とある休日
唐突ではあるが神というものがどういう存在なのか、今ここで説明しようと思う。
神、一言で言っても中々理解しているものはいないだろう。恐らくそこらで歩いている人に「神とはなんでしょうか?」と聞いても要領を得ないだろう。答えられたとしても「創作」や、「人智を超えた存在」等と言うかもしれない。だがその実態は、ひとつの種族に過ぎない物であり彼らも「生きた生物」であるものには変わりはない。ただ力が強く、人よりも死ににくいだけである。それでも神には役目がある、当たり前だろう。どんだけ力があったとしてもそれはやらなければいけないことをするための力なのだから。〝神〟は『使命』に囚われた種族と言えるだろう。
神にもちゃんと位があり、順番に管理神・最高神・上級神・中級神・下級神・亜神となる。その下にも色々といるがそれはもう有象無象と変わらないので割愛する。
管理神とは、最高神と呼ばれる存在に指示を出したりして使命に沿ったことを行うことを生業とし、最高神は指示を受けさらに下にいる上級神へ役割を振っていく。役割を振られた上級神は中級神に仕事を与え、下級神はそのサポートをする。このように神という種族は成り立っている。
まぁ長々と語ったがこれらは全て平坂幸磨が居た異世界の神々に当てはまるものだ。地球の神にはあまり当てはまらない。
基本的に地球に存在する神々は自由である。まぁ……どこぞの神が浮気したり、自分の娘を孕ませたりと好きなように振舞ってることから簡単に分かるだろう。一応ちゃんと仕事もするが、それは最低限である。それは日本の神も例外ではない。
それでなぜこんな話をしたか、それは平坂幸磨に日本の神が接触したからである。
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自宅、日曜日の休日。穂乃果が通っている高校の同級生が訪ねてきていた。
「え、ほんとに養子だったんですか?」
そういい驚きを表情に出す人物は穂乃果と同じクラスの学級委員である、今西真子と呼ばれる黒髪のロングヘアの女性だ。ここまでテンプレ的なやつはなかなかいないだろう、しかも学級委員になったのは似合うからとクラスの仲間に押し付けられたからだそうだ。どこか苦労性を感じるな。
「あぁ、彼女の親御さんたちがな。少々一悶着あったが高校生活を楽しんでいるようでよかったよ」
「聞くに小学校や中学もまともに通って聞いてないんですが……よくうちに来れましたね」
どこか訝しむような視線を向けてくるのは好青年という言葉が似合う風紀委員の貴島和樹というつり目の男だ。どうやら穂乃果の話を聞き心配になって俺のことを確認しに来たらしい。前の親があれだったからだろうな。
「ちょっとした伝手でな、一応受験はちゃんとさせているから安心しろ」
「あなたが勉強を?」
「そうだ」
「凄いですね……教師でもやればいいんじゃないですか?」
なんかすごい猜疑心を向けられているような気がしないでもないが気にしないでおこう。まだ警戒中なんだろうな、こいつが何故そこまで干渉しようとしてくるのかは、のちのちだ。
「はぁー……大変なんだねぇ」
そう呑気な声を出すのは斎藤優子という活発な印象を受けるショートカットの子だ。何の委員にも入っていないらしく結構うちに入り浸っている、家業もあるらしいが基本的に夜や朝にやるため割と暇らしい。なんの家業だろうか詮索してみたらこいつ巫女だった。意外なことに、巫女であった。割と巫女服に合っていて普段の様子と違いすぎて1人笑ったが。
以上3名がうちに訪ねてきているのだが……
「貴島くんちょっと気になることがあるんだが」
「なんですか……?」
「彼女らはハーレムかい?」
「な、なんてことを聞くんですか!?」
「違うのかい?」
「違います!ただの友人ですし、あと一人今日来れなかったやつもいますよ!」
「それは失敬、ちゃんとうちの子が青春してるか気になってね」
「ふざけてるんですか?」
「大真面目だな」
別に穂乃果が彼氏を作っても問題ない、元々彼女の人生だ。ただ悪い奴に引っかかるようなら干渉させてもらう、まともな人生を歩んで欲しいからな。
