幕間 国際エネルギー研究所(芭風やよいの場合4)
申し訳ありません。
主人公以外の視点書くのに慣れてなくて遅れました。
立ち並ぶ高層ビル。
やよいが今まで見たことが無い、流線型のビルとそこに走る光のライン。
幾つもの林立するビルには、網のように橋が架かっている。
それは、今まで見たことがあるものではなかった。
それは、いつしかテレビで見た近未来を想像したという景色に似ていた。
その中を縫うように走る高架道路。
そこを走る車の後部座席にやよいの姿があった。
「あともう少しで、国際エネルギー研究所に到着しますよ」
運転席からそう言ったのはエイヴァだ。
やよいがこの世界に転移した直後、魔物に襲われていたところを助けてもらった女性兵士である。
助手席には、その時にいたエイヴァの部下が座っていた。
やよいたちは今、国際エネルギー研究所に向かっている。
その理由は、やよいがこの世界に転移したとき持っていた羊皮紙。
人間の保有する魔力と気力、そして未だその実態を掴めずその量の測定をできない霊力の数値を表示する機能をもつ羊皮紙を活用するである。
その羊皮紙には、通常の魔道具とは違い霊力が宿っており、やよいが近くにいないと距離に比例して霊力が無くなっていく。
霊力が使われている魔道具は他にはないが、魔道具は内在しているエネルギーが失われるとその機能が失われるのだ。
だから、羊皮紙を活用するためにも、やよいは一緒に研究所へと向かうことになった。
道具のついでとして研究所に行くことになってしまうやよいに、エイヴァは深く謝罪し、嫌であれば行かなくて良いとも言ってくれたが、やよいに不快感などは無かった。
それよりも、今のごくつぶしの様な生活をしている方がいたたまれなく感じていたので、やよいにとってその話は渡りに船とすら思えたのである。
「その国際エネルギー研究所が前に仰っていた、霊力を研究している研究施設なんですよね……、そこではいったいどういう研究をしているのですか?」
エイヴァはバックミラーでやよいの姿をチラリと見ると、それに答える。
「国際エネルギー研究所では魔力、気力、霊力について包括的に研究を行っています。世界でも有数の規模の大きな研究所ですからね。その原理法則などといった根本的なことから、実用的なことまで幅広く研究を行っています」
「……すごい場所なんですね。少し緊張します」
「ははは、大丈夫ですよ。大きいと言っても、やってることは他の研究所と変わりませんから」
研究所という時点で緊張するものなのだけれど、とやよいは思う。
それでも、もう行くことは決めたのだから詮無きことか。
やよいは車の窓から、外を見た。
空には、流線型の飛空船が浮かんでいる。
飛空船は、太陽の光でその銀色の外殻を鈍く光らせていた。
◇◇◇
「おお! 貴女がハナカゼヤヨイ様ですか!! お話は聞いております!!!」
やよい達が国際エネルギー研究所の中に入り、職員に案内されると、研究所の廊下で白衣を着て眼鏡を掛けた一人の青年が声をかけてきた。
青年の群青色の髪はぼさぼさであり、目には濃いクマがある。
その顔は整っていたが、その疲れているはずなのに高いテンションがその造形をこれでもかというほど崩していた。
大きな声を上げた彼は、突然のその大声に呆然としているやよい達を見て、気が付いたように白衣を整える。
しかしその白衣の乱れが、その前よりも整っているようには思えなかった。
「おっと、失礼いたしました。私は国際エネルギー研究所・霊力研究部・部長のオダナリ・レディベリーと申します。ご足労いただきありがとうございます。待ちきれずにここまで出向いてしまいました。どうぞこちらへ」
オダナリはそう言って、やよい達を案内する。
そのままこちらを置いてずんずんと歩くオダナリ。
ここまでやよい達を連れてきていた職員は、苦いような呆れたような顔をしていたが、それよりも疲れたといえる感情がその表情から感じ取れた。
もしかしたら、オダナリは良くこのようなことをする人なのかもしれない。
その職員と顔を合わせると、付いて行ってあげて下さいと申し訳なさそうに言われた気がしたので、やよいはそのままオダナリを後を追う事にする。
エイヴァ達も同じことを考えたようで、そのまま同行した。
案内されたのは、研究所内の応接室だった。
落ち着いた雰囲気のある、清潔感を覚える室内は、その管理が行き届いていることが良く分かる。
重厚感を感じさせるソファやデスク、センスのいい調度品はしかし圧迫感などを感じさせることは無い。
それらを上手く配置し、客を寛がせる様に配慮しているのはうかがえる。
やよいとエイヴァがソファに腰を掛け、一緒に来ていたエイヴァの部下はその斜め後ろに直立した。
そして、机を挟んで向こう側のソファにオダナリが座り込む。
すると同時に、奥にあるやよい達が入ってきた扉からコンコンとノックが聞こえる。
オダナリがそれに声をかけるとその扉が開き、そこから盆にお茶とお菓子を乗せた女性が現れる。
そして、女性は手に持ったそれらを音を立てずに机に並べると、流れるように入ってきた扉の中へ消えていった。
オダナリは目の前に置かれたお茶に口をつけ一飲みすると、話を始めた。
お読みいただきありがとうございます。
※追記
7/20は日中出かけてしまうため、更新は深夜になるかと思います。
ご認識の程お願いいたします。




