死者の叫び
渇命とは、飢えや乾きによって命が枯れていく様を表す言葉。
「さぁ、豊穣を願え。さもなくば死、あるのみ」
活命神、その力は生命が死に際に発揮する文字通り全てを出し切る力を常に司る。もしくは命を守る為の力。死に際とは、魂の最後の輝きが試される瞬間であり、その輝きこそが魂の力。常に死の一歩手前に立ち続けることこそが、活命神の力。
「か、乾く!喉が……!掠れて──」
「自身の権能をうまく扱え」
「ごっ!?」
腹を蹴られ、麦畑の彼方へ吹き飛ぶ月読尊。その蹴りは今までの攻撃の比ではなく、圧倒的な力が込められていた。驚きの表情のまま月読尊は吹っ飛んでいく。
「私のこの状態の時はな、一撃でも喰らえば終わりなんだ」
ただ、それだけでは無いが──と言うがとっくのとうに声が聞こえない距離まで蹴られた月読尊は地面に埋まっていた。
「まぁ、死に際の力だからな。私自身も死にかけなんだ、ほら、今の蹴りで左足がお釈迦になった」
怒りのまま月読尊が戻ってくるのを傍目に自身の足に目線を向け溜息をひとつ。鬼気迫る表情で戻ってくる月読尊はどうやら渇命した状態で、どこか疲れたような印象を受けるが、まだまだ元気なようで上段切りを放ってくる。それを短剣で受け止めた活命神は月読尊に疑問を投げかける。
「まだ権能を使っていないのか。死ぬぞ?」
「神に!死はない!」
「うん?それだと私の今の状況が否定されているのだが」
「黙れぇい!」
既に渇命により頭が回っていないのか発言が狂い始めてはいるが、諦めずに攻撃をし続けているのだが……その全てが左手に持っている本から出現するありとあらゆる魂の輝きが防ぐ。
「これ一応数に限りがあるんだけど……反撃しないと回数少なくなっちゃうか」
攻撃を防いでいる魂は、防いだ後砕け散るが問題ない。なぜなら罪人の魂だから、罪人の魂は薄黒く、輪廻に乗ることさえ許されない神々の消耗品。自分自身から堕落した奴には慈悲を与えない、それがコウマの考えなのだが。
「外道が……!」
「……? 何が?」
「罪人であろうが魂は魂だ、浄化してしまえば良いのに!」
月読尊はある意味慈悲深い神であり、日本に住む人々を好んでいる。そのため見たことも無い神が日本に来て、現地の者を蹂躙したからこそコウマの目の前に出てきたのだ。
「何を言ってる変わらないけど、人の魂を浄化するってことはその人物そのものを殺す行為だ。それでも浄化はする必要が?」
「それでも、だ!」
「……ふーん、なら聞くけど大量虐殺者に慈悲は必要か?警告したのに、浄化するかどうか聞いたのに無視をした魂はどうする?了承を貰った上で私はこの魂を扱っているのだが」
罪を重ねるなと、罪を清算するかと、聞いても無視をした魂のみを扱う本。魂の管理書、それは未だに生と死の狭間で眠っている者達がいる場所。罪人の楽園と呼ばれる場所につながっている。
「そこは私が作った場所で、魂の記憶を消したくない、死にたくない、そういった人物だけが集まる」
月読尊の攻撃の隙を狙い短剣で切り結ぶ。鍔迫り合いをしながらも、走りながらも交差し合い切り合いをする。月読尊の表情には怒り、豊穣の力を使ったのか身体中が光っている。コウマの表情は呆れ、体が常に壊れ修復されながら走っている。
「そこに!一体どれだけの魂が存在する!」
その言葉にコウマは笑う。
「凡そ数千億」
「なっ!?」
「そのどれもが私と契約し、自由に扱える」
非人道的と言われても、気づかずに死ねるなら罪人共は本望。永遠に眠り続けることを選択した者達の気持ち。
「そのどれもが、夢を見続けている。自分の好きなように生きる夢を。だからこそ私は慈悲を与えない、なぜなら既に幸福なのだから」
「ふざけるなぁ!貴様に命がなんなのか教えてくれるわ!」
そう叫び、数多の命を、麦を生やしコウマを囲む。だがその中で力なく笑う姿があった。
「……命のことは知ってるさ。一度死んだ身、死にたくないと願うのは当たり前だ。だから、気づかずに死にたいという想いもわかる」
ある種の狂気であり、優しさでもあるのだろう。だからこそ、自分の想いでもあるそれを願った。
「『殺さないでくれ』」
「っ!? なんじゃそれは!」
「『忘れたくない』」
「やめろ!」
1層激しくなる攻撃に、既に何も見つめていない……いや、過去を見つめている目が月読尊を射抜く。
「『生きたい』」
「やめろぉぉぉ!」
「君は聞いたことあるのか? 死者の声を」
月読尊は一度も聞いたことがない。
なぜなら冥府とは関係の無く、伊弉冉から話を聞いただけに過ぎなかった。
短剣を振りかざし、全身全霊の力を込め、地面へと叩き込む
「実物を見に行こう」
麦畑に割れ目が出来、黄泉の国へと続く道が出来上がっつ。
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