死神帰還
一応ギャグみたいな感じで行きたい。
「なぁ、君。この世界に死神は必要か?」
既にこれを聞き始めてから数十年。異世界へと来てから百数年だろうか。これに意味があるのかは分からない。なぜならこの世界に死神という概念は元々なかったから。死神という存在が居なくても、なお死が蔓延るのは生物としての絶対だからだろうか?ならば私は必要なのか?
だからこそ聞いてきたのだ、幾年もずっと。
とある神官が言った。
「死神という存在はいない、神を偽るな背徳者」
とある村娘が言った。
「死を司るのが死神なら、存在しないで!」
とある老人が言った。
「別に居てもいなくてもいい。既に死に体なのだから」
とある子供が言った。
「死ぬのは辛いんだよね?なら僕はいらない!」
とある……彼女が言った。
「大丈夫、いつかはあなたを必要としてくれる人がいるから」
そして、とある神が言った。
「貴様は……本来は心優しいのだろう、心に大きな傷を受けているぞ……仕方がないな、力を自由に扱えるようにしようか、そのように貴様を改変してやる。さぁ、お前はもう自由だ。己の意識を取り戻せ」
そして私は自我を完全に取り戻した。
「……久し……ぶりだなぁ」
涙が止まらない。
「帰って、きたんだ。何年も求め続けた日本を……うぅ……」
世界を渡るために神の力を得ようとしたら、死神となっていたのだ。だが今の自分は違う。報酬として取り戻したのだから、帰還する権利と共に。
「あの世界を救ったんだ、自我が薄くても……な」
神が生まれるのは存在しない神がいる時のみ。だからあの世界には存在しなかった死神に俺はなってしまった。その力を使い邪神と争ったのだ、世界中の魂を取り込んで。
「……感傷に浸るのはいいが、ここを去らないとな。直ぐに警察が来る」
懐かしい単語だ、今後はもっとこういう気分になってしまうのだろうか?それより帰ろう。時間経過は気にしない。異世界に連れてこられた時間と同じらしいからな、自宅に帰らなければ。
「おっと、格好は……仕方がないな。元の服は朽ちてしまったからな」
ローブに大鎌というありふれた死神の格好である。ローブを深く被り歩き始める、大鎌を体の内に仕舞い込みながら。
場所は東京のとある横断歩道。様々な人に携帯を向けられ、映像を取られているのだが、そんなことは関係ないのだ。神格を得てから姿を消すことも出来るのだからな。
「はぁ、なんでこんな場所に出したのだろうか。記憶は色褪せてないからここに居た訳でもない。あの馬鹿神は……」
やはり適当なところがあるのだろう、大雑把なのはやはり神と言える。
「……ま、家も変わらんよな。そら俺がこの世界に戻ってきてから数十分だもの、空き巣もここら辺居ないし」
全く変化のない我が家、リーマンの憧れの持ち家である。俺からすると百数年ぶりの家だ、胸の奥のどこかが歓喜している。言葉にできない歓喜が。
「あはは、また涙が出そうだ。神になっても俺は人なんだなぁ……意味がわからんなぁ……人なのに神、神なのに人。現人神か?実際そんなものか」
さて、そろそろ寝ようか。明日は仕事だ、今日は日曜日だったのだ。まだ昼時だが徹夜を5夜したんだからな、寝ていいだろう。睡眠なんて既に嗜好の範囲だが、人として癖になっているからな。
「うんうん、この床が懐かしい。敷布団か……あぁ……懐かしいなぁ」
そして落ちていく。
「あー、地下鉄も懐かしいなぁ……」
目が覚めて諸々準備して速攻で服に着替え、朝食食べて地下鉄へと乗る。その動作すらも懐かしい、昔は意識せずとも行えた動作だが今は意識ないと忘れてしまう
うん、このまま平和に過ごしたいものだ。時折刺激を求めそうだけどな。とりあえずこの周りの死臭を気にしないように。
死神になってから俺は死に対して敏感になってしまった。別にどこの誰が死んだとかは分からないけど、死にかけている生き物の気配を感じることは出来る。それでなぜ死臭が漂ってるかと言うと。
