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少女救出




「さて、と……お前のことなんて呼べばいいんだ……?」


「え、あれ?アルファは?」


「死んだよ」


「……殺したの?」


「実質的には」


む?どす黒い感情が彼女から吹き出したな。さすがにあれほど仲が良かった存在が死んだと知ったらきついか。


「まぁ落ち着け。話をしよう」


「話?それはアルファとしたの?」


「する以前の問題だった、あれを創った存在のせいであれが死んだ。別に俺が殺した訳ではなく、あれを創った創造主に殺されたんだからな?」


「それでも助けなかった、見捨てたんでしょ?」


「当たり前だろう、この世界を破壊しようとした存在なんだ。俺がやらなくても誰かがやっていた。ただタイミングが今になっただけ」


「そんなの関係ない!世界なんてどうでもいい!私はただ友達が欲しかっただけ!アルファは1人だった私を救ってくれたの!恩人なの!」


「そうなのか……だがアレはお前を騙して、利用していた。それでもいいのか?」


「それでもいい!私のことを必要としてくれるならそれでも良かった!都合のいいことを言われてたのは分かってたの!だけど友達が居なくなるのは……嫌なのッ!」


うっわ、選択肢を間違えた。仕方ない彼女からあれとの記憶を取り除くか。恐らく彼女とあれは夜しか活動してないだろうからな、寝てる記憶とかに書き換えれば問題ないだろう。

そして手を伸ばし、狂気を宿した目を持ち始めた少女に向かって歩き出した瞬間。


「呪縛方陣!」


「む……?」


「朱修羅!」


「ごっ……!」


体が縛られ、予想外な攻撃によって脳天から貫かれる。天から降ってきた火の鬼の腕、それが俺の体を貫き地面へと縫いつけた。


ダメージはあんまりないが少々驚いた。顔を前へと向けてみると2人の男と女がいた。どちらも似通った顔をしているので姉弟、もしくは兄妹だろう。


「姉ちゃん、こいつ抑えられない」


「え、これで死んでないの?」


「うん、僕の呪縛が効いていない。わざわざ姉ちゃんの攻撃に当たってくれたようだよ」


違う、単にびっくりして動けなかっただけだ。とりあえず俺の上に乗っている鬼らしきものを死の霧で飲み込んで消滅させておく。


「朱修羅!?うそ、一撃ってあり?」


「ありえない、あれは特別な妖魔を使った特別性。それが耐える様子もなく消えるなんて……なんか見ていて嫌な気分になる霧だ。」


体を縛る呪縛に関してはその間に途切れていた。弱いな、これは単なる魑魅魍魎を捕らえるだけのものか。先程の多財餓鬼までなら捕えられそうだな。


とりあえず起き上がって目の前のふたりを見る。相手から見ると顔が見えないフードの中から目だけが赤く光って見えているだろう。誰が聞いても死神とかそういう類いだと思うだろうなぁ……


「いきなり何をしてくれる」


「喋った」


「あの化け物はここにいないわよね?」


「居ないよ、だから契約上問題ないはず」


うん?喋ったらなにか反応を示したな。契約上?なにか喋ることが可能なやつと何か契約していたのだろうか。


「つまりあなたは侵入者?排除……できるかしら」


「侵入も何も俺は元々ここに住んでいたものだが?」


事実である。こんな力を使えるようになったのはこっちの世界からすると昨日からだが。


「どういうことかしら、ここにあなたみたいな化け物はあいつしかいなかったはずよ」


「それもそうだろうな。俺は昨日からこの姿だからな」


「昨日から?生まれたてってことかな」


「違うが……まぁいい、これ以上手を出すな。作業ができん」


早く少女に手を施さないと不味いことになる。負の感情を溜めすぎだし、あれのせいで彼女の中には今魔力がない空白の空間ができている。その量は凄まじい程だったんだ。負の魔力が溜まりまくるぞ。下手したら一種の精霊へと昇華してしまう。


どうやらこの世界の法則的に魔獣(例:多財餓鬼)よりも精霊(例:悪魔)の方が強いらしく、やばい事になる。その上には亜神と呼ばれる神の世界へと一歩入り込んだ化け物たちがいる。ちなみにその上は天使である、あいつらは神に直接作られた対亜神の創造物だ。んでその上には一般的に神が居る。俺はそのさらに上の管理神だがな。


