あさり生活三日目!
私、あさり!
恒例の砂ぺっぺからですね! もう慣れたもんですよぺっ!
前回はあさりごはんになれなかったけど、色々分かった事があった!
料理としての生を終えると、何故かあさりに戻るらしい。
でも、なんの料理になるかは都度変わる。
同じ運命をループするわけじゃないのが不思議。
それと、お玉さんとお鍋さんと話して分かった事。
それは……私、しゃもじさんに……こ、ここここ恋しちゃってるみたいで……。
ホントに? 一目惚れなの? これが……?
うわーん! 分からないまま今回のお迎えがきちゃったー!
炊飯器にお願いします炊飯器に! ……あーフライパーン! 今回はフライパンです!
今回もあさりごはんにはなれそうにもありませんギャァァアアツイイィィイ!
……。
私、あさりの酒蒸し。
あさりのポテンシャル凄いよね。調理法いっぱい。お出汁たっぷり。
前回人間さんがお味噌汁を沸騰させた時、この人そんなに料理出来ない人かもって思ったのになかなかやるかも……。
で、今回はフライパンごと食卓に置かれて、手でパクパク食べられていくから、誰かとお話も出来ないのか……。
「さっきからため息ばっかりうるさいんだけど。食われるまで大人しく待ってろよ」
……これならお話出来ない方が良かったかも。
私の入れたフライパンさんが、ほとほと嫌そうにため息をつく。
「あなた、嫌われてるでしょ? 可哀想に、こんな狭い世界で一人ぼっちなんて」
これでもかと嫌味っぽく言ってみたら、案の定怒ったのか、フライパンさんが少し熱を持つ。
こちとら死のカウントダウン始まってますからね、怖いものなしですよ。
「はっ誰が一人ぼっちだ。俺には可愛い可愛い菜箸って彼女がいんだよ。一人ぼっちはしゃもじの野郎だろ。一番の古株でもう壊れる寸前らしいしな。買い換えの話も出てるって噂だ」
「えっ!? しゃもじさんが!?」
しまったと思ったときにはもう遅かった。
フライパンさんはニヤニヤ笑いながら、「……へー、そうかそうか」と体を揺らす。
フライパンさんと菜箸さんの馴れ初めとか色々気になるけど、今はしゃもじさんが優先!
しゃもじさんが壊れちゃったら、捨てられちゃったらどうすれば良いの?
意味もなくあさり転生を繰り返したって、ただ苦しいだけ。
どうしたらしゃもじさんを助けられるの?
私はいつまであさりを繰り返せるの……?
ぶるりと震えると、開いた貝の中でにんにくと生姜と小ネギが揺れる。
「んだよ、もうすぐ自分が死ぬってのに、しゃもじの野郎の心配かよ」
不安に駆られていると、それを察したのかフライパンさんの声色が少しだけ柔らかいものになった。
「食い物に心配されるなんてな、俺たち調理器具は天敵みたいなものだろ。まぁ良いや、冥土の土産に教えてやるよ、あいつの名前はサンソン。おかしな名前だろ? 自分で言い出したんだとよ。次サンソンと会う機会があったら伝えといてやるよ。お前を心配し愛してたやつがいたってよ。じゃあな、短い間だったけど、楽しかった。絡んで悪かったな。お前は良いやつだったよ」
ヤだヤメテ、最期に良い人にならないでイケメンにならないで!
そんな絶叫を残し、私は三回目の料理としての命を終えた。