(明らかに過労だよなぁ……ブラック企業か、うちは真っ当な会社だからね。問題ない)
所謂勤務外労働、残業のし過ぎで死にかけているということだ。カフェイン摂取して無理やり動く現代のゾンビたち。うーん、どうにもならん、力でその会社を物理的に壊せるけどそれじゃあ根本的な問題が解決しないし。悲しいねぇ……
することに関してはもうね、うん。仕事するしかない、取引先とか色々と考える必要があるけれども俺は関係ないし。俺が相手にするのは……
「強度はこれくらい……ですね。はい、注文通りですよ」
「あいよー、んじゃ見せてくるわ」
土木業である。それも生コンを作る側の。確かこの人って依頼先がえっーと……公共事業だっけ?道路か、どこのだろうか。あー、最近作ってるって言う国道か。なーる、だからこんなに大量発注が来たのか。
「しばらく安泰だなぁ」
「おうよ。公共事業ってのは安定した収入だからなぁ、ばしばしやって欲しいもんだよ」
「いや、それはそれで……そこまで忙しくないか」
「普段通りだからなぁ、材料発注はしたかー?」
「この俺がミスするとでも?」
「おーう、そしたら明日の分も大丈夫か」
「流すなよ、まぁいいや、今日はここで俺上がるわ」
「どうしたよ?今日なんかあんのか?めっちゃ元気そうだったけどよ」
「おう、あれがあるんだわ。あれが」
「あれだぁ?もっとはっきり喋れよォ!」
あ、ウザ絡みは行けませんお客様、いや。上司よ、やめてくれ。
「久しぶりにビール飲むってだけだ」
「あー、お前酒に弱いもんなぁ……今度飲みに行くか?」
「無理だ、お前のペースやべぇし」
上司と言っても元同輩だ。だから気安く接するし、気安く接してくる。特に関係も変わらん。ていうか上司という役目を押し付けたせいか若干恨めしそうに見てくるのが滑稽である。
「んでまぁ……上がるんだろ?」
「そうだなぁ、じゃあな」
「いつの間にか帰宅準備してやがった!?」
「用意周到でね」
「相変わらずだなぁ」
その呆れた顔がやはり嬉しい。今日1日だけで何度も何度も懐かしい気持ちに、嬉しい気持ちになった。いつもの日常が幸せだと言うのはやはり失ってからわかる。
さて、気持ちをうわつかせながら帰宅しているのはいいのだが、地下鉄から降りると同時に凄まじい死者の気配を感じ取ってしまった。まぁ、当然不機嫌になる。少々威圧感が出てしまっても仕方が無いだろう、あっちの世界だとありふれた死者の力だがこの世界では脅威なのだ。故に自分が対処しなければいけなかった。
「はぁ……路地裏の先か。路地裏入ったら即座に着替えだ」
死者の気配がする方に足を進め、路地裏に入ったところで腕を振るい自身の神界にカバンと服を仕舞い、己の戦闘用の服に着替える。神界というのは神の心を映す世界でもあるし、管理する場所でもある。死神である自身の神界は死者が集う冷たく無機質な優しい世界になっている。それとは別にマンションの一室程度の空間もある、そこが俺が基本的にいた場所だった。
「……ん?戦闘音。誰かが戦っているのか」
別に不思議ではない、俺みたいな神もどきもいるのだから戦える人がいるのは予想がついていた。なので大人しく見るだけに留めておく。
そこで戦っていたのは少女と異形の存在である。異形の存在は餓鬼に近いだろう、細い腕も細い足。でっぷり膨らんだお腹に欲にまみれた顔だ。ただサイズは2メートルはあるだろう。
そして少女の方は一言で言うならば魔法少女である。イメージとしてはまど○ギっぽいし、プリズ○イリヤに近いのだ。杖から光を撒き散らしながら餓鬼もどきと殺しあっていた。
不憫だ、その少女を見た時その一言が脳裏に浮かんだが即座に消す。別に彼女になにか不幸があった訳では無い、そういう悲壮感がある気配を纏っていない。死者特有の気配も放っておらず生命に満ち溢れているところを見るに、とてつもなく張り切っているのが分かった。このタイプの餓鬼には少々オーバー気味だが。
