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第三六話 合流


 あのグリフォンは巨大だった。


 尾の先までを含む全長は、はっきりとは分からないが一〇メートル近い。体高も三メートルはある。翼を広げれば、その幅は一〇メートルを軽く超えている。


 しかも、矢を寄せ付けない魔法を使っていた。おそらくあの魔獣は、弾丸をも逸らすことが出来るはずだ。対策するなら付呪(エンチャント)した実包で初速を上げるぐらいだろう。だが、ラハヤたちはここにいない。


「何をしているんですかぁ~?」


「今の俺に出来ることだよ」


 バックパックから洗い矢セットと、ソルベント、ガンオイル、綿パッチを取り出す。


 ボルトを外すと砂が付着していた。これを布きれで取り除く。フロアプレートラッチを押し、フロアプレートを外す。弾倉内部に砂はなかった。


 フロアプレートを元に戻し、機関部の後ろからロッドガイドを挿入。ロッドの先端に取り付けたブロンズブラシを、ソルベントに漬ける。ロッドを入れて銃身内部を往復させ、清掃する。

 

 ロッドの先端にジャグを取り付け、綿パッチを通して溶剤を拭き取る。

 

 チャンバーブラシで薬室内を磨き、仕上げにガンオイルに浸した綿パッチを銃身内部に通してサビを防ぐ。ボルトを取り付け、これで清掃は終わった。


 ちなみに清掃方法は十人十色の人それぞれで、猟師が違えば細かい所が違ってくる。マカロニみたいなフェルトを使う人もいた。


「終わったんですかぁ~?」


「おう、終わった。それであれだ、グリフォンについて聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


「ん~、何でしょうね~?」


「前からいるのか? それとも最近現れたのか?」


「つい最近、鳴き声が聞こえるようになったそうですよ~?」


「被害は? 人的被害とか」


「家畜と森が荒らされるぐらいで~」


「今はまだってことだろ?」


「それはもちろんです~」


 なら、なるべく早期に巣をつくる前に仕留めた方が良い、ということだ。魔食会の魔獣牧場から逃げた個体なら、俺も他人事ではない。


 それから昼頃のこと。落葉を蹴飛ばす音がして、俺は洞穴の外に出る。丁度目の前にクーが舌を出して立っていた。


「シドーさん!」


「案外早かったな。おかげで助かった」


「クーだけが戻って来て、びっくりしましたよ」


「他には来てるのか? ラハヤさんとかキセーラとか」


「来てますよ、二人とも」


 モイモイが振り返る。その視線の先には、ラハヤとキセーラが歩いてこちらに向かっていた。


「お兄さん、大丈夫?」


「見ての通り俺は無事。けど軽症者が一人いる」


「ユーマラさん?」


「ああ、そうだ」


「何!? ユーマライヤもいるのか?」


「キセーラさ~ん!!」


 ユーマラがキセーラに抱き付いた。心底嫌そうな表情を見せるキセーラ。それをおかまいなしに、ユーマラは頬ずりをする。それはまるで、恍惚な表情で嫌がる俺に抱き付くキセーラを、第三者視点で見ているようだった。


「こいつが怪我をしているということは、魔獣に襲われたのか?」


「グリフォンとかいう奴で、勝負より人命救助を優先してこうなった」


「……そうか。シドーらしいが、そうか、私はもう隣に居られないのだな」


「いや、待て待て。彼女とは話し合って、勝負はなかったことにしてくれた。だから、問題ない」


「本当か!?」


 キセーラの顔が、パッと明るくなった。


「後は二人で話し合ってくれよ。それより、モイモイは怪我はないのか?」


「ないですよ? まあ、強いて言うなら、昨日の夕方の入浴時にひっくり返ったぐらいです。クーが受けた傷の痛みが返って来たので」


「モイモイさんがお風呂の中で急にひっくり返って、そのままブクブクーってね」


 ラハヤが笑う。


「もー、笑わないで下さいよ! 昨日はびっくりしたんですから!」


「そりゃ、お互い災難だったな」


「これからどうするんです? 討伐ですか? グリフォンは難敵ですよ?」


「そうは言っても討伐するしかない。ラハヤさんだって、そのつもりだろ?」


「うん。そのつもり」


 ラハヤの目はやる気だ。モイモイも息を吐いてから強く頷いた。


「仕方ないですね。やりましょう!」


「そうと決まれば、狩猟小屋に戻って作戦会議だ。さあ、戻ろう」


 俺たちは一旦狩猟小屋に帰還することにした。


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