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第七話 鬼人の忍者現る 前編


『バリーーーン!!!!』


 二階の窓が割れる音に俺は飛び起きた。


 泥棒か!? りょ、猟銃はガンロッカーの中だな。ええっと、金庫は……


「鹿室志道殿とお見受け致す!!」


 流暢な日本語!?


 風でカーテンが翻り、月光に照らされた人物は確かに日本語を使っている。


 野太い声を発する姿は、どこからどうみても忍び装束に見える。意味が分からない。この状況も訳が分からない。


 忍者が泥棒? そもそもこの世界に忍者?


「イィヤァッーー!!」


 忍者男が苦無を横に一閃する。


「――ッ!? 何なんだよお前ら!?」


 辛くも体を捻り避けた時に、月の光に照らされた男の頭には二本の角が生えていた。


「我らと共に来てもらおう」


「馬鹿言うなよ。喜んで拉致される奴はいねえんだよ!」


 扉の鍵が掛かっている。キセーラ対策が仇になった。開錠する暇は――ない。


「うぉ!? あぶねっ!」


 棒手裏剣が扉に刺さる。


 忍者男が迫る。やむを得ず、中段後ろ蹴りを浴びせた。

 

「ぐぉおお!?」


 腹を押さえ片膝を付く忍者男に目もくれず廊下に出る。廊下も忍者共がいた。


「この屋敷に押し入る悪党共は……」


 クラシカルなメイド服を着たニーカが、両手に木製ダガーを逆手に持ち佇んでいた。異様な雰囲気だ。彼女の足元にも一人の忍者が気絶していた。


「そこの女強いぞ! 囲んでしまえ!」


「残らず首を落として差し上げます」


 ニーカが親指で首を切るジェスチャーをする。


 切りかかる敵をニーカが蹴りあげ、後ろに回った敵の斬撃を屈んで躱す。流れるような動きで独楽のように足払いをして、倒れる敵の顔面を踏みつけた。


 あれ? チェッカードさん強くね?


 その後も俺の出る幕はなく、ニーカが無双の強さを発揮していた。


 ニーカにぶっ飛ばされて天井や壁に穴を開ける角の生えた忍者たち。その数は優に二桁に及ぶ。そういえば、前に誰かが兎獣人は首狩兎という二つ名があるとか言っていた。要するに元は戦闘民族なのだ。


「何なんですかあなたたちは!? クー、やってしまいなさい!」


 モイモイの部屋からも敵の悲鳴と、クーの唸り声が聞こえた。


 ほどなくして、屋敷に押し入る不審人物たちは鎮圧された。


「これほど拙者の配下が不甲斐ないとは……」


 少女の声だ。薄暗くて良く見えないが、背は低い。モイモイより高く、キセーラより低いといったところだ。


「お前らは何が目的なんだ? 猟銃か? 金か?」


「シドーどうした!? ……なんだこれは?!」


 キセーラがやっと起きて来た。ラハヤは今も寝ているだろう。


 野盗が襲って来た時も彼女は寝ていたし、今日の夕食時には浴びるように葡萄酒を飲んでいた。


 キセーラが廊下の明かりを灯す。


 少女の頭には、二本の角がある。黒髪で髪型はおさげだった。忍び装束に似ているが、黒のミニスカートで露出が多めな衣装だ。胸は貧乳だった。モイモイよりは大きい。


「シドーさん、今、私の胸を見ませんでしたか?」


「……気のせいだ」


 くノ一な少女は見事な土下座をして見せた。


「どうか我らをお助け下さい」


「いや、勝手に押し入って意味が分からないんだが……」


「拙者はリンドウと申す者」


竜胆(りんどう)? 日本から来たのか?」


「ニホン? 我らの祖は秋津島からこの世界に飛ばされた異邦人で御座る。ニホンと言う国は存じませぬ」


 リンドウと自己紹介した彼女はそう言ったが、どこからどう見ても和風な姿だ。気絶して伸びている忍者男たちも和風な装いだ。


「ま、まあいい。それで、なんでこんなことをしてくれたんだ? 助けるってなんだ?」


「我ら鬼人(オーガ)族の郷に、大きな人食い熊が出没しているので御座る。狩猟組合に依頼を出せども、受ける者は誰もおらぬ有様で御座った。故に参った次第」


 話が噛み合っているようで噛み合っていない。


「なぜ一戦交えるようなことをした?」


「それは魔獣を倒すほどの腕前を持つ志道殿を、拉致しようとしたからで御座る」


「するなよ!」


 こいつらの思考回路が分からない。


「シドー、どうするんだ? 助けるのか?」


「どうしようかな……」

 

 彼らの考えが俺には理解できないが、熊の被害に困っているのは良く分かる。俺の住んでいた世界だって、度々熊の被害が報道され俺たち猟師が駆り出されるのは良くあった。リンドウの言う話が本当であるなら、猟師の俺が助けるべきであるのも分かる。


「どうかお助けを!」


 リンドウが額を床につけるほど頭を下げる。


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