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幕間 プロローグ3(芭風やよいの場合3)

名前しか登場しないやよいの特異能力を考えるのに丸二日かかりました……

話はできていたのに……


 あれから、三日がたった。


 あれからやよいを救出してくれたエイヴァの言っていた、基地という場所へたどり着き、その中で三日過ごしたのである。


 基地という場所は、前にテレビで見たことのある自衛隊の基地によく似ていた。

 しかし、記憶にある自衛隊基地とは所々違うところがあった。


 まず、飛行場と思われる開けた場所が無かった。

 また、車両などの類も外には一切出されていない。

 そして物々しいとまで言えるほど、大砲やミサイルの発射機と思えるような兵器類が大量に設置され、多くの兵士が警備を行っていた。


 やよいはそこについてから、まず自分の身の上を話した。

 日本という国にいたこと、そしてどこからともなく光が放たれ、気が付いたらあの場所にいたこと。


 話をしていくうちに、やよいはここが地球とは違うどこかなのだということが分かった。


 ここはティアピアと呼ばれる惑星。


 日本どころか、アメリカやロシア、中国といった国の名前はかけらもなく、大陸の形もまるで違うようだ。

 というより、大陸の形も正確には分からないらしい。


 ――惑星ティアピアの地表面。

 その半分以上が『魔物』と呼ばれる原生生物に支配されており、人類の生存圏はその惑星地表面に比べて非常に狭い。

 そのため、惑星ティアピアの形の正確な情報も、いまだ分からないままなのだ。


 ティアピア人類は宇宙(そら)への生存圏拡大の可能性を見出し、今では多数のコロニーが衛星軌道上に存在するらしいが、それほどの文明をもってしてもいまだに対処できない魔物とはいったい何なのだろう。


 やよいの予想ではここに来て最初に見た巨大なオオカミが魔物ではないかと思う。

 しかし、よく考えるとあの程度の生物では戦闘機やミサイルには敵わない気がする。


 こちらの世界では戦闘には戦車や戦闘機といった大型兵器ではなく空飛ぶ鎧のようなものを主戦力としているようだけれど、戦力として地球に劣っているとも思えない。

 何かほかに理由が……


 すると、やよいの耳に扉のスライド音が聞こえてきた。

 いまやよいのいる、基地の応接室の扉の音だ。


 やよいはそちらの方へ目を向ける。


「遅れてしまい、申し訳ありません。こちらでの生活は慣れましたか?」


 エイヴァはゆっくりと歩いてくると、やよいの正面のソファに座った。


 やよいにはエイヴァの声はまごうことなき日本語に聞こえるが、それは実は翻訳機の機能なのだという。


 全く未知の言語すら簡単に翻訳してしまうその翻訳機。

 やよいにはその仕組みなどはさっぱり分からないが、やはりその科学力、文明は地球より進んでいるのは間違いないと思った。


「はい。戸惑うことも多いですが、落ち着いてきた思います。いろいろとご手配いただき、本当にありがとうございます」


 エイヴァは小さく笑う。


「それはよかった。今回お呼びされていただいたのは、先日行った身体検査の結果などと、これからのことをお話ししたいと思いまして」


「は、はい」


 エイヴァはやよいを救ってから、やよい専属の担当なっていた。

 やよいの心身に対する配慮らしい。

 自分を救った相手ならば、精神的にも負荷がかからないだろうとのことで、やよいはその配慮がうれしかった。


「まず身体検査の結果ですが……」


 エイヴァはそう言って、持ってきていたカバンからスマートフォンくらいの銀色の道具を取り出す。


 道具は机に置かれ、そこから薄い光が放たれて空中にスクリーンが映し出された。

 地球には無い道具と技術であったが、やよいはこの三日間で見慣れてしまったため特に驚きはなく、そのスクリーンを見つめる。


「ハナカゼさんは少し疲労がたまっているだけで、他は特に異常はありませんでした。いたって健康な状態ですね。そして、身体の組成や機能も我々人類と変わらないものでした。――これが何かしら違っていれば、やよいさんの、異世界から来たというお話の証明になったのですが……」


「そう、ですか……。いえ、それでも健康だったのはうれしいです。これ以上ご迷惑をおかけするのは忍びありませんので」


 やよいが心なし低くなった声でそう告げると、エイヴァは少し眉を顰めていった。


「こちらも、懐疑的なわけではないのです。私たちがやよいさんを助けられたのも、ちょうどあの場所に非常に強度の高い空間の揺らぎを感知したから出動したわけですので……、ただ、証明としては決定力に欠けるという意見が多く……申し訳ありません」


