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第六話 商人組合からの依頼 秋の五目猟 その3


 モイモイがまごまごしながらも、ポーチから無色の魔石実包を取り出す。上下二連の魔銃に装填し、自身の魔力を込めた。無色の魔石が、淡く赤く光り輝く。


 無色の魔石は、使用者の魔力を込めて使う魔石のようだ。俺などは魔力なんてものはない。この世界の者しか使えない銃器ということなのだろう。


「まだ指は掛けるなよ。ヒヨドリなんてのは、大して警戒心が強くない。待ってれば向こうからやって来る。指を掛けるのはそれからだ」


「そうなのですね」


「ほら、さえずってるのが聞こえるだろ? 右斜め前、二時の方向の蜜柑の枝に一羽。撃ったらクーに取りに行かせればいい」


「むぅ、どこですか?」


 モイモイに分かりやすいように指を指す。


 魔銃の照星を二〇メートル先のヒヨドリに合わせたモイモイが、俺の構えを真似したような構えを見せた。だが、若干足の開きが狭い。立射は肩幅ほどに足を開くのが正解。なので、俺は屈んでモイモイの足を掴んで調整する。


「……教育にかこつけてセクハラですか?」


「ちげえよ!!」


 ジト目で俺を見るモイモイに抗議したが、鼻で笑われた。


 気を取り直して、もう一度獲物がいる方向を指で示す。未だ、この世界のヒヨドリは枝の上でさえずっている。警戒心が薄いのは、近くに餌となる蜜柑が多いせいだ。


「ほら、照星をもう一度合わせて撃ってみろ」


「分かりました」


 パァン!!


 空気が破裂する音が鳴り、淡く赤い魔石製の弾丸が飛翔する。弾丸がヒヨドリの胴体に着弾し、電池が切れたようにポトリと落ちた。すぐさま魔狼のクーが拾いに駆ける。そして、獲ったヒヨドリをモイモイが紐で腰にぶら下げた。


「上出来だな。後は管理を徹底して、獲った奴は自分で捌けるようになれば、一先ずヒヨコは卒業だぞ」


「初弾を当てるとは、流石は天才の私です。これはもう、あっという間に階級も上がりますね」


 渾身のドヤ顔を披露して見せたモイモイ。


「天才なら俺の教育はもう必要ねえな?」


「あ、嘘です嘘です。もう少し、もう少しだけ一緒にお願いします!」


 俺に(すが)り付くモイモイなのだが、実包を装填した状態で(すが)り付かれるのは危な過ぎて冷や汗が噴き出る。


「実包抜け、馬鹿」


「え、実包? ああ、なるほど。撃たない時は抜かないと駄目なのでしたね」


 モイモイがもたもたと脱包していると、奥の方から獲ったヒヨドリを腰にぶら下げたイルメリとウルメリがスキップしながら来た。沢山獲れて満面の笑みだ。


 得物はスリングショットか。俺の世界じゃ物好きの貧乏人しかやらない方法だが、二人を見ているとそうでもないらしい。


「沢山獲れたのだよ!」


「……自分たちが獲ったものは、持ち帰ってもいいですよね?」


 ウルメリが俺に詰め寄る。いつも大人し気だが、食べ物のことになると積極的になるらしい。イルメリも獲ったヒヨドリを前に、涎を垂らしている。


「お兄さん、こっちも五羽ほど獲れたし今日は終わる? もう夕方が近いし」


「私が一羽獲った間に、もう五羽も獲ったのですか!?」


「キセーラさんなんて八羽も獲ってるよ。ニーカさんも四羽ぐらい」


 モイモイがショックを受けたようにうなだれた。初めて一羽獲れただけでも上出来なのだが、調子に乗らさないためにもフォローはしないでおこう。


「シドー、家に上がってもいいそうだ。ほら、あそこでニーカが手を振ってる」


 ニーカの隣にはチェッカード家の面々がいた。母らしき人物の隣にいる人間は父親だろう。ニーカを小さくしたような兎獣人の九人の女の子たちは妹たちに違いない。


「明日も狩って、後は他の猟隊に任せるか」


「うん。ほら、お兄さん行こう」


 ラハヤに手を引かれ、チェッカード家の屋敷に向かう。


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