8話 ラスボスを倒したからって物語が終わるとは限らない
「この組織も今日で終わりだ。お前を倒せば全て終わる」
「君の目的は分かっている。彼女は君に渡す。それでいいかな?」
「もちろん彼女は返してもらう。だが、俺の目的はもう一つある」
「なんだいそれは?」
「人間に過干渉するお前を秩序として裁くためだ。さあ覚悟しろ」
秩序は刀をアートルムへと向ける。
「そうか、では君を倒せばもう僕を邪魔するものは無いということか。ならば君には消えてもらう」
アートルムは何もない空間から拳銃を取り出し秩序に向ける。
「なるほど。その能力で武器を製造していたのだな。やはりあなたを倒せば組織の武器の大本も断てるわけだ」
「この膨大な武器を前に勝てるとでも?」
そう言われて秩序は胸を張って答える。
「ああ、勝てるさ。絶対に」
「そうですか。では彼女は返しておきましょう」
アートルムは何もない真っ白な部屋の壁からベッドに横たわっている少女を出現させた。
「あなたがもし勝てれば連れて行っていいですよ」
「ああ、分かった。じゃあ始めるか」
「ええ、観客も集まったようですしね」
秩序は言われて振り向くと戦いに勝って部屋に入って来たアルとリアがそこにはいた。
アートルムはその隙に持っていた銃を発砲する。
秩序はそれに気付くと刀で銃弾を防ぐと距離を詰めようとする。
距離を詰められぬように機関銃を二つ取り出し乱射するアートルム。
それに対し回り込むことにした秩序はベッドの上の彼女に流れ弾がいかない様に誘導する動きを見せる。
「出来れば起こしたいところ何だけどな。アルがやってくれると楽だな」
彼女を見て少し呟き走る秩序。
機関銃の攻撃が止んだ隙に距離を詰めるがアートルムは煙幕弾を取り出し一旦逃げる。
(何をするつもりだ?まさか彼女を人質にする気か⁈)
秩序が一瞬考えるために止まったその隙に近づきナイフで腹部を刺してきたアートルム。
「体が少しふらつくだろう。そのナイフにはアルコールが塗ってあったのだ。さすがの君でも効くだろう?」
「くっ!」
立つこともままならず膝をついてしまう秩序。
煙幕が晴れ刀の射程の範囲外で銃を構えるアートルムの姿が見える。
「これで終わりだよ。君の負けだ」
「俺を甘く見すぎじゃないか。こんな体でもお前の銃弾が俺に届く前にお前を斬れる距離だぞ」
「それは不可能だ。煙幕が広がっている隙に見えない地雷を設置させてもらった。これがある限り君は僕には勝てない」
「そうだな、今のままだったらな」
そう余裕そうに言うとある方向を指す。
「まさか‥‥‥。なぜだ、なぜ目覚めている⁈」
秩序が指差した方向は先程アートルムが出現させたベッドの上で寝ていた少女だ。
「彼女はお前に封印される直前に俺の中に逃げ込んだんだ。だから後は誰かが起こせば意識が戻る状態になっていたんだ」
「だがそれでどうなる。あいつの力は弱まっている。あいつじゃ僕は倒せない」
「俺の中にいたあの人がいなくなったってことは元々あったものが戻ってくるってことなんだ。俺本来の力が‥‥‥。まあそういうことだ」
「だからそれでどうなるんだよ!この状況からは勝てない僕の勝ちだ!」
「それはどうかな。やれば分かるさ。じゃあ行くよ」
秩序はまず目にも止まらぬ速さでベッドまでたどり着く。
「バカな。速すぎて地雷が起動しないだと‥‥‥⁈」
アートルムは啞然とした。
「ありがとうアル、この人を助けてくれて」
「大丈夫だよ。困った時はお互い様だからね」
「あと、その聖剣借りていいかい?」
「うん、いいよ。はい、どうぞ」
秩序はアルから聖剣を借り受けると先程いた場所へとものすごい速さで戻っていった。
「まずこの地雷を排除する。聖剣よ俺に力を貸せ!」
秩序がそう叫ぶと聖剣が光を放ち左肩に透明な王冠が浮かぶ。
そして地面に聖剣を突き刺し光の波動yを流し込んでいった。
みるみるうちに地雷は爆発し光に消えていった。
「まさか、僕の地雷が一気に無くなるなんて」
うろたえるアートルムをよそにその背後を取る秩序。
逆手で持った聖剣をアートルムの背中に突き立てようとするがそれは気づいたアートルムによる銃撃によって失敗に終わる。
だが、聖剣を置き去りにし銃撃を避けてアートルムの正面に入り刀で斬る。
「まだだ。まだ終わらない‼」
