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攻略を終えて

 

 一行がシャノンの身柄を拘束し終えると、階層の中心にゲートが出現した。


「ようやく外に出られるな」

「は~、疲れた。早く帰ってゆっくり休みましょ……って、スケイルたちは?」


 ようやく一息つけると、胸をなでおろすも、スケイルたちの姿が見えないことに気が付き、ミネアが辺りを見渡す。


「おいおい、ダンジョンをクリアしたんだぜ? 何か忘れちゃあいないかい?」


 暫く周囲を捜索していた所、スケイルが何かを手玉に取りながら、ナスタと共に現れた。


「ちょっと、あんたどこに行って——って、それ」

「まさか、ダンジョンの秘宝か?」

「ああ。どうやらシャノンが奥の方に隠してようだね」


 スケイルが手にする謎の首飾りを覗き込むカルミナたちに、「ああ」とスケイルが頷いた。


「こいつが最奥部にいたのも、自分の記憶を読み取ったダンジョンが、僕を殺せる秘宝を生み出していることにワンチャンかけたからだろうね。ダンジョンは人の願いを反映して秘宝を生み出すから」

「でも、隠してあったってことは」

「ああ。彼女の目論見は外れたみたいだ」


 確かに、ダンジョンにとってもスケイルは天敵だし、シャノンの意志を組むのであれば、スケイルを殺すための秘宝を生み出す可能性もあるのだろう。


 だが、結果的には上手くいかなかったみたいだ。シャノンの意志を無視し、別な秘宝を生んだのか。それともその秘宝を作る前に、スケイル自身が来てしまったか。真相はダンジョンにしかわからない。


「一体何なんです? この首飾り」


 綺麗な虹の宝石が付いた、煌びやかな首飾り。

 まるで生きているかのように、七色に変化し続ける宝石の輝きは、思わず深く見入ってしまう。


「へえ、綺麗な宝石。高値で売れるんじゃ?」

「君は相変わらずお金の事ばかりだね」


 目を輝かせて首飾りを見つめるミネアに呆れるも、「なあ」とスケイルが改まった様子で、カルミナに話しかける。


「この秘宝、僕が買い取ってもいいかい?」

「え?」


 世界中のほとんどの——いや、もしかすれば全ての秘宝を手にしているかもしれないスケイルが、わざわざ許可を取りに来るとは珍しい。


「そんなに凄い秘宝なのか? だとすれば私たちも買取を検討したいのだが」


 今回は同じパーティーでダンジョンを攻略した手前、秘宝の買取権はカルミナたちにもある。


「多分だけど、君たちの役に立つような秘宝じゃあないよ」

「……? いったいどんな秘宝なんだ?」


 カルミナの疑問にスケイルが答えると、その説明を聞いた3人が一斉に難しい顔になった。


「便利かも、しれんが……」

「用途がわかりませんね……」

「ねえ、買い取るって言ったけど、どれぐらいで買い取ってくれるの?」


 ミネアが訊ねると、スケイルはミネアに人差し指を突き立てた。


「……まさか、兆?」

「京だ。1京ゴールド出そう」

「「「1京?!」」」


 マジックバッグの相場が10億~5億ほど。これでさえ普通なら3生分は遊んで暮らせるほどの金額だ。

 用途はわからないが、マジックバッグを山ほど持っているスケイルがわざわざ欲しがるほどの秘宝だ。

 ミネアが冗談交じりに吹っ掛けてみるも、まさかそれを上回る単位の金額を提示され、3人の声が裏返った。


「ハイハイ決まり‼ 1京ゴールドお買い上げありがとうございまあああああああす‼」

「ギルドに支払うのであって、ミネアちゃんに払うわけじゃないからな」

「その秘宝、何かに使うのか?」

「ああ」


 スケイルが人の悪い笑みを浮かべたところで、カルミナは深く尋ねるのを辞めた。どうせろくでもないことを考えているに違いない。


「じゃあ、外に出るとしよう」


 スケイルに促され、一行はシャノンを引きつれながらゲートを潜った。


 ゲートを潜ると、瓦礫の山で埋め尽くされた、連盟本部の大広間に帰ってきた。


 城の外に出て、スタンピードで荒れ果てた町を見下ろして、皆が複雑な表情になる。


「酷い有様だ……」


 カルミナが小さく息を吐くも、「悲しんでいる暇はないぜ」とスケイルはニタニタと笑みを浮かべる。


「一か月後には、連盟復興のパレードを行う。それまでに城も街も修復しなきゃなあ?」

「「「はあ?!」」」


 こいつは何を言っているんだ、と言わんばかりの悲鳴をカルミナたちがあげた。


「不可能じゃないさ。だってここには、あの地下通路を1日で形成できる、超優秀な物質魔導士がいるのだから」

「ちょっと待て?! あんた、またあたしをこき使う気なの?!」

「金は出すから馬車馬の如く働いてもらうぜ~。拒否権があると思うなよ~?」

「そもそも、こんなことがあったんだから、そんな焦って復興する必要もないんじゃ……」

「馬鹿いえ。こんなことがあったからこそ、早々に元気な姿を見せつける必要があるんだよ」


 アインスがミネアを庇うも、スケイルはそれを鼻で笑って一蹴する。


「あれだけやられても連盟はピンピンしてますよって、世界中の愚か者共に思い知らせてやらなきゃなあ? つーわけで、ミネアちゃん暫く借りるぜ~」

「他の物質魔導士も手配しますね」

「いやああああああああああああ‼ カルミナああああああ‼ アインスくうううううううん‼」

「……諦めろ」


 ミネアが泣いて助けを求めるも、申し訳なさそうにカルミナが首を振る。

 やるといったらスケイルはやらせる男だ。カルミナたちがどう言おうと聞く耳を持たないだろう。スケイルもナスタも、泣き叫ぶミネアを見て、心底面白そうに笑みを浮かべている。


 見渡す限りの青空の下、荒れ果てた連盟の街に、気持ちのいい風と共に、ミネアの悲鳴が響き渡った。


 その元気な声を聴いて、ああ、また日常に戻ってこれたのだと、アインスとカルミナは顔を見合わせて、可笑しそうに微笑みあった。


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