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3話 セッカとの再会 そしてザマァ展開

「遅いぞルーシー‼︎ 貴様一体どこで油をうっていた‼︎ しかも魔物も居ないとは、これだからなりそこないは……」


聞き飽きた怒声……。

その言葉に俺はうんざりしながらも無言で首を差し出す。


「ごめん、襲われたからつい魔物を殺してしまった」


「なっ‼︎? この馬鹿野郎‼︎ おびきだせって言っただろうが、人の話聞いてなかったのか?」


襲われたからという説明を聞いてなかったのかと言おうとしたが、その言葉をぐっと飲み込んで俺はさらに謝罪を重ねる。


「本当にごめん。 首だけ持ってきたから」


「まったく……本当に使えない奴だ」


そういうと差し出した首をガルドラは奪い取る。

文句を言いつつもその顔はどこか嬉しそうだ。


「こいつは、タイニードラゴンか。 この程度の魔物に親父も恐れをなすとは。老いて腰抜けになったか、情けない」


ニヤニヤと笑うガルドラに俺はハッとする。

確かに体の部分は溶けてなくなってしまったため、首だけを見ればただの龍の首にしか見えない。


「……あ、その魔物は」


その為俺は、実際に戦った際の形状を伝えようとしたのだが……。


「うるさい! いつまでそんなところにいるんだルーシー! やることが無いんだったら鎧磨きでもしてろ‼︎」


話を聞くどころか新しい仕事を押し付けてくる始末。

もう少し労いの言葉の一つもあっていいと思うのだが……まぁ、文句を言ったところで待遇がかわるわけでもないので、俺は命令通り黙って次の仕事に向かうことにする。


とぼとぼと帰るひとりの帰り道。


ふと頭に、先ほど助けた女性の声が響く。


もし、今よりはるかに高待遇な場所が其方を受け容れるって言われたらどうする?


「そりゃ、行きたいけどさ」


そんなことはありえない。 そう呟いて俺はその場を後にした。



「おい、なりそこない。族長様がお呼びだ、すぐに向かえ」


押し付けられた鎧磨きを一人黙々とこなしていると、族長補佐のアクルがそう声をかけてきた。


「すぐにって……俺鎧磨きをしててドロだらけなんだけど」


俺は鎧の山をアクルに見せる。

だがアクルはせせら笑うように鼻をならすと。


「どんな格好だろうと変わらんだろうお前は。いいからさっさと行けのろま」


「むぅ、なんだよもう」


どやされるように俺は立ち上がると、そのまま族長の家へと向かう。


藁で作られた俺の家とは違う、立派なレンガで作られた族長の家。


「ああは言われたけど、流石にこれはまずいよなぁ」


族長は気位が高く、特に俺のようななりそこないを毛嫌いしている。

まだ、同じ村で生まれたよしみで情けをかけてもらっているが。気分を害せば藁よりも軽く俺は村を追放されてしまうだろう。


せめて砂ぐらいは落としておこう。


俺はそう思案して、家の前で簡単に体の泥を落とす。


と。


「ん? なんだこれ」


ふと手の甲をみると、なにやらあざのようなものが浮かび上がっている。


さっきのドロドロとの戦いでついたのだろうか? 羽、もしくは尻尾のような模様にも見える。


「変な形……」


俺はそんな感想を漏らし、あざを触ってみるが痛みはない……特段体に別状はないし、ただ単に先ほどの戦いでぶつけただけのようだ。


「てめぇルーシー、何サボってやがる」


そうやってあざを眺めていると、背後から響く聞きなれた声。


振り返ると、案の定、先程倒したドラゴンの首を手に持ったガルドラの姿があった。


「あぁガルドラ、サボってるわけじゃ無いよ。ただ族長に呼ばれて」


「おまえが親父に? はんっ、丁度いい。 親父にこいつの首を見せてやるからお前もこいつを俺が仕留めたって証人になれ」


ニヤリと含み笑いをするガルドラ。

自分の手柄を主張したところで何もいいことはないので。


「わかったよ」


そう頷いて、意気揚々と扉を開けるガルドラの後に続いていった。


「来たようだな……おや、ガルドラも一緒か」


中に入るとそこには族長であるガルルガの姿。

白い髭に眉を携え、狼の毛皮を背中に羽織った老人であるがその眼光は衰えることとはなく俺を射抜く。


「よう親父、いい知らせが……ってなんだぁ? 客人か」


この村に珍しい、と呟くガルドラ。

ガルドラの後ろから、家の中を覗くと、そこには森で助けた女性、セッカが座っている。


人間と対立状態にある人狼族の村に用事があるなんて、珍しいとは思ったが族長のお客さんだったのか。


「っ……!」


ちらりと目が合ったが、約束はしっかり守ってくれているようで。

愛想笑いを浮かべるのみで目線をそらしてくれ、俺はほっと心の中でそっと息をつく。


「客人かぁではない……まったく、すまぬのぉ。うちの倅は体は大きいが外を知らぬゆえに礼儀を知らぬ」


「何、我は構わぬよ。なにやら大事な話のようじゃし、聞いてやるべきよ。我の話は長くなるしな」


「すまない。それでどうしたガルドラ」


「あぁ、あんたが怯えてた森の魔物……俺が退治してきてやったぜ‼︎」


そう言って紐で括られた首を見せつけるガルドラ。


すごい残念そうなものを見る目でセッカがガルドラを見ている。


というか小さな声で「うわー」とか言ってる。


「なんと、あの魔物をか」


「あぁ、怯えるこたねえ。森に潜んでたのはこのタイニードラゴンだ。俺にかかれば恐れるに足らねえ雑魚魔物だったぜ」


得意げに胸を張るガルドラ。


やめてセッカ。「なんなのこいつ?」という表情で指を指さないで。

あとこっち見るなバレるだろ。


「流石はわしの息子よ‼︎ このような魔物に怯え森を塞いでしまったとは……おかげで村を飢えさせるところだったわ。 わしもそろそろ引退を考えるべきかのぉ」


「そうだぜ親父‼︎ この俺にまかせれば、村はなにも心配いらねえ‼︎」


「ふはは、頼もしく育ちおって。 鼻が高いぞ‼︎」


なにやら楽しそうに笑いあうガルドラとガルルガ。 その笑い方は似た者親子という言葉がぴったりであり、そのいつもの光景をぼーっと眺めていると。


「はて、これは異な事を申すものよなガルドラ殿」


ふとセッカが口を挟むようにガルドラの名前を呼ぶ。


その表情は何か良からぬ企みをしているのが丸わかりな笑みを浮かべており、余計なことをするなと視線を飛ばすがあっさりと無視された。


「なんだぁ? お客人……なにが変だってんだ?」


「いやいや、これ以上おかしなことがあろうか? 黒龍の幼体の首を引っさげてこれをタイニードラゴンと叫ぶのだからの」


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