「……だが、ダメだな。この餓鬼は擬態している。本来はもっと上の存在だ」
直感的にわかる死者の気配がそれを物語っていた。その証拠に少女の攻撃はひとつも決定打となっていなかった。逆にその顔を愉悦に歪ませていく、恐らく内心では少女を甚振る妄想でもしているのだろう。奴らはそういう存在だ、餓鬼とは許されざる罪を犯した人間がなる存在なのだ。だからこそ餓鬼は愉悦を求める。欲求に従う。
「ん?姿が変わった。遠距離から近接に変えたのか、イケナイなそれは。捕まるぞ」
少女が持っていた杖がいつの間にか剣へと変わっていた。それはつまりこれより近接攻撃を行うということだろう。さすがに見過ごせなくなった、ここでひとつの未来を潰させる必要が無い。自然と足が餓鬼の元へとゆっくりと歩みだした。
それでやっと餓鬼と少女がこちらの存在に気づく。餓鬼は次の獲物が来たと喜びそうな顔をし、少女はこちらを見て驚愕していた。
「ちょっ、え?結界機能してないの!?いや、してるのに……あれぇ?」
「機能はしてるさ、だがこの結界は人用だ。俺には効かないよ」
「……ってことは新手かな?殺る気?」
「助太刀に来たんだけどな、このままだと君死ぬし」
あぁ、ほら。そこ危ないぞ、後ろをみろ。餓鬼が力を解放したぞ。餓鬼が力を解放したら姿を変える、それはそれぞれだけど今回は一般的な餓鬼だ。だけどそれでも上位の存在だ。
「なぁ、多財餓鬼。やっぱりお前は餓鬼の中でも最上位だったか」
餓鬼は三種類いる。
無財餓鬼、一般的なイメージはこれだろう。何も口にすることを許されなかった餓鬼だ。
少財餓鬼、不浄のものしか口にできない餓鬼。糞尿、死体などしか食えない、ある意味怖い存在。
そして多財餓鬼、全てを食うことは許可されているが常に飢えていて満たされることの無い餓鬼。
『あぁ……腹が減ったなぁ?食わしてくれよそこの嬢ちゃんをよォ……』
「それを俺が許可するとでも?」
『許可するとかしないとかかんけぇねぇんだよ!クワセロヤァァ!』
「はぁ……」
ダメだな、俺が何者か何となくわかっているくせに逆らってくる。少し力をつけただけでこれだ、だから罪人の魂は嫌いなんだ。取り込むだけで終わりだな、誰が神界にこいつを招くか。
「死神に逆らうということを教えてやるよ」
『何が死神だァァ!冥府神よか怖かねぇ!』
冥府神……ねぇ。名前を明かしてないのか?それは神として結構致命的だけどな。
「冥府神は冥府の管理をする。なら死神は何か。魔法少女、答えてみる?」
「え、何?厨二病?」
「……何も感じとれてないのか。それより答えるか聞いてるんだがな」
「死神ねぇ……死神ってさ、死を司ったり、死者の管理してるんじゃないの?」
「そう、その通りだ。もう少し詳しく言うと魂を管理するのが死神だがな」
まぁ、俺は違うけれども。別に死者の管理とかしてないさ、権能としては存在するが。
それそれとして、察しがいい人ならわかったのではないだろうか。冥府神は単に冥府を管理するだけなのだ、なぜなら死者の管理は死神がするから。冥府神がやるのは冥府の存続のみ。それ以外のことは気にすることでもないらしく、興味が湧いてこないとのことだ。これはあっちの世界の話だから別かもしれないが役目は変わらないだろう。
「つまり、だ。死者であるお前が……『死の神』に逆らえるわけないだろって話だ」
『がっ……ごっ……!?』
「別に理解してもらう必要も無い。お前にはこれから俺の糧になるだけだからな。サヨナラだ」
餓鬼に権能を使い跪かせそれに近づき俺は、餓鬼を喰らう。後ろの少女にバレないようにローブの内側に取り込んでから。
「ふぅ……不味い」
「ちょ……ちょっとあなた何やったの?」
「喰らった」
「食らったって、食べたの?」
「まぁな」
「それ私に言ってよかったの?」
「いつでも殺せるしな」
「逃げるわよ?」
「魂を覚えたから死んでも無駄だけどな」
「ひぇっ……って何よこれ」
「茶番だな」