「こうまー、こっち来てー!」
「ん?どうした」
ウッドデッキの上で真子と優子が庭でバトミントンを遊んでいるのを和樹と共に見ていると、穂乃果に突然呼ばれた。どうやら観戦している様子だがなんか違う感じがする。
「これみて」
「これは、石?これがどうしたんだ?」
「うん、なんか模様があるんだよね」
……これ結界石か?なぜ家にそんなものがある、んだ。なるほど……一瞬冷や汗かいたの見逃さなかったぞ、優子。お前の仕業か。
「まぁインテリアとして置いといて良いだろうね、一言くらい言って欲しかったが」
最後の方はボソッと言うと優子はビクッとして震えていた。無断でこんなことをするのはいけないが別に無害だろうし、結界を貼る前だったから注意はできる。下手したら俺が触れるだけで壊れる可能性があったからな。結界貼る理由は穂乃果を守るためなんだろうな。
ちょっと驚いた様子を見た瞬間攻めた真子は運動神経がいいのだな、と優子を笑いながらみていた。なんか真剣に勝負していた様でしょんぼりとしている優子には苦笑いしか出ない。
(やるんだったらもっと、バレないようにやりな。穂乃果は割と周りを見ているから)
(うぅ……幸磨さんって何者なんですか)
(今は秘密かなぁ)
「さ、中に入ろうか。そろそろ夕方だ、夕飯は食べていくか?」
「いいんでしたら私は食べたいです!」
嬉しそうに声を上げる意外にも食いしん坊な真子に他の3人は笑い出す。
「え、ちょっ、なんで笑うの!」
「くっくっく……食い気味にそんなこと言ったら食いしん坊だってバレるぞ」
和樹が真子揶揄うもその意図が分からないのか真子は首を傾げている。案外天然でもあるのか……?
「え、え?」
「もう何となく察してるから、貴島くんと斎藤さんはどうする?」
返事を真子に奪われた2人に聞くと、2人とも少し思案して口を開いた。
「俺もいいですか?」
「私はちょっとこの後家業関係で話があるんで、無理ですね」
「そうか、斎藤さんは残念だね。また今度食べに来なよ」
「こうまのご飯は美味しいんだからね!」
「それが本当だから結構悔しいんだけどね、弁当つまみ食いしたくなるくらいには美味しいからさ」
あぁ、だから弁当の量を増やしてって穂乃果が言ってきたのか。友達につまみ食いされるから量が足りないんだろうな、今は貧弱な体に不足していた栄養素を取り込みたい時期なんだろうし。明日から少し増やしておくか。
「こうま、今夜の夕飯は何ー?」
「豚の角煮だ、1時間前から煮込んでたから柔らかくて美味いぞ」
「だから美味しそうな匂いがしていたのか、楽しみだな」
「穂乃果が食べるものだからね!栄養があるか確かめてやりますよ」
「はは、ちゃんとしたやつだから問題ないと思うけどね」
「豚の角煮とか私の大好物なんだけど!あー!食べれないの悔しいー!」
そう地団駄を踏む優子に真子と和樹は煽り散らしていた。ていうか男の手料理が話題になるとか……まぁいいか。穂乃果が楽しそうだし。
「じゃあな、優子。また明日」
「食べた感想をメールで送ってあげるから」
「きぃー!真子めぇ!」
「バイバイ、優子ちゃんまた明日ねー」
真子を送り出し、机に料理を並べていく。今日は騒がしく楽しい一日だったな──
その夜。家の外に人の気配を感じ、起きる。こんな時間帯に誰が来たのだろうかとドアを開け確認すると、優子がそこに立っていたが。何やら様子がおかしい、普段の明るい雰囲気がどこに行ったのかどこか遠くを見ているような視線を向けてきた。
「……優子は寝ているのか」
「『ふむ……分かるか』」
声が二重に聞こえる。優子の声と別の何かの声。魂を見ると……
「まさか神の来客とはな」
「『貴様、何者だ?地上が騒がしいから来たが、貴様のような死神は知らんぞ』」
途端に険しくなった表情をこちらに向けてくる何か。
「んで、それだけか?」
「『貴様、誰に口を聞いて──』」
「月読尊だろ?」
「『な!?』」
驚く顔にニヤリと笑ってやる。内心は割と戦々恐々してる、かなりな大物が来たからだ。