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最後の戦いへ

 

「ナスタ、右から10体。炎系の魔法で焼いちゃって。カルミナは漏れ出た奴らの残党狩りだ」

「わかりました」「わかった」


 まるで安全な道でも歩くかのように、スケイルは危険なダンジョンの中を、足を止めずに進んでいく。

 道中の魔物の処理をカルミナとナスタに任せながら、ただひたすらに、ゲートのある方へと真っすぐ歩く。

 途中で出てくる罠や行き止まりなどは、スケイルの【消滅魔銃(イレイサーガン)】で全て消し飛ばしてしまう。


「あんたってほんとにゲートの位置がわかるのね」


 ひたすらまっすぐ進み続け、目的のゲートに辿り着く。今までのダンジョンでの苦労は何だったのかと言わんばかりの成果に、返ってミネアが呆れかえった。


「ああ。僕は斥候として鍛錬を積んでいるからね。ゲートの位置ぐらいお茶の子さいさいさ。でも、今の君にもこれぐらいはできるだろ? アインス君」

「「え?」」


 カルミナとミネアがアインスを見ると、アインスも「ついさっき出来るようになったのですが」と謙遜しながら続けた。


「魔力を万遍に広げるのではなく、特定の範囲に集中して流すと、ゲートの探知妨害を打ち破れるようになったんです」

「それが【絶対探知】。相当な魔力と、魔力コントロールが必要になるが、ダンジョン攻略を助ける【斥候(スカウト)】の必殺技さ。この世界で、君と僕しか出来ない」

「凄いじゃないかアインス!」


 カルミナに褒められ、嬉しそうに頭を掻いたアインスに、「だが」とスケイルが釘をさす。


「それに頼りすぎるなよ。いつダンジョンが【絶対探知】を対策してくるかは分からないぜ。最終的に斥候の腕を決めるのは、知識と経験だよ」

「はい。それもスキルも極めていきます」


 頼もしいアインスの返事に、「よろしい」とスケイルも上機嫌だ。


「次の階層は豪雨のエリアだね。風も強く、氾濫した川を沿って歩く階層だ。全員川に飛ばされないように注意すること。足元がぬかるんでるから、ミネアちゃんの魔法で地面を整えながら進もうか」

「「「「了解」」」」


 ゲートに入る前に、耐水コートをマジックバッグから取り出し、身に着けてからゲートを潜る。

 ゲートの先に広がる階層は、スケイルの言う通り、豪雨のエリアだ。


 全員が風に吹き飛ばされないよう、纏まって歩く中、スケイルは皆の進軍ペースに合わせて、雨の中を悠々と進む。


 どうやら雨も、風の勢いも【保護消滅膜(バニッシュバリア)】が消滅させてしまうらしい。皆がずぶぬれになって進む中、スケイルだけ通常の装備のまま、濡れることもなく進み続ける。


「森林のエリアだ。ゲートを潜ってすぐ魔物の群れがある。ミネアちゃんが足止めしている間に、カルミナが地上の敵、ナスタが空の敵を仕留めるように」


「砂漠のエリアだね。この階層で採れた樹液を肌に塗りな。紫外線対策になるはずだ。砂が柔らかい地面には魔物がいるぜ。警戒を怠るなよ」


「洞窟の階層だ。微妙に形の違う石畳には気をつけろ。罠がある。この手の原始的な罠は魔力の反応で探知できないから、アインス君も気を付けるんだ」


 ゲートに辿り着く度に、スケイルは次の階層の対策を準備させてから、ゲートを潜って奥へ進む。


「あいつが味方だとダンジョンに同情してしまうな」


 感心したような、呆れたような様子でカルミナが笑う。

 一方でアインスは、スケイルが自分に対して、【斥候(スカウト)】として手本を見せているのだと感じていた。


 早く攻略することだけを考えるなら、スケイルの力を使って、強引に各階層を突破することもできるだろう。


 だが、スケイルはスピードを重視しながらも、出来得る限りの指示を飛ばし、仲間を指揮してダンジョンを踏破しようとしていた。

 それはきっと、同じスキルを持つアインスの手本になるよう、スケイルが配慮してくれているに違いない。


「……」


 だが、それは【斥候(スカウト)】としてだけなのか。

 アインスの中に、過去の記憶と、夢の中で聞いた言葉が渦巻く。






 きっとあの人が見つけてくれる。





 母が信じていたのは、きっと——


「次が最終階層だ」


 そして、とあるゲートの前に辿り着いたとき、スケイルの言葉に皆が気を引き締めた。

 魔力ポーションや回復ポーションを飲み、魔力や疲労を回復する。


「さて、アインス君」


 スケイルが改まった表情でアインスに向かい直る。


「道中で言ったけど、君の作戦が実行不可だと判断した場合は、なりふり構わず、僕はシャノンごとコアを破壊するよ」

「……はい」

「皆、気を引き締めていこうか」


 スケイルの言葉に、皆が覚悟を決めるように頷いた。


「最後の戦いだ」


 ゲートを潜ると、何もない石造りの空間が広がっていた。

 本来ダンジョンボスがいる階層。


 その中心に、1人の人物が待ち構えていた。


「改めてごきげんよう、クソ犯罪者」

「……スケイル」


 忌々し気にスケイルを見つめるシャノンの体には、血管のような文様が浮かび上がり、そこをダンジョンコアから溢れる魔力の波が伝っている。


 スケイルもスケイルだが、シャノンの体も、どんどん人間ではなくなっているのだろう。


攻略(つぶ)しに来たぜ。このダンジョン」



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