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美味しい依頼

 

「では、アインス君の加入を祝って、カンパーイ!」


 その晩、アインスの歓迎会も兼ねて、カルミナのギルドの初の会合が行われた。

 ギルドとして成り立つためには最低3人以上の冒険者が必要になる。3人というのは、ダンジョン攻略依頼受注に必要な冒険者の、最低人数だ。


 3人以上いればダンジョンを攻略できるため、ギルドを名乗れるようになる。


「あんたがEランクの斥候(スカウト)を仲間にするって連絡くれた時は驚いたわ」

「すいません、Eランクなんかが仲間になっちゃって」

「聞けば、【変異ダンジョン】を生還してきたんでしょ? 変異ダンジョンを一人で生還できるなら、斥候(スカウト)としてSランクを名乗ってもよさそうだけど」

斥候(スカウト)のランク昇格基準は、ダンジョン攻略の功績に左右されるからな。いずれは実力相応のランクが名乗れるようになるさ」


 カルミナが誘った冒険者、という事実を重視し、ミネアはアインスのランクについては気にしてはいないようだ。カルミナのことを信頼しているのだろう。


 Sランクという響きに、アインスは少しだけ浮かれた表情で温いジュースを飲んだ。


「そんなスペシャルな私たちだが、ギルド新設となっては、当然、ギルドランクは最低ランク……Eランクからのスタートとなる」

「SSランクのカルミナさんが新設するギルドでも?」

「当然だ。冒険者ランクを反映しては、腕っぷしだけ強い馬鹿がダンジョンにはびこることになるからな」


 腕っぷしだけ強い馬鹿――と聞いて連想されるのは【強者の円卓(ゴライアスサークル)】の連中のことだ。彼らを揶揄しての発言だ。


「じゃあ、基本はダンジョン昇級試験に挑んで、ギルドランクを上げていくことが当面の目標なわけですね」

()()はな。試験を受けるためには魔物の討伐依頼をこなして、活動実績を上げる必要があるのだが」

「もちろん、討伐のクエストは受注済みよ」


 ミネアがマジックバッグの中から、大量の依頼書を取り出した。

 EランクからAランク相当の魔物の討伐依頼書が全部で10枚。これをこなすだけでもかなりの量の報酬になるだろう。


 同時に受注できる討伐依頼の量は冒険者ランクによって異なる(加え、同エリア内の依頼しか受けられないという制限もある)。アインスでは1つしか受注できないのに対し、Sランク冒険者であるミネアは10個も同時受注ができるようだ。


「ふっふっふ~、凄いでしょ~。Sランク冒険者だからって言って、職員さんが特別に沢山紹介してくれたのよ~」

「すごい、こんなに受注できるなんて……!」

「……ああ、こんなに、だな」


 何やら意味深なカルミナの言葉に、アインスは首をかしげる。

 真意が理解できていないアインスに、カルミナが「いずれ分かる」と言って麦酒を飲んだ。


「さて、さっそく君に斥候(スカウト)としての仕事が山ほどある」

「え? 討伐依頼ですよね? 僕ができることあります?」


 斥候(スカウト)は基本的には戦闘スキルを持たない役職だ。己の肉体のみで低ランクの魔物を討伐できる斥候(スカウト)もいるにはいるが、もちろんアインスにそんな力はない。


「君にしてもらいたいのは、この魔物たちの生態の詳細について調べてもらうことだ。私の持っていた魔物図鑑の情報は、もう頭に入っているな?」


 この街に来るまでの間、アインスは馬車で過ごすほとんどの時間を、カルミナが渡してくれた魔物図鑑の内容を暗記することに努めていた。

 物覚え自体は良い方だし、魔物の生態を調べるのはアインスにとっては楽しい部類のことだったので、その内容はしっかりと頭に刻まれている。


 力強いアインスの頷きに、カルミナも満足そうに頷いた。


「この街もいろいろと訳ありかもしれん。明日は忙しくなるぞ、少年」


 何が訳ありなのかはわからないが、断定しない言い回しから、確証を得てからじゃないと話せない内容なのだろう。

 その日は久しぶりにお腹をいっぱいにしたアインスは、念のため、明日討伐予定の魔物の生態について復習をしてから、固いベッドで眠りにつくのだった。


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