星座でヒエラルキーが決まるクラス ~すべてあのアニメのせい~
ただいま空前の星座ブーム。
とある出版社が発行する大人気週刊誌のこれまた大人気連載のアニメが大ヒット。
小学生はもちろん大学生や社会人が夢中になるくらい世間に浸透している。
そんな状況なために、アニメの影響力は絶大だった。
作品の登場人物にはそれぞれ12星座の属性が割り振られており、キャラクターによって優遇されていたり、不遇だったりするのだ。
そのため、活躍できないキャラクターが割り振られた星座と同じ星座の子供は不遇な扱いを受けるのである。
「ああ……またかよ」
週刊誌の連載を読んで気が重くなるヒロキ。
かに座の彼にとって、同じかに座のキャラクターが不遇な扱いを受けているのを見るのは、なんとも憂鬱な気分である。
クラス内では完全に星座によってヒエラルキーが決まっており、不遇な扱いを受ける生徒たちがいる。
その中でもかに座は群を抜いて扱いが悪かった。
なんとかこの状況を打開したかったが、漫画の展開でかに座が活躍しないと何をしても意味がない。
ただただ耐えるしかないのだ。
「くくく……今週もかに座はダメダメだったな」
「かわいそー」
「あわれ、あわれ」
上位カーストのクラスメートにからかわれる。
どうして自分がこんな目に合わなけらば行けないのかと、涙を呑んで連載の行方を見守った。
そして――
「やった! ついにやった!」
数年後。
ようやく日の目をみたかに座。
とうとう漫画で大活躍したのだ!
このシーンがアニメ化されればきっと……不遇だったかに座にも光が!
しかし、思った以上に現実は残酷だった。
「は? まだそんな話してるの?」
「何年生だよ……」
「こども、こども」
月日が流れ、精神的に成長した子供たちは、アニメの展開ごときでヒエラルキーを決めるのをやめたのである。
PTAや担任の働き掛けもあり、アニメの展開によって生徒の待遇が変わる空気は完全に消え去っていた。
「今は血液型だよなー」
「いや、ドウブツー占いでしょ」
「てそう、てそう」
世間のブームも星座から別のモノに変わっていた。
流行の移り変わりは早いのである。
「うう……ようやくかに座が活躍したと思ったのに……」
せっかく望んだ展開になったというのに、これではとてもやりきれない。
そんなヒロキ君だったが、大人になってからはバリバリ働いて結婚。
子宝にも恵まれて順風満帆な人生を送っている。
よかったね。