しかし、アートルムの執念によって刀はアートルムの取り出したチェーンソーで真っ二つにされてしまった。
「甘いよアートルム」
秩序は冷静に二つになった刀をアートルムの両足の太ももに突き立てる。
「ぐわあああああ、許さない!!」
アートルムは痛みで部屋中に響く叫びを出すも直ぐに秩序への反撃に出る。
だが、それも秩序には読まれており背後に回って聖剣を回収する。
そして両手で持ち光を聖剣に集め繰り出す。
「これで終わりだ。エクスカリバー!」
下から繰り出した一撃は光の束が地を這って襲い掛かるかのごとき攻撃だった。
そのまま光の勢いで壁に押し付けられたアートルムは気絶してしまった。
◇
「さてこいつどうするかな」
グリムは拘束したアートルムをどうするか話し合っていた。
「そうね。創造主様がいればいいんだけど」
囚われていた少女もといグリムが先生と呼んでいた女性であるステラ はそう提案する。
「誰だよ。創造主様って?」
「私とアートルムを作った人。ついでにこの世界も」
「めちゃくちゃすごい人じゃん。どこにいるの?」
「知らないけど‥‥‥」
「じゃあダメじゃん」
グリムは鋭くツッコム。
「どうすんのさ?」
「私が呼べば来るんじゃないかな」
「そんな安直な」
「大丈夫、大丈夫」
「ホントに大丈夫かなぁ」
グリムは心配そうに呟き、ため息をつく。
「じゃあ呼ぶね。創造主様ー来てくださーい。ゼロ様ー」
ステラの声が少し響いた後にしーんと静まり返る部屋、何も起こらない。
「ほら、やっぱりダメじゃん。来ないじゃん」
「あれー、おかしいなぁ」
悩んでいる二人の周りが暗くなる。
「ん?なんだ」
ふと上を見上げるとグリムと同い年くらいの白髪の青年が空中に立っていた。
「あっ!ゼロ様だ」
「えっ!あれが?ホントに来ちゃったんだ」
その青年は降りてくるとアートルムの前に立った。
「やあ元気だったかいアートルム、ステラ?」
「「はい、お久しぶりです」」
アートルムは目を覚まし、ステラもふざけるのを止め、二人は頭を下げて挨拶をする。
「君たちもありがとう」
ゼロはグリムや後ろで話していたアルとリアにも話しかける。
「いえ、自分の役目を果たしたまでです」
「僕はリアを助けたかっただけなので」
「あたしは捕まってただけだし」
三人は口々に返答する。
「さて、アートルムの処罰だけどね。人間になってもらおうと思うよ」
「それだけですか」
アートルムは不思議そうに尋ねる。
「ああ、この世界はもうボロボロだから管理する必要は無いからね。他の使い道を探すことにしたよ」
「ちょっと待ってください。それじゃあ帰る場所が無くなってしまいます」
アルは焦った様子で詰め寄る。
「大丈夫、君たちはアートルムを止めてくれた功績を称えて願いを叶えてあげようと思っているんだ。さあ君たちの願いはなんだい?」
ゼロは四人に願いを問う。
「俺は特にないかな」
「私もないです」
グリムとステラはそう答える。
「では、君たち二人はアートルムと同じくゼロの世界で暮らすことにしよういいね?」
「「はい」」
「さて、残りの二人はどうするのかな」
「僕は国に残ります。あなたの世界には行けません」
アルはそう答える。
「あたしはアルと二人であなたの世界で暮らしたいです」
「リア何言ってるんだよ。僕は残るんだよ」
アルは焦った様子で言う。
「ならどっちも取ればいいじゃない。国を守りながら違う世界で暮らすの。できますか?」
ゼロは答える。
「ああいいよ。なんでも叶えてあげるさ」
ゼロが何もない空間に手をかざすとドアが出現した。
「このドアを通れば違う世界に行けるよ」
ゼロはまずアートルムをドアに放り投げる。
「ああ、あとアル君の願いはもうかなえたからね。君の聖剣の鞘に国につながるゲートを開いといたからあとは自由にしてね」
「はい、ありがとうございます」
アルはそう言うとリアと共にドアを通って違う世界に行ってしまった。
「やはり君にしてよかったよグリム君」
「ありがとうございます。やりがいのある仕事でした」
「この扉を通ればその瞬間から君はもう秩序ではないからね。普通の人間として生を謳歌するといいよ」
「はい、今までありがとうございました。お疲れ様です」
グリムはそう言うとステラと共に扉を通って行ってしまった。
「じゃあね、秩序という名の死神。いつかまた‥‥‥」




