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おしえて!ネクロマンサー先生  作者: 手綱ユルシ
6/6

(2年)ゾンビ その1

ギリギリアウトな描写あり。

 やっほー! みんな、久しぶり☆ 死霊業界のアイドル、クリスティーナちゃんが帰ってきたよ☆ どう、どう、どう、どう? あたしがいなくって寂しかったでしょう?


 ん? なんか反応がいまいちだな。まさか一週間いなかったから、みんなはもうあたしのことを忘れたの? すごくみんなに会いたかったのに、クリスティーナちゃんショック (´・ω・`) みんなと一緒にゾンビの授業をしたかったのに、もう帰ろうかな……


 あぁ、もう、みんなつれないな。いつも死体と一緒にいる人は、そんなに生真面目じゃ、本当に死体みたいになっちまうよ。コープス。ユー・アー・デッド・バディ。だめよ、もっと生き生きしなきゃ。今回は見過ごしてあげるから、今度はもっといい反応してね。だって、みんなクリスティーナちゃんのこと、大好き☆でしょう? ね? ね?


 おっほん。まぁ、そろそろ本題に入ろっか。じゃ、ちょっとあたしが学会にいっちゃた前の授業内容を復習しようね。ゾンビというのは要するに蘇った死体のこと。骨だけのスケルトンに比べると、ゾンビはある程度構造を維持できるほどの生体組織を持ってなければならない。多少の腐敗は問題にならないけど、関節まるごと腐ったら使い物にはならないからね。術式の形は多少違うけど、ミイラもゾンビの類に入るの。


 スケルトンに比べて、ゾンビはいくつか利点がある。まず、残ってる筋肉とかが役立つから、同じ出来のスケルトンに比べて、ゾンビの方がちょっとだけ力強い。あと、ちゃんと繋がってる部分があるから、うまく動かなくてもバラバラにはならない。動かせるハードルは多少下がってる。


 でも一番重要なのは、ダメージ耐性だね。いくら魔力の加護があるからって、スケルトンの骨はやはりダメージが受けやすい。骨が削られるか、ひびが入るか、強打されちゃ折れてもおかしくないの。あと、風雨にさらされることも、日光に直射されることも、骨を傷つけてしまう。ちゃんと手入れしないと、どんどん骨が脆くなって、コンディションが下がっちゃう。いずれスケルトン全体が崩れちゃって、二度と蘇らせなくなる。修復することで多少寿命が延びるけど、修復された部位はどうしても前より弱くなるし、骨自体が脆くなっちゃったらどうにもならない。


 一方、生きてる人間と同じ、ゾンビの軟組織はちゃんと骨を守る。骨が風雨の影響を受けるはないし、刃物に対しては盾になって、衝撃を受けるときはクッションになる。表面が傷つけられても、肝心な骨格に問題がなければ大した支障にはならない。ちゃんとできてるゾンビなら生物みたいに多少自己修復の能力を持ってるから、些細な傷なら自力で回復できる。たとえ骨が折れる程度の大ダメージを負っても、ゾンビはバラバラにならないから、修復するのも比較的に簡単なの。スケルトンはよく一回の戦闘で使い物にならなくなるけど、倒されにくいし、倒されても何度も蘇るのは、ゾンビのかわいいところね。


 ここまでは問題ないね。じゃ、丁度昨日いい死体が来たから、それを使って基本の下準備から実演するね。スケルトンは虫箱に放り込めばいいって話だけど、ゾンビはそういうわけにはいかないよ。まずは死体の検査ね。んーと、また錬金学部の生徒か。もう、なんなの? 毎年何体を送ってくるつもり? まったく、もう三年生なのに、水銀で遊ぶなんて、バカじゃないの? 材料の提供はありがたいけど、錬金学科の子たちは本当に大丈夫か?


 まぁ、完全な死体を送ってくる分だけマシなの。あいつらは去年、爆発事故の死者をこっちに送ったことがあったんだ。あれはもはや死体なんかじゃない、肉片というよりはペースト状の何かと言ったほうが正しい。まったく、どうしろって。こっちが迷惑だっつーの。


 とにかく、今回はこういう問題がなさそうでよかった。死体の保存状態は良好ね。すぐに低温保管に入れたのがよかったし、水銀のおかげで腐り難くなったこともあるかな。言っちゃ当然だけど、ゾンビは保存状態がいいほど性能がいい。腐ったゾンビは大したことできないし、衛生面じゃ色々と問題があるから、腐敗しすぎた死体はもう潔く虫箱に投げて、スケルトンにしちゃった方がいい。


 状態が良好なゾンビなら、蘇生したらなかなか腐敗しないの。まがい物でも、ちゃんと魔力が流れてるからね。とはいえ、用心にこしたことはないから、念のために防腐剤を注入してもいい。完全にミイラになると性質が変わってしまうけど、ちょっとした量じゃ影響が出ない。あと、もとから腐敗が進んでいた場合、蘇ったあとにも引き続き腐ってくることがある。蘇生後傷つけられちゃった場合も同じね。そういう時はちゃんと処理するのがお勧め。ゾンビの性能に影響がなくても、あちこちに腐肉が落ちてるのは衛生的にも精神的にもよくないからね。