「洗脳かなにかする気でしょう、彼女に近づかないでくれる?」


「……まずいよ姉ちゃん。彼女堕ちそう。主に悪い方に」


「え、なんで?……もしかしてあんたのせい?」


「ある種俺のせいだが、堕とさないために対処しようとしたのだが……遅かったか」


やはり問答無用でやれば良かったか。


さて、完全では無いにせよ精霊堕ちした彼女はその負の魔力が凝り固まった腕で、彼女を俺から守るように立つ2人を薙ぎ払おうとする。


「させないぞ?」


もちろんそんなことを許すわけがないだろう。あの二人だと精霊相手にはきついから俺が対処することにする。


片手でその腕を掴み彼女にぐっと顔を近づけ、なにかブツブツと呟いている彼女に声をかける。


「確かお前は友達が欲しいと言っていたな」


「お前のせいでアルファは死んだ。お前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいで」


「確かにそうだな。だから考えてみた」


記憶を改ざんするのは簡単だ。だがそんなことでは今まで彼女が起こしてきたことに矛盾が発生してしまう。


「だからな、俺がお前の友達になってやろう。信用するのは無理かもしれないが、それで贖罪となるのならやってやるさ。年齢差が酷いがな」


「ふざけるな、ふざけるなァァ!!」


莫大な魔力で吹き飛ばそうとするがこんなんそよ風だ。なおも腕を掴んで逃げ出そうとする彼女を拘束する。傍から見るとやばいな。


「少し頭を覗かせてもらおうか」


ということで頭を掴み、記憶を読み取る。



─────


生まれた時から私には友達がいなかった。


それはお母さんが家から出してくれなかったから。


お母さんとおとうさんはなんでか知らないけど私のことを隠そうとしていた。


何故だろう。時折ピンポンとなる音に首を傾げながらおとうさんとおかあさんを見て笑う。


その時から私はずっと絵本を読んでいた。


それは友達と仲良くなって色んなところに行って、色んな人と友達になって。


最後には世界中の人が友達になって平和になるって言う絵本だった。


その時から私はずっと憧れていた。


友達ってなんだろう。


そんなにいいものなのかな?


世界が平和になるんだからとってもいいものなんだ。


私も友達が欲しかった。


いつの間にか目の前にはアルファと名乗る杖が居た。


願いはって聞かれたけどよく分からなかったから友達が欲しいって言った。


そしたらアルファが友達になってくれるって言ってくれたの。


それから私は絵本と同じように友達と仲良く世界を平和にするためにワルモノを倒してきた。


─────




「案外重いぞ」


両親が彼女を隠してきた理由はなんだろうか……?ちょっとそこを調べたいが彼女の中にはその理由がない。つまり両親に直接聞かなければならないのか。


別に虐待を受けてきた訳では無さそうだが、半ば軟禁状態を数年も……いや、生まれてきた時から受けてきたなら13年くらいかな?正確な年齢は分からない。


「なるほど、憧れだったのか」


恐らく絵本を読んだ時は5歳くらいからだろう。その時からその憧れは廃れることなく、むしろ想いが強まって言ったのか。


「これは悪いことしたなぁ……だが仕方がないことだったんだ。だからこその俺だ……お前のその記憶を改ざんするのは変わらないが、その友達をアルファから俺に変えよう。矛盾なんて発生させないぐらいに徹底的にな。それで憧れが救われるならやってやろう」


今一度……外道となろう。


かつて彼女にやった事と同じことを、目の間の少女に施す。あの時はまだ未熟で彼女には矛盾が発生したが……その時に学んだんだからな。


今度こそ成功するはずだ。
















「こうまー!こうまどこー?」


「ここだ、どこに行っていたんだ?」


あれからあの二人を気絶させて逃げた俺は彼女を引き取って1ヶ月、早速とばかりに遊園地へと連れ出してみた。彼女、平坂穂乃果は俺の養子となった。まさかのまさかだが、仕方がなかったのだろう。


彼女の両親だがどうやら穂乃果が生まれたことを国に報告していなかったらしい。それはつまり穂乃果は病院ではなく、家で生まれたことになる。そのせいなのか穂乃果はどうも栄養が足りておらず見た目がとても幼かった。後で聞いて驚いたのだがどうやら穂乃果は高校生ぐらいらしい。見た目的には小学生高学年、中学生程度なのだがな。


それで何故彼女のことを養子として引き取ったのは穂乃果が俺と離れたくないと言ったからだ。傍から見るとなんかやばいことしたのでは?と思われ一週間ほど警察の人にお世話になったりした。そのあとは諸々の手続きとか、なんやかんやあった。


さて、記憶を改ざんしてからの彼女の生活はとても良くなっており元気に走り回っていた。身長とか伸びないけど。


「ねぇ、あれ乗ろうよ!あれ!」


「んー?観覧車か?いいぞ」


元気に俺の服の裾をつかみながら観覧車を指さす彼女の様子を見て俺は笑った。少しでも彼女の生活が良くなったのなら俺は嬉しい。


別に博愛主義と言う訳では無いが、不幸な人を見ると何故かこう、手を伸ばしたくなるのは俺の良い所であり、悪い所なのだろうと思う。


さて、次に対処しなければならないのは……日本の幻想管理局だろう。


忙しくなるな、これまでの頻度で彼女に構うことが出来るのだろうか?最低限勉強の知識も埋め込んだので高校には行ってもらうが。



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