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21 VS二体の”舞い降りる黒水晶” 前編


 駆け足で走りながら、、”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”を<石の衝撃(ロックバースト)>でけん制する。


 石の弾丸が黒い鱗を貫通し体液が漏れ出るが、やはりそれ程の痛痒は感じていない様だ。


 二体の”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”はその口腔から巨大なビームを発射する。


 悠人はそれを全力で横へ跳ぶことで何とか避ける。


 爆発の轟音が鳴り響いた。


 崖からは少しばかり引き離すことには成功した。

 しかし、このまま戦ってもジリ貧だ。


 何か方法は無いか。


 奴らは基本的に鈍重だ。全力ダッシュで引き離せないか?


 ――いや、やめた方がいいだろう。奴らは鈍重だが、そのビームの精密性は凄まじい。

 今は奴らの遅さを利用してビームの射線に入らないように行動しているおかげで何とか避けられているだけで、距離を離せばそのまま撃ち抜かれるだけだ。


「――むしろもっと近づいた方がいい」


 悠人はぼそりと呟くと、漆黒の鶏卵へと疾走する。


 悍ましいその怪物に接近するのはそれだけで悠人の恐怖心を煽ったが、勝つためだと悠人は己を奮い立たせた。


 怪物は口腔を光らせ、艦砲の如きビームを放つが、射角が足りなかったため悠人へはかすりもせずに草原へと突き刺さる。


 悠人はそれを見て唇を吊り上げた。


 そして悠人はその足をばねに、一体の”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”へと躍りかかった。


 鈍重な”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”はそれを避けることが出来ず、悠人は突起の多い黒い鱗へと掴まった。


 こいつらは同族へと構わず攻撃できるのか?

 できないならば儲けもの。できるのならば、今掴まっているこいつを盾にすればいい。


 悠人は焦りや恐怖心が一周まわってやけに冷静になった頭で思考した。


 もう一体の”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”はその口腔を光らせてはいるものの、こちらに対してそれを打ち込んでくる気配はない。


 悠人はそれをちらりと横目で確認すると、表情を変えずに掴まっている怪物目がけて全力で<石の衝撃(ロックバースト)>を打ち込んだ。


 約秒間三発。分間にして二百発の弾丸が四方八方からマッハ三で飛来する。


 全てを攻撃に注ぎ込んでいる悠人の石弾は、的確に”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”の体を抉っていった。


 ――よくよく考えれば、超音速の重量弾を喰らってもちょっとした軽傷にしかならないなどおかしな話だ。


 こいつらの硬度は? 内部構造は?

 そもそもこんな形状の生物が自然界で存在できるのか?


 まあ、この場所はどうやら地球とは異なり魔力やら気力やらの不思議エネルギーが存在する不思議世界なわけで、そう考えたら今の状況はとりわけ変ではない気もするが……


 いつも心の片隅で考えていた。

 実際ここはどういう場所なのか、と。


 この世界はどういった存在なのかと。


 残念なことに、この世界がどういうものかなんて今の自分には分からないわけではあるが、それでも悠人はこの世界が現実であると確信している。現実でなかったら逆立ちして地球一周してやるよ。


 とまあ冗談はさておき、悠人がそう考えるのには一応の理由がある。

 先ほどこの世界は不思議だといったが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 不思議なことばかりなのに不自然ではない。

 言葉にすれば変な感じだが、少なくとも悠人はこの世界に来てからこの世界に対して不自然さ、矛盾や食い違いなどを全く感じなかった。


 なんというか、この状態が完璧に自然で、調和がとれている。


 この世界が、この化け物だらけの楽園だけの箱庭なのか、それとも惑星の一部がこんなのになっていて悠人が抜け出せないだけなのかは正直分からないが。


 少なくとも、悠人はこの場所の最奥に到達すれば何かがあると思っている。


 そうでなくとも、このまま強くなれば、このくそったれな世界をぶち抜けるほどの力を手に入れられるかもしれない。

 そうすれば、その空いた穴からここを脱出してやろう。


 悠人はその冷静な顔をわずかに歪ませて笑った。






 ――そのとき、悠人は体の表面から強い熱を感じる。


 何かと思えば、悠人が掴まっている”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”から黒い靄が発せられていた。


 まるで瘴気のような悍ましい靄は、悠人の体に纏わりつきその場所から怖気が走るような禍々しい熱が感じられた。


 このままではまずい。


 そう思った悠人はとっさにその手を離した。


 反射的な行動だった。

 結果がどうなるか先に判断せず反射で行動してしまう事は、そういった特別な訓練を受けたことが無い悠人の悪い癖だった。


 頭部へ攻撃がきたら反射的に目をつぶらないようにするようなものだ。

 ただの高校生だった悠人がそういった肉体反射を制御するような訓練など受けているはずもなく、それゆえの失敗だった。


 ――これからそういった自主練もした方がいいか……


 悠人がそう考えたのも束の間。


 悠人を振り落とした”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”と、その他もう一体の”舞い降りる黒水晶(ダークネススフィア)”から、空中で身動きが取れない悠人へ巨大なビームが放たれた――


お読みくださりありがとうございます。


執筆中に気が付いたのですが、主人公が使っている技の一つ<虚ろな身>について。あれの効果は「対象を空気から透過させる」というもので、主人公は自分の体に使用して空気抵抗や衝撃波を無効化しているわけですが、使用中呼吸できないのはまあいいとして(常人でも少しの間なら大丈夫でしょう、人外身体能力の主人公なら言わずもがな)、よくよく考えればそれ、使っている間主人公0気圧なのでは? 死ぬのでは? と。


というわけで調べてみたところ、どうやら0気圧(真空中)だったとしても人間は、人体が破裂することも、体液が蒸発することも、瞬時に凍り付くわけでもないようでして、であれば人外化した耐久力を持つ主人公であれば耐えられるかな、と思った次第でした。

よかった、よかった(;´Д`A ```

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