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秩序という名の死神  作者: 真田遼一朗
第一部 死神と秩序
1/8

1話 黒い服装の奴はだいたい怪しい

 ヨーロッパのとある小国。その国に入国するために一人の怪しげな男が入国審査を受けていた。


「では名前とこの国に来た理由はなんですか?」


「名前は死神でこの国には旅の休息も兼ねた観光かな」


「ところでその服装は何かな」


 次に入国審査官の男性は自称死神の胡散臭い男の服装に注目した。自称死神は軍服風のフード付きのジャケットに他にも身につけているものは全部が黒でいかにも怪しい服装をしていた。


「ああ、これはファッションだよ。黒が好きだから統一しているんだよ」


「そうかでは問題無いね。入国を許可する。楽しんできてください」


 そんな苦しい言い訳も気にも留めず入国審査官は入国を許可した。


「ほら大丈夫だったでしょ。入国審査ってのは怪しいものを持っていなければいいって」


 そうやって誰もいない場所で自称死神は彼にだけ聞こえる声の存在に話し始めた。


「いやあれはこの国の基準がおかしいだけよ。一般的な入国審査はこんなすんなりと通さないわよ」


「まあこの国がまともでないのは見ればわかるけど」


 自称死神が言ったようにこの国は坂の上に出来ていて貧富の差が住んでいる場所に反映されているような腐った国だったのだ。


「だがこういう国だからこそあんたの手掛かりがあるかもしれないからな」


「こら!あんたじゃなくて先生と呼びなさい!」


「はいはい」


 というような自称死神と自称先生の他愛ないやり取りをしながら貧困層のエリアを歩いていく。


 するとみすぼらしい子供たちが自称死神に近寄ってきた。その子供たちの中でしっかりとした感じの子が話しかけてくる。


「ねえねえ旅人のお兄ちゃん。道案内し


てあげるから少しでもいいから食べ物かお金を頂戴?」


「うーんじゃあお願いしようかな」


 と死神は疑いもせず子供たちに前払いとして携帯用食料を渡した。


 「なんか怪しいんじゃないの?」


 と死神の内にいる存在は疑っていたが。


子供たちの案内についていくとひとけの少ない場所に着いた。そして死神が不思議に思っているとなんといきなり子供たちの中の一人が死神の後ろからナイフで背中を刺してきたのだ。


「悪いねお兄ちゃん死んでもらうよ」


 必死に体を動かそうとするも力の入らない死神。


「無理だよ。このナイフには麻痺毒が塗ってあって大人でも体が動かなくなるんだ」


 とリーダーらしき子は説明を続ける。


「だから助けを呼ぶこともままならないよ。じゃあそろそろとどめをささせてもらうよお兄ちゃん」


 と言いながら持っていた拳銃で死神の頭を打とうとした。


 だがその時拳銃を持った子供の手を死神はまるで紙をクシャっとするかのように折ってしまった。


「手が‥‥手がぁー!」


 当然折られた腕の痛みは尋常ではなく声にならない叫びを上げる。


 他の子供はそんなことよりも何故その男が麻痺毒で動けないはずなのに腕をへし折ることが出来たのかが理解できなかった。


 「別に何もおかしいことは無いさ。ただ俺が人より丈夫だっただけの話だ」


 そう言うと死神はゆっくりと立ち上がり腰に差していた黒い刀を抜いた。


 そして逃げようとしていた子供たちの足の神経だけを斬り動けなくした。


 次に死神は無慈悲に冷たく言い放つ。


「殺される前に何か言い残すことはあるか?」


 すると


「やめて」


「殺さないで」


「許して」


 と次々に子供たちが命乞いを始める。


「生きるためにはしょうがないことなんだ。国も周りの大人も誰も助けてくれないだから殺して持っているものを全て奪って生きるしかなかったんだ!」


 さっきまで腕の痛みに悶えていた子供が必死に死神に訴えた。


 しかし、死神は


「だが、お前たちはもう一線を越えた。どんな事情があったとしても秩序に反したお前らの末路は死のみだ」


 そう冷たく告げると一人ずつ持っていた刀であっという間に斬ってしまった。


 背中を斬られた子供たちからは血が噴き出し辺りは真っ赤に染まっていた。


 血液を大量に失ったためか子供たちはやがて完全に息絶えた。死神は静かにその場を去った。


 やがて人通りの多い場所に出た死神は誰かにつけられていることに気づく。


「なあ先生誰かに見られている気がするんだけど」


「そうね通りの向こう側の路地のところに一人男が隠れながら見ているわ」


「そうか何か手掛かりになるような有益な情報を持っていると嬉しいんだけどな」


 自称死神とその先生はつけてきているIT社長みたいな恰好している男にばれないようひそひそとしゃべりながら喫茶店に入っていった。


 それに続いて尾行していた男が喫茶店に素知らぬ顔で入店してくる。


「今店内が混雑しておりまして相席になりますがよろしいですか?」


「ああ構わない」


「ではこちらにどうぞ」


 男は仕事のために入店したため気にせずに対応する。


「すみません。相席失礼します」


「いえいえお構いなく」


「えっ!」


 男はターゲットと鉢合わせしまったことに驚き変な声が出てしまった。


「どうかしましたか?」


 自称死神は不思議そうに尋ねる。


 (いや待てよ。俺が尾行していることをこいつはまだ気づいていないはずだ。ここはうまくやり過ごそう)


 尾行男はそう考えると何事もなかったかのように会話をし始めた。


「いえ少し喉の調子が悪くて変な声が出てしまっただけです。驚かしてしまいすいませんね」


「そうでしたか。ところであなたはこの国の方ですか?」


「ええそうですが何か?」


「いや私外からきたのでこの国のことを全く知らないので出来れば教えてほしいのですが。お願いしてもよろしいでしょうか」


「ええいいですよ。何が知りたいのですか」


 と尾行男は自称死神にばれないように会話を続けていく。


「そうですねえ。例えばこの国の外交状況とかが知りたいですね。特に武器をどこから得ているのかとか」


「そういう質問はしない方がいいですよ。国の重要機密に関することですから。さもないと消されますよ」


「あなたが尾行していたことと関係あるんですか」


 と言った瞬間互いに席を離れ戦闘態勢に入る。


「ばれていたとはな。いつからだ」


「最初からだよ」


「そんなはずは無い。俺の尾行は完璧だったはずだ」


「そんなことはどうでもいい。国の機密情報とやらを教えてもらおうか」


 そう言うと持っていた刀で尾行男に斬りかかる。


 尾行男は近くのテーブルを壁にして避け距離をとる。


 そして持っていた鞄から拳銃を取り出し死神に向ける。


 発砲と同時に死神はバク宙をして避けた。


「何ぃ!避けただと!」


 すかさず二発目を装填し撃ってこようとする尾行男。


 そのすきに距離を詰める死神。


 そして弾丸が発射されるその刹那死神は銃ごと肩を刀で貫いた。


「勝負あったな。さあ知っていることを全て話してもらおうか」


 刀を引き抜きながら死神は言う。


「動くな!お前を殺人未遂で捕まえる」


 国の自警団らしき集団が喫茶店に入ってきて死神に武器を向ける。


「はあ‥‥‥。面倒くさいなあ」


 武器を向けられた死神は両手を挙げる


と見せかけて近くにあった椅子をその集団に蹴り飛ばした。


 そして椅子が飛んできて怯んだ隙に店の裏口から逃走した。

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