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第二八話 夏栄祭 射撃競技会 その3

射撃競技のルール

一六秒台 六点  正確さの最高点は五、五、五の一五点

一五秒台 七点  全合計最低点は六点+一、一、一の三点で九点

一四秒台 八点  全合計最高点は一五点+五、五、五の三〇点

一三秒台 九点  一六秒以上は失格

一二秒台 十点  同秒台同点数の場合はコンマ以下参考で速い者が勝ち。

一一秒台 一一点 

一〇秒台 一二点 

九秒台  一三点

八秒台  一四点

七秒台以下 一五点


 二巡目、三巡目が終わり、上位成績二〇名が決まった。


 ここまでの競技の平均タイムは一二秒三六。平均精度点数は三、三、二となっている。


 ラハヤとキセーラ、シグリッドは上位成績二〇名の中にいた。この三人はタイムを二巡目から順調に縮め、成績は殆ど横ばいだ。


 今は昼休憩の時間で、俺とモイモイも休憩中である。


「シドーさん、これが点数表です」


 モイモイが俺に競技の点数表を渡してくれた。


 ラハヤの最高成績は九秒と四八。点数は四、四、五。

 最高タイムの点と精度点の合計点は二六点。


 シグリッドの最高成績は九秒と五八。点数は五、四、五。

 最高タイムの点と精度点の合計点は二七点。


 キセーラの最高成績は九秒と四五。点数は五、五、五。

 最高タイムの点と精度点の合計点は二八点。


 順当に行けばキセーラが一位を取るだろう。


「シドーさんがもし猟銃担いで参加したら、成績はどれぐらいになると思いますか?」


 モイモイが俺が見ている点数表を覗き込みながら、面白い質問をした。


「そうだなぁ、俺は五〇メートル走は七秒切るけど、そこから呼吸整えて伏射、膝射、立射を続けてやるっていうと十秒切るか切らないかだな。この競技は簡単そうに見えて、難しいことをやらされてると思うよ」


 三人の中ではラハヤが一番成績が悪い。これは疾風魔法で加速しても、狙いを付ける時間が人より遅いからなのだろう。上位に食い込めたのは魔法のお蔭なのだ。


「あ、氷菓子売りが来ました。って、またミュラッカさんですね」


 今度のミュラッカは、氷菓子売りをやっているようだ。売っているのは、木製カップに入ったシャーベットのような冷菓だった。


「モイモイ食べるか?」


「シドーさんにしては、珍しく女心が分かってますね」


「生意気言うなら買わんぞ」


「あ、すみません、ナマ言いました」


 ミュラッカからシャーベットを買ってモイモイに渡す。


 氷を砕いたままのシャーベットだが、蜂蜜とジャムがカップの底にある。一緒に食べると甘くて美味しく涼しい。


「シドーさん、シドーさん」


「どうした?」


「ニーカがあそこに居ました。何やってるんでしょうね? 賭け事?」


 モイモイが指さす方向に視線を向けると、ニーカが券を大量に握りしめている。その表情は鬼気迫るものがあった。


「おーい、チェッカードさーん!!」


 呼ぶ声に反応したニーカがこちらに来る。


「ああ、カムロ様! 何でしょう、まさか私が居なくて寂しくなったとか」


「違う。まあ、隣が最初からいなかったから座ってくれ」


「ニーカが手に持っている券は何なのですか?」


「ああ、これは射撃競技の賭博券ですよ。キセーラさんが一.二倍、ラハヤさんが二倍、シグリッドさんが一.五倍なんです」


「んで、誰に賭けたんだ?」


「それはもちろん、ハイエルフのキセーラさんですよ。種族が優秀なので一番倍率が低いですが、私は全財産をぶっぱしました! まあ、今までの成績を見たら正解だったかなと思ってます! ふふふ、お金が一.二倍……!!」


 そう言って幸せそうに笑んで見せたニーカは、三桁枚近くの賭博券を握りしめる。


「シドーさんは誰が勝つと思いますか?」


「分からん」


「えー、カムロ様、何言ってるんですか。キセーラさんが勝つに決まってます」


 俺はそうは思わない。勝負事は最後まで分からないからだ。野球であれ、競馬であれ、今回の射撃競技であっても、それは変わらない。


 席で軽く昼飯を食べる。丁度食べ終わった頃に再開のファンファーレが鳴った。


『さあ、射撃競技会を再開します!!』


 シグリッドが翼を広げる。


 合図が鳴り、シグリッドは高くジャンプすると低空を滑空した。


 五〇メートル進み、そのまま伏射。矢はど真ん中の五点。


 続いて膝射。これも五点。


 立射は惜しくも四点だった。

 

 結果は八秒五三。合計点数は二八点。


『おおーー!! これは凄いぞ!! 本日シグリッドの最高点!!』


 会場は歓喜に沸いた。彼女の最高点だったからだ。


「鳥人族の身体能力やべえな」


「そうですね。人間と比べると、やはり根本的に違いますから」


「それでもキセーラさんがやってくれると信じます!」


 ニーカが賭博券を握りしめる。


 続いてキセーラの番となった。


 キセーラが深呼吸をする。


 合図が鳴った。


 まさかの疾風魔法だった。その魔法の突風によってキセーラは加速する。


「ハイエルフが疾風魔法を使えない訳はないですからね」


 キセーラが伏射する。矢はど真ん中の五点。


 続いて膝射。これも五点。


 立射も五点だった。


 結果は八秒五八。合計点数は二九点。


『彼女も自己最高点を塗り替えたぁぁ!!! やはりハイエルフが勝ってしまうのか!!??』


「「「「おおおおおお!!!!」」」」


 観客総立ちでキセーラを褒め称える。


「ほらどうですか! 勝つのはキセーラさんなんですよ!」


 ニーカも立って熱弁する。


 次はラハヤの番だ。こんなアウェーな空気を醸し出されたら、彼女の緊張感は最高潮に達しているだろう。何だか周りの観客に対して腹が立った。


「ラハヤぁぁぁ!!! お前なら出来る!!!」


 気が付いたら立ってラハヤを、俺は応援していた。彼女は不安で不安で、夜眠れもしなかったのだ。それを考えたら居ても立ってもいられなかった。


 大画面に映し出されたラハヤが、俺がいる方向を向く。顔は紅潮し、目は決意に満ちていた。今のラハヤならやれるはずだ。


 合図が鳴った。


 ラハヤ得意の疾風の魔法で一気に五〇メートル進み、素早く伏射する。

 

