表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/44

16 新たなステージ

お待たせしました。


 きらきらと輝くクリスタルの洞窟のなか。


 悠人はその場に座り込む。


「勝った、か……」


 手のひらを見つめる。


 ズキリ、とその右手から痛みを感じる。


 巨人(トロル)の体に埋め込んでいたからか……


 悠人は<外傷治癒(フレッシュヒール)>を発動する。

 痛みは少しづつ無くなっていった。


 <外傷治癒(フレッシュヒール)>と<巌の身体(ハードボディ)>はどっちもひとつしかストックが無い『肉体LvΩ』を使うから、同時に発動できないことが悩みである。


 ――しかし良く勝てたものだ。


 ギリギリであった。


 こんな戦いはもう二度としたくないものだ。


 そしてまた、これは嫌な想像ではあるのだが、これまでの経験から考えると、アレがたった一体しかいないというのは考えづらい。

 ゴブリンもどき、コボルトもどきなど、複数の個体がいる存在しか悠人はこの洞窟では会っていないのだから。


 何かもっと簡単に倒す方法を考えなくてはならないことは明白である。


 ――取り敢えずは最後にやった内部からの攻撃を初手にぶち込むしかないか。


 問題は、その時に使った『融解Lv8』も『燃焼Lv5』も使い捨ての消耗品だという事。

 何か代替案を考えなければならない。


 しかし、今の状態ではいくら考えてもその案は思い浮かばなかった。


 ――そろそろ休憩もいいだろう。巨人(トロル)の倒し方は歩きながら考えることにしよう。


 悠人は魔力の上流を<魔視>で確認する。


 ああ、そうだった。

 そういえば出入り口は破壊されたクリスタルで塞がっていた。

 まずはこれをどかすことから始めよう。


 道を作るのに思ったほど時間はかからなかった。


 この場所の材質はクリスタルで硬度が高かったため、上から新たな瓦礫が崩れてこなかったのが幸いだった。


 ひと一人が十分に通れるほどの隙間を作ると、悠人はその先へと進んでゆく。


 そこは相変わらずクリスタル犇めく洞窟だったが、進むにつれて上り坂になっていき、そして遂に――眩い光に包まれた。


 ――洞窟を抜け、出口に着くとそこはどこまでも広がる、茫漠たる草原だった。


「え……? ここは、外っ!?」


 悠人は目を見開いて空を見上げる。


「あ……」


 しかしそこに映るのは、想像した、いや期待した景色ではなかった。


 そこにあったのは、その姿が霞むほど遥か上空に生えそろう巨大なクリスタルの群れ。

 一体何キロメートル上にあるのだろう。


 太陽の如く輝く巨大クリスタルが、この草原にまるで外の世界のような明るさをもたらしていたのだ。


「――くそっ! 期待させやがって!!」


 悠人は怒り地面を蹴り上げる。


 もはや常人とは異なる力を手にした悠人の蹴りは、地面に生えた草々を掘り起こし、前方へ土と草を盛大に巻き上げた。


 まるでショベルカーのような蹴りに、思わず乾いた笑いを漏らす。


「ははっ……」


 悠人は、なんだか寂しそうな目で自分の体を見ていた。


 頭を左右に思い切り振る。

 そして唇をかみしめると、悠人は頭を巡らせた。


 ――今までとはまるで違う景色……、ここではどう行動するのが正しいか。


 外に出たと勘違いさせられたのは業腹だが、それは考えていても仕方がない。


 <魔視>で周囲を見渡すと、あまりにも農密度の魔力が辺りに充満している。

 それは、あそこの――クリスタルの洞窟よりの上の濃度だった。


 魔力の上流には近づいてきてはいるらしい。

 ここでも魔力流れは見て取れるから、それを辿っていくしかないのだろうが――


 問題は、ここが何も隠れる場所のない、見渡す限りの平原だという事だ。

 それはつまり、敵に発見されやすいという事。


 今までは多くとも、同時に戦う相手は三体程度だったが、ここではそれをはるかに上回る数に囲まれる危険がある。


 なにか対策が必要になる。

 それも早急に――











 ふと、顔に影が差した。


 悠人は勢いよく上を見上げる。











 ――するとそこには、異形の存在が浮遊していた。


 それは一軒家ほどの大きな鶏卵のような形をしていた。


 その色は黒色であり、外側は卵殻(らんかく)ではなく弾力のある分厚い竜鱗(りゅうりん)で覆われていた。


 頂点には五枚の蝙蝠(こうもり)のような翼が(なま)めかしく羽ばたく。


 底辺には奈落のような深い口腔(こうこう)が開かれ、その周りには牙か爪のような鋭いものが()れた光を放っていた。






 強大な気配。


 天を覆いつくすような存在感。


 台風の如き魔力がそれを中心に渦巻いているのが見えた。


 悠人は思わず、ポケットの羊皮紙を取り出す。


==========================


 魔力:31,222

 気力:7,851

 霊力:14,876


==========================


 悠人はその値を見た瞬間――


 ――一瞬の迷いもなく、逃走を選択した。


 

お読みくださりありがとうございます。


ついに新たな場所に到達しました。

ちょっとした一区切りではあるので、章分けしようか悩み中。




思いのほか時間が取れず、全話修正はできなかったので、これから少しずつ修正を加えていこうと思います。

もし、「これよくわからない」や「変な表現がある・誤字がある」などありましたら感想欄にてご報告いただけると嬉しいです。

その場合、その場所を最優先で修正します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