打てば響くように返してくれるから楽しんでしまった。実際魂覚えたから逃げられても問題ない。俺が死神かどうかよ判断も出来かねているようだしな、そのまま放置で困惑させようか。
「これで俺の仕事は終わり。帰ってビール飲も」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「なんだよ、帰りたいんだよこっちは」
「そんなことよりあんた何者なの?」
「死神だって言ってんじゃん」
「誰がそんなこと信じるか!」
「まぁ信じなくていいさ、力を持った人外だと認識しとけばな」
今後合うかどうか分からないしな。俺も彼女のことを気になっているし。なんというか魔力の塊がふたつあるのだ、彼女の体内には。普通は魔力の塊、貯蔵庫がひとつしかない。ふたつある人は大抵が移植、後付けになる。
「その力は誰から受けとった?」
「……言うとでも?」
「明らかにおかしいから聞いているんだ。元々の力じゃないだろう?」
元々力があったならさっきの餓鬼とはまともに戦えてたはずなのだ。なのに力に振り回されているように感じた、それは大抵がいきなり力をつけた反動によるものだ。車ならトラックからスーパーカーに乗り換えたとでも思ってくれていい。少々違うが。
「とりあえずその髪飾り、気配を消したつもりか?さっき俺は言ったよな、魂の管理をすると……魂が見えてるぞ?」
これの能力のおかげで俺は異世界でも渡り歩くことが出来た。長年付き添ってきた相棒みたいなものになる。能力なのにな……
「え、どうしよう……バレてるって」
「仕方がありませんね……」
「コソコソ話すなー、聞こえてるぞー。無意味だぞー」
「えぇそうですか!アルファ、出てきて」
「はい、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
髪飾りが動き出す宙に浮く。魔法少女してんなぁ。髪飾りの色は赤をベースにしたリボンだな、まんま少女が着けているって感じ。日本にこんなの居たんだなぁ……新しい世界が見えたよ。
「アルファというのだな、質問に移っていいか?」
「えぇ、どうぞどうぞ」
「彼女に渡した魔力はどこから持ってきた?」
「私のです」
「なら魔力は共有ということか?」
「ですね〜」
ふむ、それはそれで心配になるな。魔力が共有されているということは彼女の中には既にこの髪飾りの因子が存在してそうだ。
「魔法少女……でいいのか?」
「魔法ではなく魔装少女ですね〜」
「ちょっ!それ恥ずかしいからやめてって言ったよね!?」
「そうは言われましても正式名称ですし……」
「どうでもいい、魔装少女になるデメリットはあるのか?」
「ありますよ」
「その内容は?」
「恥ずかしい服になっちゃうことですかね〜」
「自覚していたか……」
ちょくちょく視線を外していたが彼女の格好は普通に恥ずかしい。年齢は分からないがおおよそ小学生程度だろう。そんな子がおへそを出しながら生脚を出しているのだ。正直変態かな?って思ってしまう。
「うぅ……言わないでよー!人避けの結界がなければこんなことしないって!」
「分かってはいるのだがなぁ……痴女だよなぁ……」
「えぇ、痴女です。どこから見ても痴女です」
「アルファ!あんたのせいでしょ!?」
「そうですよー?」
「きぃぃぃ!切り刻んでやりたい!」
「他にはデメリットないんだな?」
「まぁそうですね〜」
愉快だなぁ。関係は良好かな?これなら心配しなくても良かったか?余計なお節介の可能性があるな。
「それよりあなた〜……さっき人外とか言ってましたよね〜?」
「ん?そうだな」
「ならこの子と契約してくれませんかぁ?」
「契約?どういったものだ?」
「力を貸し与えてくれる、みたいな感じです〜。さっきこの子姿変えてましたよね?それですねぇ」
「なるほど、ならあれはどこのやつから力を貸してもらったんだ?」
「幽霊剣士ですね」