 矢はど真ん中の五点。


 続いて膝射。矢はど真ん中の五点だ。


 最後に立射。矢は真ん中の四点だ。


 結果は八秒五九。合計点数は二八点。本日ラハヤの最高点だ。


『またもやシグリッド選手と同点!!! 人間という種族でこれは凄いぞ!!!』


 また奇しくもシグリッドと同点となった。だが、タイムは九秒を切っている。この記録を他の選手が超えるのは難しいだろう。


 その後の選手はラハヤたち以下の成績だった。


 小休憩の後、いよいよ上位三名が競い合う。


「結局シドーさんはラハヤを応援するのですね」


「悪いかよ? 必死に頑張られたら思わず応援だってするさ」


「キセーラ頑張れぇ~。キセーラぁ~」


 ニーカが雨乞いのように祈っている。必死過ぎて引く。


『さあ、頂点を目指す三人だ!!!』


 ラハヤ、キセーラ、シグリッドの三人が観客たちの拍手で迎えられる。


 最初はキセーラだ。彼女の前に、実況の女性が向かい何やら話している。


『キセーラさんは今回の競技で優勝したら想いを伝える予定であるそうです!!!』


「うっわ。ド淫乱らしい回答ですね」


「あいつは、ほんっと馬鹿だ」


 俺は溜息をついた。キセーラが余計なことをしなければ、彼女に対して悪い感情なんて湧かないのだから、余計なことをするなと言いたい。


『次のラハヤは、優勝を目指して頑張るそうです!!!』


 ラハヤの回答はごく普通の回答だった。酒が絡まなければ常識人な彼女らしい。


『最後のシグリッドは……。え? あ、はい、えっと……。ヴァリ工房の狙撃眼鏡はエルフの目に劣らない性能です!!! その精度は意中の男性を落とすほど!!! とのことでした!!!』


 シグリッドの宣伝が女性の実況を介して行われた。


 全く上手い宣伝だ。

 

 そして、ついに決勝である。最初はキセーラだった。


 大画面に映し出されたキセーラは、何かを呟き魔法陣を展開していた。


「あの、魔法陣の形は、まさか……」


「知っているのかモイモイ?」


「エルフ系にしか出来ない転移魔法です!!」


 モイモイが大声を出すのと同時に、大画面に映し出されたキセーラが消えた。


 ほんの一瞬にしてキセーラが、五〇メートルを転移魔法で一秒と掛からず飛んで伏射する。


 狙う時間は掛かったが、点数はど真ん中の五点。


 続いて膝射。点数はど真ん中の五点。


 最後に立射。ここに来てキセーラの様子がおかしくなった。よろよろと立ち上がった彼女は千鳥足で体勢が整わない。


「おい、どうしたんだ?」


「あれは転移酔いです!!」


「いやぁぁぁぁあああああああああ!!!」


 ニーカが叫ぶ。絶叫だ。


 立射したキセーラの矢は、的の外側に刺さり一点だった。


 タイムは十秒三八。点数は五、五、一。合計点数は二三点。


 観客たちは思わぬハイエルフの結果に絶句した。ニーカは白目を剥き、真っ白に燃え尽きている。


『……つ、続いてはラハヤです!!!』


 ラハヤが合図で走る。疾風魔法は魔力切れで使えないのだろう。それでも全力を尽くすのだという意思を瞳に宿しているようだ。


 ラハヤが伏射する。五点。


 続いて膝射。四点。


 最後に立射。四点。


 タイムは十秒〇五。点数は五、四、四。合計点数は二五。


 ラハヤが悔しそうに下唇を噛んでいる。あれが今の彼女にとって精一杯なのだ。


『これで笑っても泣いても最後です!!! さあ、ヴァリ工房の美しき店主シグリッドの入場です!!!』


 シグリッドが大手を振って入場する。


 彼女が位置に着き、合図が鳴らされた。


 大きく踏み出し、ジャンプするかに思えた――シグリッドが足をもつれさせて転んだ。


 だが、受け身を取る形で仰向けに飛んで滑空し、五〇メートル先で再度回転。伏射する。


 放たれた矢が的の中央を貫く。点数は五点。


 続いて膝射。点数は五点。


 最後に立射。点数は五点だった。


 タイムは十三秒〇二。点数は五、五、五。合計点数は二四。


『これは惜しい!!! こけなければ優勝はシグリッドであったでしょう!!! ですが、彼女はヴァリ工房の狙撃眼鏡の性能を如何なく発揮しました!!!』


 これにて順位は決まった。


 一位はラハヤの二五点。


 二位はシグリッドの二四点。


 三位はキセーラの二三点。


 観客が総立ちで彼女たちの健闘を拍手する。


 女性部門の射撃競技会は、ラハヤの優勝という形で終わった。賞金も銀貨二〇〇枚という大金と栄誉を得て、彼女の顔は満ち足りたものだった。



次回から精霊国に向かいます。

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