第三七話 作戦会議とボッチのエルフ
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狩猟小屋に戻った俺たちを、エルフの職員たちが出迎えてくれた。早速、エルフの職員たちを交えての作戦会議が始まる。彼らも考えていることは同じらしい。
彼らは興奮して上気した様子の者もいれば、激怒した様子の者もいる。自分たちが管理する森が魔獣によって荒らされたのが、彼らの逆鱗に触れたのだろう。
「カムゥロとやら、この猟場の付近でグリフォンが出たのは知っているか?」
「あ、鹿室です。その魔獣に俺とユーマラさんも襲われて、仲間と話して明日討伐するつもりです。それで今からどうやるか煮詰めるつもりでして」
エルフの職員たちの顔が暗くなる。明らかに焦っている者もいた。
「……既に人が襲われたのか」
「アルブ戦士団の到着まで時間が掛かる。被害が出ないうちに倒した方がいいだろう。だが、あんたらだけで倒せるのか?」
「アルブ戦士団?」
「アルブ戦士団というのは、対魔獣に特化したエルフの部隊だ。彼らは緑髪のウッドエルフで構成されている。そして、エルフの中で一番戦闘に秀でるが転移魔法が不得意だ」
俺の問いにキセーラが答え、エルフの職員がまた口を開く。
「相手はグリフォン。矢は効かない。魔法も逸らされて逆に森が荒れるだけだ」
「モイモイの火焔魔法もダメなのか?」
「シドーさん、森を燃やしてもいいのなら、殺れますけど」
モイモイが返した途端、エルフの職員たちの眼光が鋭くなった。森を必要以上に荒らすのは彼らにとっての禁忌に当たるようだ。
「お兄さんの猟銃ならどう?」
「付呪すれば仕留められるだろうけど……。やるにしても、どうやって地上に降ろすかだな……」
鹿を仕留めて撒餌にするか? だが、鹿を仕留めること自体が確実じゃない。撒餌を用意する次点でグダったら目も当てられない。生肉を使うにしても、違うものが寄って来る可能性はもちろんある。
「飛行するのは無理なのか? 前にワイバーンを落としただろう」
「あの時は下が住宅地じゃなかったし、今回の場合は巨大な奴が相手だ。落下して被害が出たらどうする」
「はぁ~い!! いいこと思いつきました~!!」
ユーマラがぴょんぴょんと跳ねながら手を挙げる。
「馬を使いましょう~! 大好物ですし~!」
「あ、あの! 馬って僕のハマノパしかいなんですけど!」
ボブヘアーで小さいウッドエルフ職員が抗議する。体が薄いが女性だろうか?
それにしたって、名前があるということはペットなんじゃなかろうか? 酷すぎる作戦だ。
「あの、ユーマラさん、人のペットを生贄にするのは後味が悪いというか……」
「決まりだな。ハマノパ二号は国に申請して買ってもらえ」
「ああ、こいつは罠猟が得意な職員だ。きっと上手くやってくれる」
キセーラが腕組みをして頷き、エルフの職員も次々に頷いた。今にも泣きそうな彼女を除いて。……ああ、可哀想に。
「これはお兄さんが一発で仕留めないとね」
「これでシドーさんが外したら、彼女に一生恨まれますね」
「……ちくしょう、無駄に緊張してきた。なんだってこんな作戦になっちまうんだ」
作戦会議は終わったが、生贄の飼い主である彼女は肩を落としながらその場から去って行った。哀愁漂う背中で、見ていると胸が苦しい。
自然と彼女の後を追う。小さい馬小屋で、彼女は小柄で華奢な栗毛の馬を撫でていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「……僕、友達がいなくて、最初に出来た友達が母が買ってくれたハマノパだったんです」
今の彼女のカミングアウトで俺の精神力はゴリっと削れた。
「もう一度皆で考え直すのも……」
「いいんです。元々、僕は罠猟が得意で必殺仕掛人だなんて仲間内から言われて、きっとそれも理由に入ってるのかもですし」
「いや、でも、家族同然の馬をやるのは……」
「うぁああ~!! ハマノパぁ~!!」
んんん~~!! やり辛い!!
馬首に抱き付き号泣する彼女に、俺の精神力はだだ下がりだ。
「こうなったら、僕も一緒に生贄になる!!」
「あの、ちょっと!?」
俺の制止を聞かず、彼女は走り去った。
「鴨葱じゃねえか……。どうすんだよ……」
こうなったら、グリフォンが馬を襲う直前で仕留めるしかなさそうだ。散弾で飛び立つ鴨を撃つのとは訳が違うのに、果たして俺に出来るのか。嫌な予感しかしない。