幽霊剣士、ここら辺に居るのか?なるほど……少し話を聞いてみたいな。このアルファとやらは少々恐ろしいが。そこはおいおいだな。
「まぁ力を貸す程度ならいいが、ろくなことにならんと思うぞ?」
「そうですか?ちなみにあなたなんの力を持ってるのか教えて貰っても?」
「死」
「はい?」
「『死』だな、死者を統率する力もある」
「なるほど〜……この契約魔法陣に手を当てて貰えます?能力は後々確認すればいいですし」
うん?見たことも無い魔法陣だな、何か違和感が……あぁ。これあれか。封印式ね。
俺はアルファが出した魔法陣に手を当てた瞬間力が吸い込まれるような感覚があった。明らかにこちらを吸い込んでくるような感じだから俺を封印して力にするって感じだろう。なるほど、よく考えるな異世界連中は。魂構造が違うから簡単に分かったな。
「引っかかりましたね〜?油断大敵ですぅ」
「やった!これでここも平和になるね!」
「そうですねぇ」
うん、明らかに冷たい声で同意の声をしている。侵略者からすると彼女は強者を封印、もしくは倒してくれる都合のいい存在なのだろう。ある程度は利用価値があるんだろうが……
「あれ?なかなか封印できませんね〜?たかだか人外のくせに強いんですね?」
「何となくお前が何なのかは分かってたんだが、露骨に意識を逸らす効果を魔法陣に組み込んでるとは思わなかったぞ?」
「まだまだ余裕そうですね〜、あなた自身の力で死んでみます〜?大分力奪ったので簡単にあなたを殺せそうですし〜」
「感知技術に関しては栄えてないんだな。未だに俺を舐めてくれるのか……滑稽だなぁ」
今の俺は凄く悪い顔をしているだろう。どうしようか、この報復を。異世界のやつのくせにこの世界に介入するのかぁ……そうかぁ……俺はまだ特例だろう、元々この世界の住人だからな。よし、異世界連中を蹂躙しようかそうしようか。
「何気味の悪い顔してるんです〜?自分がピンチなの分かってます〜?馬鹿ですかぁ?」
「とりあえず、この子から離れようか」
魔力の共有は因子から行われている。その因子はこいつの魂。なかなか高い技術力だこと。その繋がりを断ち切り、魂を回収。関連してこいつがいた異世界を特定。転移魔法用意。
「あれ?アルファ、繋がりが切れたよ?」
「なっ!繋がりをどうやって剥がした!?」
「魂でできてるから簡単だったぞ?」
「……貴様の力で貴様を殺せばここは問題ない!因子は後で入れ直せばいい!穂乃果、少し待っててね」
ほー、あれが力を使うってことか。確かに死を感じはするがうっすいなぁ。あれが元々俺の力なんだよなぁ……さっき喰った餓鬼の死にすら届いてないじゃんか。無能かな?
「死の力がお前の力なのだろう?ならばさっさと死ね」
こっちにそれを向けてくるが、無駄だよなぁ……って思った。元は自分の力なのにコントロール出来ないはずがないだろう?
「とりあえず……君の世界に行こうか」
「な、何故効かない!?」
「元々俺の力なのに死ぬやつがいるか?こいよ、お前の世界の終わりの時間だァ……!」
あー、楽し。確かに俺はね、死神で死者を管理するんだけどさ、死を招く存在でもあるんだよ。それは異世界でも変わらなかった。そのせいかね精神構造が大きく変わったらしい。こういう大虐殺する行為の最中アドレナリン?がドバドバ出るようになったんだ。
「ふ、ふざけるな!そんなの横暴だぞ!?」
「神の取り決めその1、他の神が創った世界に過度な干渉をしない」
「なんだそれは!」
「お前、神器だよなぁ?」
「な!」
「それってつまりさぁ……」
異世界の神公認の侵略ってことだろ?それは報復しないとなぁ……!今からそちらに向かいますって連絡しとこ。取り決めを破った神が辿る末路はひとつ。死あるのみ。世界神だろうが創造神だろうがなんでも来いよ。等しく死を与えてやる。
「拝啓、ドーラン世界、創造神のルーマンアーリー様。今からそちらに死神コウマが向かいます。死を覚悟しろ」
異世界を蹂躙するのに数分も要かからなかった。