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400回目の誕生日  作者: 黒い折り紙
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400回目の誕生日・前編

 朝起きて、部屋を出る。我が家は一軒家で周りに家が建ち並んでいる。いつもうるさい犬は今日もまた吠えていた。冷蔵庫を開け、いつもの缶ジュースを一気飲みし、ゴミ箱へ空き缶を投げる。

「カラン」

 今日も入らなかった。だが、もうそれ位のことでへこんだりはしない。

一応テレビをつけ、内容に目を通す。


 やはりアナウンサーはいつも同じ場面で噛み、コメンテーターに笑われる。それを見てコッチも恥ずかしくなり、チャンネルを変える。今日はお固めのニュース番組にしよう。

 やはり彼らも、いつも同じ話ばかり。日本は遅れて居るだの、アメリカがどうだの、経済の指標が何だのと、聞く気も失せる。

 そしてスマホを手に取りネットニュースを漁る。多く目に入ってくるのが、有名女優の引退報道だ。僕からすればさっさと引退してくれと言いたいところだが。

 そして8時49分。メッセージが届いたとスマホの通知が知らせてくれた。姉からだ。

「誕生日おめでとう。21歳になった気分はどう?実家帰ったときは、一緒に酒飲もう♪」

 妙に韻を踏んで来るのは、ラッパーと付き合いだしたからか、と勘ぐってみたが、昔から洋楽やK-Popを好んでいた姉だ。どうせ今お気に入りのバンドにでも影響されているのだろう。

 ちなみに両親は二人ともサイパンへ旅行中だ。息子の誕生日も20回を越えれば飽きるのか、お祝いメッセージもなければプレゼントもない。もう言い飽きたことだが。

姉のメッセージに返信しても、既読がつくのが今日の19:00前なのだから、今返す必要もなさそうだ。そうしてスマホをテーブルに置き、椅子の上であぐらをかいて目を閉じる。そして考える。

「今日は何をするか。」

鋭い閃きと共に目を開き、全裸になって風呂場に駆け込む。そして一通り、と思ったが今回は髭を剃らずにいこう。どうせ何も変わりはしないのだから。


 鋭い閃きといっても、これが400回目の誕生日だということを思い出しただけ。でも幸か不幸か僕の年齢はちゃんと今日で21歳になるわけだ。

 そう、僕はなぜか21歳の誕生日を何度もループしている。正確に400回目の誕生日、つまり同じ日を380回ループしているかどうかはもう確かめようがない。メモを残しても綺麗さっぱりリセットされる。残るのは僕の記憶だけだ。シャワーを浴びながら一人で自分を祝っていた。

 風呂場から出て、お気に入りの服に着替える。金はいくら使っても、次の日には綺麗に元通りなわけで、それは気楽だ。大金、と言ってもしれているが、それを財布に詰め込み、()()戸締まりに気をつけて家を出た。

 うるさかった犬は鳴き止んでいた。だがそれに変わって、車がバイクと衝突し、車が電柱に突っ込んで煙を噴いていた。バイクの運転手は右半身から大量の血を流して、痛みにうめいている。


「いつものことだ。」

 そう思って、僕は自転車に乗って、目的の場所へと急いだ。今が9時50分。あの眠りに就くまで、あと13時間と14分だ。

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