではある。が、カルミナほどの冒険者になれば、ある程度は自身の五感のみで解決してしまえるようだ。

 低ランクのダンジョンの攻略では、階層もそれほど広くはなく、魔物のフィールドサインを利用し、生息地を上手く推測すれば、階層の入り口を推測することもできた。

 【探知眼】を利用すれば、その推察は更に確かなものになるが、外れたら外れたで階層を総当たりすればいい。低ランクのダンジョンで斥候(スカウト)が軽視される理由の一つだ。


「気にしなくていいわよ。コイツが化け物なだけだし。それに——」

「君の主な仕事は、環境変異が起こってからだからな」


 そうだった。あくまでここは変異ダンジョン。

 自分の思考が、斥候(スカウト)としての仕事をこなすことから、活躍の場を奪われたという敗北感に変わっていたことを自覚し、意識を切り替えようとアインスは自分の頬を叩いた。


 まだここはダンジョンが用意した難度の低い階層だ。環境変異を起こせば周囲を取り巻く環境は更に厳しくなり、魔物のグレードもアップする。

 自分の出番がないということは、それだけ他のメンバーが優秀な証拠だ。


 僕は今、カルミナさんたちの予想を後押し、穴埋めをする役割でいい。


 そう自分を慰め、アインスたちは次の階層へと続く歪んだ空間——【ゲート】を発見した。


 出現する魔物たちを難なく蹴散らしながら、一行は次の階層へと続く歪んだ空間の中へと足を踏み入れた。


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