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第八話 商人組合からの依頼 秋の五目猟 その5


「そういえば、シドー君が商人組合に口利きしてくれたのだったね。ありがとう。おかげでこうして前よりいい暮らしができるようになったよ」


「それは何よりです」


 さっきから俺とニーカの父親との会話をじっとニーカが見ている。さらにニーカの隣の彼女の見た目が若い母親は、俺を値踏みしているようだった。


「話は変わりますが、被害は蜜柑だけですか?」


「隣の野菜も狸や猪にやられてるんだ。熊も見たと末の娘が言っていたよ」


 それは丁度いい。俺の猟銃は鳥撃ちはできない。だが、四足なら得意だ。明日は班を二つに分けて猟をしよう。


「猪や熊は俺がやりましょう」


「そうか。それはありがたい」


 ニーカの父親の顔が明るくなる。すると、ニーカの母親が麦酒を俺と夫の元へ運んで来た。彼女は「さぁ、どうぞ。たくさん飲んで、たくさん食べて」と満面の笑みだ。ニーカの母親と言うだけで身構えるのに、何を考えているのか分からないのが恐ろしい。


 彼女に促されるまま、食べて飲んでその日の夕食は終わり、俺は割り当てられた部屋で休む。ふとモイモイの装備に銃袋と弾差しがないことに気が付いた。


 モイモイは無造作に実包を入れている。今日みたいにモタモタと装填していたのも、それが理由だろう。それなら銃猟仲間になったモイモイに餞別をおくるのもいい。


 モイモイがいる部屋をノックする。


「モイモイ、ちょっと来い」


「シドーさんどうしたんです?」


 モイモイが不思議そうに俺を見る。


「いい物をあげようと思ってな」


 彼女を部屋に入れるや、実包を抜いた弾差しを見せた。元々この世界に来る時に、俺は一四発入る弾差しを二つ腰のベルトに付けていた。俺自身、ライフルを持って一年半ぐらいなので、実包を多めに持たないと不安だったからだ。それもこの世界に来てからバカスカ撃っている内に、自信は付いた。


 今の俺には、一四発あればいい。弾差し一つ上げたって問題はないのだ。


「えっと、シドーさん。これは?」


「弾差し。いちいちポーチから取り出すの大変だろ? 管理だって面倒だ。丁度その魔石実包も差せそうだし、便利だからやるよ」


「……えっ!? シドーさん、熱でもあるのですか?!」


「……何でお前、めちゃくちゃ驚いてんの?」


 結構ショックなんだが?


「シドーさんが、私に優しくすることってあんまりないので」


 ちくしょう、俺が悪いみたいじゃねえか。


「まあいい。ほらベルトに弾差しつけて見ろよ」


「こう、ですかね?」


 モイモイが無色の魔石実包を差した弾差しをベルトに取り付ける。


「後は銃袋を作ってやる」


「ええ?! 明日は槍でも降るんですか?」


「お前なぁ……」


 バックパックから取り出した大きく長い緑の布と裁縫箱を取り出し、布を二つ折りにして片方を縫う。魔銃のスリングを出し、布の両端を縫った。最後に閉じ口となる箇所の布の端に穴を開けて紐を通す。紐を蝶々結びにして完成。


 感心したように見ていたモイモイの口から、ポロっと疑問が飛んで来た。


「思ったんですけど、シドーさんのその何でもできるところってどこから来てるんです?」


「俺の祖父が『何でも自分でやるようにしろ』って言うからその通りにしたまで。まあ、裁縫は自衛隊でも必要だったからな」


「実はすごかったんですねぇ」


「実はって何だ。実はって」


 全く酷い奴だ。


 それからモイモイには猟銃の扱い方を教える。これで明日は、俺がモイモイの傍に付いてなくてもいいだろう。


 その次の日。俺たちは猟隊を二つに分けた。俺とラハヤとキセーラは四足を狩りに。モイモイとニーカ、イルメリとウルメリはヒヨドリを狩りに向かわせた。


 無残にも喰い散らかせた野菜たち。そこらで野菜を咥えているのは、異世界の顎髭が生えた狸たちだ。狸は夜行性と一般的に言われるが、この世界では昼も夜も関係ないらしい。


「お兄さん、獲るよ」


「ああ、頼む」


 ラハヤがクロスボウを構え、逃げる狸の首後ろを正確に射抜く。さらに狸の頸動脈をナイフで切って放血も行う。


 ラハヤの狩りは、いつ見ても惚れ惚れするほどしっかりしている。モイモイもいつかは彼女のようになる。なんて親心みたいな気持ちになって来た。


「シドー、あっちに熊の糞があった。まだ新しいから近くにいるぞ」


「チェッカードさんの農園ボロボロだな」


「まあ、後回しにされているからだろう」


「お兄さん、三匹目獲ったよ」


 既に三匹目の狸を狩ったラハヤが、獲った狸の尻尾を掴んで俺に見せる。どれも首か心臓を射抜いてあり、実に見事な腕前だ。


「シドー、ラハヤも場所を移動しよう」


「ああ、行こう」


 農園を歩いて行くと、畑を掘り返す熊がいた。頭に二本の触覚のような長い毛を生やしたこの世界の熊だ。掘り返しているのは、きっと食べ残しを埋めていたのだろう。


 俺は弾差しから一発取り出し、ボルトを引いてチャンバーを開けた。実包を一発装填し、ボルトを操作しガチャッと下に倒す。


 シグリッド製のスコープを覗き、こちらを観察している熊を狙う。


「グオオゥ!!」


 立ち上がって威嚇した熊の首に狙いを修正し発砲した。


 ズバァーン!!


 前のめりに倒れて動かなくなった熊に近づき、山刀で頸動脈を斬る。


「シドー、いつもながら見事だな」


「うん。じゃあ私が狼煙矢を上げて商人組合を呼ぶね」


「ああ、頼む」


 ラハヤが狼煙矢を放ち合図を送る。


 俺もそれを見上げて眺めていると、ふと遠目に見える商人組合の魔導飛行艇が見えた。何かに群がれ煙を上げているようだ。それどころか、段々と高度を下げて農場に不時着しようとしているようにも見える。


「なあ、キセーラも見えるか?」


「これは不味いな。ワイバーンに追われているようだ。……いや、それだけじゃない」


 雲間から魔導飛行艇目掛けて急降下する鉄色のドラゴンが見えた。


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