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27 VS”漆黒の母蛇” 肆

お待たせいたしました。


 ――――星が瞬いている。


 塗り潰されたような真っ黒な世界。


 そこには、宝石をちりばめた様な星々が無限に輝いていた。


 青、白、オレンジ、赤――様々な色に光る星々は、幾星霜の時を経て目に映る。


 長くを旅した光流(こうりゅう)は、それでもなお、その熱を、命を、美しさをその果てへと送っていた。


 満天の星空の下、茫漠な海原に仰向けで浮かんでいる。


 星の光のみがとどく海は、それを反射して、夜空と海の境目が僅かに煌めく以外は全て漆黒に染まっていた。


 (くろ)(くろ)の狭間で、ゆらゆらと体が揺れた。


 その瞳には輝く天蓋がまるで鏡のように映り、それを永久(とわ)に抱けるよう、染み込む光を受け入れた。


 しかしそれは、体が海へ沈んで中断される。


 体が重くなって、深く、深く沈んでゆくが、真っ黒なはずの海の中はなぜか透けるように辰星の光をとどけて、瞳はそれを仰ぎ見る。


 そしてそれらは、もっとも強く輝いて、いつの間にか周りは光が渦巻く銀河と星が輝く宇宙になっていた。


 ――――ふと下を見ると、そこには、とても大きな星があった。


 足元全体を覆いつくすような大きさの、水と緑に覆われた美しい惑星である。


 その星の地表からは、一本の円柱が伸びていた。


 その円柱は全てが半透明のクリスタルで、惑星全体から見ればとても細く見えるが、本当はとても大きいものに思えた。


 その円柱の先。


 そこには、もう一つの美しい惑星がある。


 それも緑と水に覆われていたが、もう一つの惑星とは何かが違った。


 ――――それらを眺めていると、引っ張られるように体が動く。


 その先には黒い渦の様なものがある。


 それは、二つの惑星を繋ぐクリスタルの柱の中間の近くの宇宙空間にあった。


 引っ張られた体はそこに飲み込まれ、さらに真っ黒なもので視界が埋まり――――――











 ――――――ずきり、とした頭痛がする。


 その痛みで悠人は目が覚めた。


 何か、夢を見ていた気がする。

 

 しかしそれが何だったのか思い出せない。


 ぼうっとして上手く頭が働かない。


 ここは……どこなんだ? ――何が起こって…………?


 悠人が身体を動かそうとすると、何故か体が動かせない。

 硬いような、柔らかいようなものに体が包まれ身動きが出来なかった。


 その事実に、何が何だかわからずパニックを起こそうとしたとき、頭に電撃が走るようにこれまでのことを思い出す――――











 ――――目の前に迫る、莫大なる光の奔流。大瀑布の如きそれは”漆黒の母蛇(サーペントマザー)”が放った最後の一撃。


 それを目の前にした悠人は、目を見開くと足元に向かって<石の衝撃(ロックバースト)>を幾つも撃ち放って深い穴を作り、その中へ躍り込んだ。


 <石の衝撃(ロックバースト)>を打ち続けながら、穴の壁面の蹴って下へ下へと進んで行き――そして轟音が響き、穴が崩れて体が埋まり、どんどんと意識が薄れて――――











 ――――それを思い出した瞬間、悠人は<霊の観測眼(ソウル・ゲイザー)>で周囲を確認する。


 すると、遠くの方に四つの霊力の塊を発見できた。

 そのうちの一つは、他の三つよりも大きい。


 おそらくこれが”漆黒の母蛇(サーペントマザー)”と”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”だ。


 己を起こしかけた存在に、悠人の額に一筋の汗が流れる。


 悠人が気を失ってからどれだけの時間が経っているかは分からないが、まだ前と同じところに留まっているようだ。


 そしてやつらは、何かを探しているような動きをしているように見える。


 ――やつらは何らかの手段を使って、俺が死んでいないことに気が付いているのかもしれない。


 そうなれば、いつ見つかってしまうかも分からない。

 もし仮に見つかれば、ここに逃げ場はなく完全に追い詰められるだろう。


 しかし、これは同時にチャンスでもある。


 見つかるまでは、やつらにやり返すための準備時間がもらえるという事でもあるからだ。


 悠人はニヤリと頬を吊り上げる。


 やつらは一つミスを犯した。

 それは、悠人にあの巨大なビームを見せてしまったことだ。


 あのビーム。あれは今までのものとは違い、遥かに大きな魔力を制御するため、もっと複雑かつ効果的な魔力制御を行っていた。


 悠人はそれをしっかりと<魔の観測眼(マギ・ゲイザー)>で観察し、遂に一つの技を閃くに至っていた。


 それを今から実行する。

 これがあれば、奴らに勝てるかもしれない。


 初めての試みではあるが、勝算は少なからずあるはずだ。


 悠人は右手の手のひらをかざし、右手首を左手でつかむ。


 そして、魔力の操作を開始した。


 まずは魔力を集める。これには大量の魔力が必要だ。それを周囲から根こそぎかき集める。


  悠人は小さく呟き始める。


『空気LvΩ』(まずはじめにく)『魔力LvΩ』(うきちゅうのまり)『収束LvΩ』。(ょくをあつめる。)『収束LvΩ』、(もっとあつめる、)『強化LvΩ』(もっともっとた)『収束LvΩ』(くさんたくさん)『収束LvΩ』(あつめてゆく)


 悠人の周囲にある魔力が、悠人の右手のひらを中心にして集まっていく。

 元々魔力濃度が高いここには大量の魔力が漂っているが、それでも全く足りず、もっと広範囲から渦を巻くように魔力が収束する。


 すると、そのとき。


 悠人の見ていた霊力の塊たちに動きがあった。


 それらは一か所に集まり出すと、内部にある魔力を蠢かせる。


 ――まずい、ばれたッ!?


 広範囲に魔力を動かした結果、それをあちらも感知したのだろう。

 今まで簡単に隠れられていたため、やつらの感知能力を侮ってしまった。


 ――地上のときは視界に入る距離にいても気が付かなかったくせに、こういうときだけ気が付きやがって!


 悠人はすぐさま<石の衝撃(ロックバースト)>を放ち、横に穴を作って走り出す。


 繊細な魔力制御をしている最中であり、他の行動を起こすのは暴走の危険があったが、死ねば意味が無い。


 背後で大きな爆音が響く。


 後ろを見ると、悠人が先ほどまでいた場所が光の奔流に飲み込まれていた。

 石を、土を、岩盤を貫き蒸発させる死の光が大地に巨大な穴を空けた。


 悠人は即席で作ったトンネルを疾走する


 次々に衝撃波を伴う石の弾丸を前方に飛ばし、道を作って逃げ続ける。


 制御できなくなった魔力の暴走を悠人は危惧していたが、こんな事態になっても魔力の制御はほぼ完璧にできている。

 どうやら、制御の仕方を口に出して発音していたお陰で、イメージが固まると同時に集中力が落ちず、上手く制御できているようだ。


お読みいただきありがとうございます。


最近、別の作品を書きたい病を発症している作者でございます。

もしかしたら、近いうちにまた数話分くらいの短い物語を投稿するかもしれません。


※最後の方のルビのところ考えるのに思いのほか時間がかかりました……

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