10 遭遇! コボルトもどき!!
最近執筆速度が落ちてきたから毎日更新できなくなるかも……
悠人の目の前で、また一体のゴブリンもどきの頭蓋に風穴が空いた。
どちゃりと倒れるゴブリンもどきを横目に見ながら、しばし構えていた悠人だったが、近くに生き物の気配がないことが分かると体を弛緩させる。
その背後には、先ほどのも含めて三体のゴブリンもどきの死体があった。
「……ふう。三体までなら何とかなるかな」
<石の一撃>の使い勝手が予想以上にいい。
基本的に一撃必殺。
高速でまず避けられないし、近距離からならどこからでも発射できるし角度の調整も簡単だから外れることもまずない。
唯一の欠点としては、一回発動したらもう一回発動するのに三秒くらいのクールタイムがあることくらい。
まあこれはLvΩの情報体の特性なので仕方がない。
『高速直線LvΩ』、『材質:石LvΩ』は一秒かからず再使用できるのだが、『形状:ゴブリンもどきの牙LvΩ』が再使用に三秒かかるのだ。
『形状:ゴブリンもどきの牙LvΩ』が三つあれば一秒に一回使えることになるが……
あと四千個は遠いな。
悠人はゴブリンもどきの死体から情報体を抜くと、歩き始める。
探索を始めてから体感で大体三、四時間くらいか。
しかし相変わらず代り映えしない洞窟の壁面が続いている。
方向感覚はある方だと自覚しているし、一応言って距離ごとに印をつけているから同じ場所をグルグル回っているわけではないと思うのだが。
これほど大きな洞窟だし、ゴブリンもどきという大型の生物が生息しているのだから、外へ通じる道があると考える方が自然だろう。
いや、無いと困る。
だんだん、闇雲に探索してもいいことは無い気もしてきてはいるのだが、正直、打開策は全く思い浮かばない。
悠人がため息をついていると、不意に肌がざわつくような感覚を覚える。
……おいでなすったか。
この洞窟内にいるうちに、いつの間にか身についていた感覚。
こうなった時には、まず確実に近くに何らかの”存在”がいる。
おそらくゴブリンもどきだと思うのだが。
ただ、非常に数が少ないのだが、実は悠人はこの洞窟にゴブリンもどき以外の生物がいることを確認している。
あまり情報のない相手だからあまりそれには接触したくないところだ。
近づいてくる存在のおおよその方角に検討をつけると、周囲に曲がり角や分かれ道のない場所で立ち止まって身構える。
こうやって何かに遭遇しそうになったときは、悠人はまずこうした位置取りをするようにしていた。
これには相手に存在が確実にばれるし、奇襲はできず、隠れてやり過ごすこともできないという欠点もある。
しかし、それ以上に悠人は相手に接近されてしまうことを恐れていた。
隠れるというのは、即ち自分の知覚範囲が狭まることでもある。
悠人は、超接近戦で自分が上手く立ち回れる自信が無かった。
身体能力が向上したおかげで、ゴブリンもどきの攻撃を視認することは容易になったし、ある程度見切ることもできる。
だが、それに対応して体を動かせるかというのは別の話しだ。
一回だけミスをして、ゴブリンもどきの拳がとどく範囲まで接近を許してしまったことがあったのだが、まるで生きた心地がしなかった。
奴の拳を避けることはできたものの、血の気が引く思いがした。
”死”が体のすぐ隣を通り抜ける感覚が、吐き気がするほど気持ち悪い。
もともと悠人は、暴力とは無縁の男子高校生だった。
一瞬の判断を間違えれば死ぬような状況が続くことなど、慣れているはずがなかったのだ。
<石の一撃>は超近距離だろうが十分な威力を発揮するが、それよりも五メートルから十メートルほど離れた中距離の方が得意で、なおかつ安全に戦える。
故に己の長所を生かすため、見通しの良い場所で戦うという選択を悠人は選んでいた。
そして悠人がしばらく待っていると、その存在は通路の角から姿を現した。
それは成人男性ほどの背丈の人型だった。
その体は、水を搾り取られ輝く太陽の光に焼かれたかのように、干乾びてやせ細っていた。
針金のような腕は枝分かれし、左右併せて六本の腕の先には鎌の如き爪が光を反射して妖し気に揺れていた。
枯れ枝のごとき体の上には、大きな狼の頭が置かれており、そこには巨大で、弾力のある、網のように血の走った一つの眼球が埋め込まれ、それは滲み出る憎悪を確認するように嘗め回すかの如くこちらへ視線を這わせていた。
狼の頭が唸り声を上げる。
そして、火炎放射器の如く、青白い炎を前方へ吐き出した。
お読みくださりありがとうございます。
最後の方のコボルトもどき出現のシーンは、旧支配者のキャロルという曲をBGMに流したい。
旧支配者のキャロル↓
https://www.youtube.com/watch?v=QNcs25THDBk