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34 羽虫と蟻

お待たせいたしました……。

もっと更新速度上げたい……。


 地面へ転がった悠人は、しばらくしてから上体を起こした。


 遠目に見える戦場は、未だなおここからでも見える盛大な土煙を上げている。


 そして、その中でもひと際異彩を放つ、巨大蟻。悠人を叩きのめし吹き飛ばしたその怪物は、核爆発が如き無数のキノコ雲が上がる中でさえもその巨躯を隠しきることが出来ず、のっそりのっそりと歩き続けていた。


 もしかしたら追撃があるかもしれないと警戒していた悠人であったが、それを見てふと力が抜けたのが自分でも分かった。


 しかし、同時にすーっと冷たいものが背中を這った。


 ()()()()()()()()()


 今までは、どんな格上の怪物であっても、目があったら真っ先にこちらを殺そうとしてきた。


 一番初めに出会ったゴブリンもどきも、次の巨人(トロル)も、”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”も、”漆黒の母蛇(サーペントマザー)”だって一切の容赦なく悠人を殺そうと牙を剥いた。


 おそらく逃げたとしても、執拗に追ってきただろう。


 現に、一回逃げ切った”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”は怒りの為か悠人の隠れた洞窟の入り口に向かって何回もビーム砲を放ってきていた。


 しかし巨大蟻は、こちらに興味もないとばかりに無視している。


 おそらく、敵として見られていない。脅威としてとらえていない。


 ハエが目の前を飛んでいても、追い払おうとはするがわざわざ殺そうとはしないのだ。


 悠人はあくまでこの場所を通過すればいいのだから、無理して相手にする必要はない。


 しかし、この先はもっと強い怪物が生息している可能性が高い以上、アレに傷も与えられない程度の力ではこの先に進むことはできないだろう。


 悠人はゆっくりと立ち上がる。


 先ほど負った傷は、肉体を高速修復させる技、<外傷治癒(フレッシュヒール)>を改良しより多くの情報体を使用することでその効果を高めた<外傷超治癒(フレッシュハイヒール)>を使う事で、移動に差支えが無い程度には回復できた。


 痛む体を支えながら、物陰に座り込む。


 この辺りの怪物は、先ほどの戦闘音で軒並みあちらの方へ行っているだろうからここはしばらく安全だ。


 ここで体を完全に回復させつつ、新たな技を開発することにしよう。


 今までは、これまでの技でどうにかなっていたが、これからはそうはいかないという事が、先ほどの危機で痛いほど良く分かった。


 まずは、近接戦闘。


 現在近接で使える攻撃技といえば、<石の一撃(ロックシュート)>と<石の衝撃(ロックバースト)>、それとそれらを発展、改良した<暴星雨メテオスター・ストーム>。


 しかしそれらはどれも、相手を弾き飛ばすだけで致命傷を与えることが出来ない、いわば欠陥技を呼べるものなのだ。


 ただそれでも十分な効果を発揮しており、それらの技で飛ばした敵を中遠距離技である<戦きの人閃光(グレート・レイ)>で貫けばそれでよかった。


 しかし、あまりに飽和した敵、視界を埋め尽くすほどの怪物を前にしては力不足だった。


 攻撃が続かないのだ。


 どの技も、情報体を使う上でのクールタイムがある。


 例えば<暴星雨メテオスター・ストーム>であれば約1.5秒、 <戦きの人閃光(グレート・レイ)>であれば約3秒間は待たなければ同じ技を使うことはできない。


 その程度の隙であれば、普通はあまり弱点にはならないはずなのだが、すでに亜音速~超音速での戦闘が通常となっている現状ではあまりにも大きな隙だった。


 だから新しい技、それも連射可能で強靭な相手にも致命傷を与えうる技の開発が必要だ。


 実は、それについてのアイデアが一つある。


 そのキーとなるのは、情報体というものの性質である。


 情報体により、その情報を読み込む(ロードする)ことによって動きを強制させる性質。


 ”世界を書き換える”とも言えるその強制力、他のあらゆる事象よりも()()()に望む事象を起こす情報体を上手く使えばもっと強力な技を使えるはずだ。


 しかし情報体は、他の魔力や気力の影響を強く受けている場所へ直接読み込む(ロードする)ことはできない。


 生物の身体や、誰かが放った魔法などである。


 だが、その対象が情報体のロードを受け入れれば話は別で、例えば自分自身の身体には、自分が情報体を受け入れることでその内部にロードが可能になる。


 それを使えば。


 まず、自分の魔力を放射状に放出させる。


 次がこの技の肝になるのだが、その放出した魔力に『透過』の情報体を付与することで、その魔力はあらゆる物質、エネルギーを透過することができる。


 透過する物質を限定する場合は『空気』の情報体を新たに追加したりすることでそれも可能になるが、今回は必要ない。


 そうして、敵の身体や魔法すらも透過した魔力は、敵の身体に入り込み、透過を止めることで内部に残留する。


 ちなみに、魔力以外の岩や空気を透過して解除することでいきなり肉体を切断、貫通させることも前に検討したこともあるのだが、それはどうやら物質同士が干渉するようで、岩や空気は肉体の外へ弾き飛ばされ、質量のないエネルギーである魔力くらいしか肉体の中に残留させることは不可能だった。


 そうやって敵の肉体内部に侵入させた魔力だが、これは悠人自身の魔力だ。


 時間が経てば制御が上書きされ、敵の魔力になるだろうが、侵入直後は少なくとも悠人の魔力であることに違いはない。


 そして、その悠人の魔力に新たに手に入れた情報体の一つ『分断LvΩ』をを使用し、魔力を割断する。


 それはまさに、鉄の混入した合金が磁石に引き付けられるように、ほんらい水分子しか加熱しないはずの電子レンジに入れた物が他の物も温かくなるように。


 割れようとする悠人の魔力に引っ張られるように、敵の肉体自体もその肉体強度よりも()()()に割断されるだろう。


 近くにあった岩で実験するとうまくいった。


 だがちゃんと発動するか、生物で実験したいところである。


 ……技名はどうしようか。


お読みいただきありがとうございます。

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