5話 急いでいる時は考えるのを止めるとたぶん良い
「なんだ今の音は⁉」
「王城の方から煙が出ています。恐らくそこで何かあったのでしょう」
すぐに状況を把握し、行動する二人。
「俺も行くよ」
「ありがとうございます。心強いです」
二人は身支度を済ませると家を出て王城に向かった。
◇
「ここの一本道を抜ければもう王城に着きます」
「ああ、分かった。それよりさっきも話したが攻撃されても極力気絶させる方針でいくんだったよな」
「はい、なるべく穏便に済ませたいので」
「了解だ」
そう走りながら二人は話すと城の入り口まで辿り着く。
入り口には厳つい顔の男が剣を持って立っていた。
「悪いがここから先は第一王子の命により何人たりとも通すことは出来ない」
「そうか、でも力づくで通らせてもらうよ。行くよグリムさん‼」
「ああ」
二人は武器を抜き男の間合いに入る。
「ふん、やれるものならやってみろ」
男も剣を抜き、二人まとめて斬ろうと剣を振るう。
それに対しアルが剣で斬撃を受け流し、その隙にグリムが懐に近づき一発、重いパンチをお見舞いしてやった。
「かはっ!」
男は少し宙に浮くと呻き声を上げその場に沈んだ。
「よし、次行くか」
「あ、はい‥‥‥」
アルはグリムがあっさり倒したことに驚き、気の抜いた返事をする。
二人は気絶させた男を縛ると城の中に入っていく。
「さっきの奴が第一王子とか言ってたな」
「はい、おそらく王族の中の内輪揉めが起きているのかもしれません」
「争うとしたら誰と誰なんだ?」
「そうですね‥‥‥。第一王子と第一王女だと思います。王位継承権を巡って争いそうですし」
「そうか。じゃあどうする、止めるか?」
「はい、出来れば穏便にしたいですね。王位継承権を巡って争うなんてよくないですし」
「そうか」
状況の整理を付けると二人は目的を明確にする。
他に敵がこの階にいないことを確認するとさらに話し合う。
「もう敵がいないみたいだな」
「そうみたいですね、多分残りの兵を王室の入り口に配置してるんだと思います」
「そうか、じゃあそこが正念場だな」
「ええ。あそこの階段から上にのぼりましょう。敵がいる可能性もあるので気を付けて行きましょう!」
「ああ、行こう」
警戒しつつ、かつ急いで階段まで辿り着き一段飛ばしで上り始めた。
◇
「ふう、やっと着いたか」
「はあはあ‥‥‥。はい、あそこの部屋ですね。わかりやすく見張りの兵がいますね」
「ああ、三人いるな。時々言い争っている声が聞こえるが、例の王子と王女か?」
「ええ、おそらくは」
階段を上りきった二人は部屋の前から見えない死角の位置でひそひそと喋っていた。
「で、どうしますか。部屋の前の兵士を倒してから入るしかないですよね」
「いや、それだと中の兵士にもばれてめんどくさくなるだろ」
「じゃあどうするんですか」
「俺に良い考えがある」
そう得意げに言うとコソコソとアルにグリムは自分の案を話す。
「えーそれで大丈夫何ですか。心配なんですけど‥‥‥」
「これがこの状況における最適解だ」
真顔でサムズアップするとグリムは手足のストレッチを始める。
グリムに続きアルも渋々同じようにストレッチを始める。
「準備はいいか。行くぞ」
「はい、こうなったらやってやりますよ」
そう二人は覚悟を決めると部屋の扉に向かって全速力で走り始めた。
気づいた兵士が止めようと立ち塞がるが二人の勢いは止まらず部屋に突っ込んでいく。扉の前にいた兵士をまとめて押し込んで部屋に入る。
「ほら、うまくいっただろ」
「果たしてこれ、うまくいったんでしょうか」
二人は部屋にいる全ての人間の視線を浴びる。
部屋にいた兵士たちは二人に向かって剣を向ける。
「まさか、お前がここにくるとはなアル」
偉そうにアルに喋ってくる男が兵士に攻撃を控えさせた。
「あいつが第一王子か?」
「はい、そうです」
「知り合いだったのか」
「ええ、ちょっとした顔見知りです」
二人はひそひそと王子にばれない様に話す。
「横のそいつはなんだぁ、お前の騎士か弱そうだな。ここに来たってことはお前も王の座を狙っているってことか」
「いや違うよ。争いを止めに来たんだ」
「ハッ、また綺麗事かよ。虫唾が走るぜ。いいぜ、邪魔な王と王女と共に処刑してやるさ。やれお前たち」
そう言うと兵士に処刑の命令を出した。
「こいつらも殺っちゃダメなんだよな」
「そうですね、出来ますか?」
「まあ、出来るよ。アルは見てな」
「はい!」
そう言うとグリムは斬りかかってきた兵士五人に対し刀を使わずに向かった。
まず部屋にいた二人の兵士の内男性の方の股間を蹴り上げる。怯んだ隙に側頭部にもう一発蹴りを入れて落とす。
もう一方の女性の兵士には剣を持っていた手を折れない程度に捻り、動きが止まったところを腹に蹴りを入れて吹っ飛ばして壁に打ち付けた。
「次はお前らだ。来いよ」
さっき扉の前にいた三人の兵士は突っ込まれたことでグリムのことを警戒していた。そのためグリムの挑発には乗ってこなかった。
「ならいい。俺から行くぞ」
グリムは先程やっつけた兵士二人が落とした鋼鉄で出来た鞘を拾う。
「な、何をするつもりだ」
グリムの行動に身構える兵士三人。
「今更構えても遅い」
三人が剣を構えようとしたその瞬間、なんとグリムは拾った鞘を三人の顔面に投げてきたのだった。
三人は何もせずに気を失ってしまった。
「これであとはあんただけだ」
グリムは第一王子の方を指差す。
「そうですね。観念してください‼」
続けてアルも指差す。
「フッ、どうやらお前の騎士は中々に強いようだな。だが、俺の方も強い奴と手を組んだのだ。お前らなんかもうお終いだぜ」
そう言うと隣の部屋から修道服を着た二人組がやってきた。
一人は茶髪で長い髪の女、もう一人はおかっぱの金髪の男だ。
よく見ると二人組の片割れの肩に人を担がれていた。
「!あれは、リア‼」
「それってお前の双子の姉か⁈」
「はいそうです。でも、どうして‥‥‥?」
アルが驚いていると担いでいない方の女が話しかけてくる。
「この子は組織のために必要なのよ。だから連れて行かせてもらうわ」
「そんなことさせない‼」
アルは担いでいる男に向かっていく。
「あらダメよ」
そう言い短剣を懐から出しアルを刺そうとする。
「危ない!」
グリムがその攻撃を庇うとアルを諭す。
「一旦落ち着け、あいつ等は強い」
「はい、すいません」
一旦距離を置くとグリムは二人組に話しかける。
「お前ら組織はその子で何をする気だ」
「教えるわけないでしょ。それにあんたはここで私に始末されるのよ。危機感が足りてないんじゃない?」
「ワイはもういくぜよ。あとは任せた」
二人組の内の一人の男はそういうと窓から逃げてしまった。
「ああ、リアが!」
「あなたたちは逃がさないわよ」
グリムとアルの前に女が立ち塞がる。
「アル‼二人でこいつを倒すぞ。それからさっきの奴を追うぞ!」
「はい、分かりました」
「ふん、言ってくれるじゃない。死ぬ前教えてあげる。私はケイオス教会幹部が一人アラミスよ。せいぜい私を楽しませてね」
そう言い終わったと同時に戦いの火蓋が切られるのだった。