 頭を下げるエイヴァに、やよいは慌てて首を振った。


「いえ、そんなことないです! 頭を上げて下さい! 私としても荒唐無稽なことを言っている自覚はありますので、大丈夫です」


「異世界の存在は証明がされていないだけで、可能性が高いと学会でも言われているので、決して荒唐無稽というわけではありませんが……、そう言っていただけると嬉しいです」


 エイヴァは少し眉を下げて笑った。


 そして一呼吸おいて、お話は変わりますがと前置きし、カバンから一つのものを取り出す。

 それは、一枚の羊皮紙だった。


 見た目何の変哲もない羊皮紙だが、地球現代以上に文明が進んでいるらしいティアピアには似合わないものだ。

 ――余談だが、その羊皮紙には隅の方に小さく『捨てないでね♥』と書かれている。


「いつの間にかハナカゼさんの服のポケットに入っていたというこの羊皮紙ですが……、一度使ってみていただけますか?」


 気が付いたらいつの間にかやよいの服の胸ポケットに入っていた羊皮紙。

 それには特殊な力が宿っていた。


 エイヴァの真剣な声に、やよいは答えた。


 やよいが羊皮紙を、()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 文字を描き出すように紅く燃え上がる。


 そして全ての文字を描き出すと、熱は消えて黒い文字が残った。


==========================


 魔力:13


 気力:6


 霊力:3


 特異能力

  減加の理眼


==========================


 羊皮紙に描き出された文字をジッと見つめたエイヴァは呟いた。


「やはり……、これは、この羊皮紙の力はハナカゼさん、あなたにしか使えないようです」


「そうなのですか?」


「はい。これを軍の研究員が使おうとしましたが、全く反応しなかったようです。また、これには多くの霊力を帯びているのですが、ハナカゼさんから離すと霊力が失われていくのが分かりました」


 やよいが持っていないと、この羊皮紙は力を失うかもしれない。

 だから、これはハナカゼさんが持っておいてください。

 エイヴァはそう伝えた。

 それに、これは元からハナカゼさんのものですしね、と続ける。


「分かりました。……それとひとつお聞きしたいのですが、霊力とは言ったどういうものなのでしょうか。あと魔力と気力というものも聞き覚えが無くて」


「ああ、そうですね。ハナカゼさんは知りませんか」


 エイヴァはそう言って、説明を始めた。


 魔力、気力、霊力はエネルギーの一種。


 魔力。

 この世界の遍く存在が持つエネルギーであり、世界全体でもっとも総量が多い。

 物質の内部、空気中、真空問わずあらゆる場所に存在している。

 自然科学と対をなす、魔法を顕現させるのに必要なエネルギーである。


 気力。

 この世界の遍く生命体とそれに類するものが持つエネルギー。

 生命体を強化する力があり、耐久力や膂力、生命力などが上昇する。


 霊力。

 まだあまり解明されていない力。

 分かっているのは、魂を持つ生き物にしか宿っていないこと。

 気力との違いは、気力は死んでも宿り続けることに比べ、霊力は死んだら完全になくなることだ。

 魔力と気力に密接なかかわりがあるらしい。


 羊皮紙に描かれる、魔力、気力、霊力の欄は、それぞれやよいの保有量を現しているようだ。


 特に霊力はまだまだ研究が進んでおらず、今の技術ではその保有量を確かめるすべがない為、研究に役立てたいらしい。

 しかし、羊皮紙はやよいが持っていないとその力を失う可能性があるため、やよいが持つことになる。


 やよいは、しばらくの期間基地で様子を見た後、とある研究所に霊力の研究協力者としていくことをエイヴァから頼まれ、それをすぐに了承した。


 今までやよいはこちらでお世話になりっぱなしだった。

 それを少しでも恩返しできるならと考えたのだ。


 エイヴァは、元の世界に帰る方法を探すことも約束してくれる。

 心強い限りだった。


 ――これからどうなるのだろうか。


 しかしふと、やよいの心に強い不安がよぎる。


 ただ、待っていてもなにも始まらないのも事実なのだ。

 まずはやれることをやれるだけやっていこうと、やよいは心に決めるのだった。


お読みくださりありがとうございます。


これにて幕間終了です。

次回からは主人公視点へ戻ります。

作者ができる限り早くやよい視点を終わらせたかったため、

最後の締めが急すぎて違和感があるかもしれません。

ごめんなさい。


余裕ができたときに直そうと持ってます……(次話を書きながら)

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