※※生活※日目!
「うわー腰がいてー」
「あはははっ! いっぱい捕れたもんねー」
ボウル三つ分のあさりを前に、幸せのひとときを感じる。
あれから私たちは揃って人間へと生まれ変わった。
そして、自然と一緒に暮らすようになった。
「なぁ、今さらだけど食べるのに抵抗ないの?」
前世サンソンさんだった彼が、遠慮がちにあさりを指差し聞いてきた。
「うーん。あさりだったからこそ、大事に食べてあげようかなって思う。一人でゴミ箱行きは本当にトラウマ」
砂ぺっぺするあさり達を見下ろしながら、その時の事を思い出す。
昨日の事のように思えるような、遠い遠い過去の事のような。
実際前世の記憶だから、遠い過去どころの話ではないけど、今も全部鮮明に思い出せる。
「……そっか」
あさりをもみ洗いする元サンソンさんは、とても穏やかな顔をしている。
サンソンさんに会って転生を繰り返したとゴミ箱の中で話した時は、流石に信じてもらえなかった。
でもいざ自分が人として転生し、また私と出会った事で、本当だったんだと今さらながらに思ったって、ついこの間言っていた。
キッチンの調理器具たちは、毎日サンソンさんが語りかけながらピッカピカに磨き上げている。
こう置かないとお玉がうるさいとか、土鍋のじいさんはそっと置かないと人格変わるとか、懐かしそうに優しく語る彼が、私は好きだ。
「さて、まずはどうやって食べる?」
あさりを洗い終わった彼が、にやりと口角を上げて聞いてきた。
それはもう、決まってるじゃない。
「もちろん、あさりごはん!」
米袋をドンッと準備し、にっこり微笑む。
サンソンさんもにっこりと微笑み、ボウルからあさりをすくい上げる。
『私、あさり!』
微かに聞こえた声に、準備する二人の手がピタリと止まった。