第三二話 エルフの山で忍び猟 その1
取り急ぎ投稿。次回はなるべく早く投稿したい。
「神聖処女隊の仕事はどうしたんだ? 何故ここにいる?」
「それはキセーラさんを、連れ戻しに来たからですよぉ~」
キセーラが黙り込み、何か言い訳を探しているようだ。
「シドーさん、シドーさん」
「何だ?」
モイモイが俺を呼び、ラハヤが手招きしている。傍に行くとラハヤが小声で話し始めた。
「ねえ、お兄さん。キセーラさんが居なくなったら、首都に行けなくなっちゃうよ?」
「え? まじかよ」
「それにハイエルフの許可がなければ、首都の図書館に入れません。宿屋だって素直に泊めてはくれなくなりますよ。エルフは基本排他的なんですから」
これは困った。ユーマラには何とかしてお引き取り願うしかない。
「ユーマラさんだっけ? すまんが、今キセーラに抜けてもらうのは困る。せめて――」
「シドー!!」
「おわっ!? 抱き付くんじゃねえよ!!」
力づくで引き剥がそうとするが、磁石のようにくっついたキセーラが離れない。すると。ユーマラの方から『ぶちっ』と血管が切れる音がした。
「やはり貴方がキセーラさんを……」
目が据わり、どす黒いオーラを発しているように見える。
「いや、待て落ち着け! 話せば分かる!」
「そうだ話せば分かる!! ユーマライヤ、良く聞け。私はもうあの場所には戻れないんだ。私は既に神聖処女隊の入隊規定を満たしていない」
ユーマラの目の色が変わった。驚きか、憎悪か、ヤバい気がするのだが……
「キセーラさん、それはもしかしてぇ……」
「そうだ。私は既に非しょ……もご!?」
「ちょ、ちょっと黙ろうか? お前が喋ると碌なことにならん」
慌ててキセーラの口を塞ぐ。ちょっと恍惚な表情になりつつあるこいつを、誰か殴ってくれ。こいつはこの状況を楽しんでやがる。
「え、シドーさんとキセーラがそんな仲に……!?」
「そうなの?」
「何で二人とも信じてんだよ!?」
瞬間、俺のこめかみを光剣が掠めた。思わず、キセーラを離す。
「落ち着け! お前はシドーを誤解している」
「何を誤解しているって言うんですかぁ~?」
「シドーは、お前が思うほど悪い奴ではない。凡百の男よりも勇敢で、狩りの腕もいいし、料理も出来る。お前よりも余程優秀だ。元の世界でも人のために身を粉にして働き、この世界でもそれは変わっていない。我々と似てるだろう?」
「ユニコーンの管理をしている私たちと似ている? ですかぁ~?」
「そうだ。我々の存在は、元を正せばユニコーンによる被害を防ぐための人柱。シドーはそれを世界規模で考えている。ならば、私が惚れるのも無理はない」
いや、考えてねえよ?
キセーラが尤もらしい詭弁を並べ立て、ユーマラの俺に対する視線が少しだけ柔らかくなった。
「それは魔食会による魔獣騒ぎ、ですかぁ?」
「あ、ああ。この国の女王陛下にも、そのことについて話さねばならん」
キセーラが嘘をポンポンつく。俺たちに、そんな予定はどこにもない。調べものに来ただけだ。この国の首都には、でかい図書館があるらしいからな。
「やるべきことを終えたら、キセーラさんは戻ると思っていいのですかねぇ~?」
「あ、うん。そうだな……。シドーの呪いとラハヤの呪いを解き、魔食会が解き放った魔獣を討伐も目標に入れておこう、かな? うん」
「勝手に目標を増やすんじゃねえ」
「それならぁ、こうしましょう~」
ユーマラが条件を提示した。俺がどこまで使える奴か試すそうだ。
その条件は『忍び猟で牡鹿を狩り、より大きな獲物を収穫した方が勝ち。仕留める数は三頭のみ、俺が負ければキセーラを連れて帰る。その場合、代わりのハイエルフを見つけて渡す』であった。
勝っても負けても、俺的には痛くも痒くもない気がするが、キセーラが死にそうな顔をしていたので受けて立った。
そして、翌日の早朝。俺は山へ入る。グループ猟ではないので、ラハヤたちは狩猟小屋でお留守番だ。現在、俺の横にいるのは魔狼のクーだけである。
不慣れな山の中、こいつだけが頼りだった。