 今のところは防腐剤をスルーしちゃって、次やるのは浣腸ね。


 ん? そうだよ。浣腸。KAN☆CHOU。そんなに驚くことか? 当たり前でしょう? う〇こを腸に残してどうする。ただの重量になるだけじゃないか。それだけならまだマシだけど、ゾンビの肉体と違って、中にある糞便はちゃんと腐敗するの。ハエが寄せてくるし、蛆も湧くの。あと、ゾンビはたいてい生きてる人間より肛門が緩い。お尻まできちっと魔力を入れるやつなんてそうそういないでしょう。処理が不十分なゾンビが残したう〇この跡を想像してごらん。やるべきことをちゃんとしなきゃ、大変なのは自分だよ。


 ん? なに、カロスちゃん?


 え? アイドルはう〇こなんて言葉を口にしない?


 いいか、そこは勘違いしないでほしい。アイドルはう〇こしないけど、う〇こを言っちゃいけないルールなんてどこにもないよ。それよりカロスちゃん、あたしにそんなことを言っていい度胸だね。アイドルに文句をつけるなんて非常識にもほどがあるわ。ナンセンス。お仕置きが必要ね。そうね……じゃ、前に出て、手伝いなさい。つべこべ言わない。どうせ予習課題をやってないでしょう? ほら、当たりだね。はい、だらだらしない、さっさと来なさい。あたしのことを手伝う機会なんてそんなにないよ。光栄だと思いなさい。


 手袋はちゃんとした? よし、じゃ、ノズルを入れて。もう、そんなにびくびくしてどうする。男の子でしょう? おどおどせずに一気に突き込みなさい。ほら、ちゃんとできるじゃん。浣腸液を注入するね。そのままノズルを持って。毒性のある防腐剤を使ってるから、あちこちに飛び散ったら医務室に直行よ。死ぬことはないけど、治療学科の子に「特別処置」にすると言付けてやるわ。治療魔法の拷問応用の被験者になりたくなけりゃちゃんと持つのよ。


 ちょっとした水圧が必要だけど、あまり強くし過ぎないように注意して。内臓が破裂したら後片付けは大変よ。はい、これでよし。じゃ、このバケツを置いて、ノズルを引いていいわよ。ちゃんと受け取ってるのか、カロスちゃん? 床が汚されたらあんたが掃除するからね。じゃ、下腹部に力を入れて押して、よいしょっと。よし、出てる出てる――ってこいつ、何を食べやがったの? よく死んだ時漏らさなかったな。


 まぁ、下処理で出せるのはこれぐらいかな。これぐらいでも一般使用じゃ問題ないけど、本当に入念なやり方なら、蘇生させる時、一回腸を作動させるの。今回はそこまでやんないけどね。じゃカロスちゃん、手袋を捨てて、ちゃ~んと手を洗ってから戻ってきて。なに、この程度で解放されると思ったの? まさか。引き続き手伝わせてもらうわ。


 内臓の除去については賛否両論だね。実は前日の学会でそのことについてちょっとした論争に発展したけど、みんなのアイドル、クリスティーナちゃんが黙らせてもらったよ☆ まったく、あたしの発表の邪魔だっつーの。時間が足りなかったらどうするのよ。


 あたしはどっちかというと、取らない派だね。確かに、内臓を取り去ったら、ゾンビの動きがちょっと早くなる。軽くなったから、それも当然ね。でも、そうしたら死体の魔力容量がかなり減っちゃうから、初心者ならともかく、あたしぐらいの術者にしちゃ本末転倒よ。学生にとっても内臓を取らないほうが基礎が学べるから、あたしが担当してるうち、その方向でやってもらうね。


 今回の処理はここまでにしよう。関節の補強はできなくはないけど、靭帯がちゃんと仕事している場合はあまり意味がないわ。本当に優秀な死体を手に入れたらともかく、こいつのためにそこまでする必要はないね。あと、死体に傷や腐敗してる部分があった場合、包帯や布で問題のところを巻くのは一般的ね。今回はそういう必要がなさそうから、そのステップは省略するわ。ミイラと違って、ゾンビは布の部分を同化してないから、巻いたことで動きが鈍くなることはまぁまぁあるの。特に関節の部分は要注意ね。たとえ残りの部分が良好でも、関節の損傷が激しい死体はあまりゾンビに向いてないかもしれない。


 じゃ、本作業の入るわよ。要領はスケルトンとはそんなに変わらないけど。ただし、死んだ間もないころの死体には残留魔力が多いから、このままじゃ作業の邪魔になる。力尽くで追い払うわよ。中身が空になってから、ゆっくりと魔力を注入していい。スケルトンをちゃんと蘇らせられたら、さほど難しいことじゃないわ。むしろ肉がある分、スケルトンより許容の幅が大きいの。はい、あっさりと出来上がり。ね、簡単でしょう?


 ん? 何、その落胆した顔。「なんだ、その程度か」って言ってるみたいじゃない。ゾンビって別に格別に難しくないわよ。実演ってそういうことでしょう。あとは実際やってみないとわからないことばかりだから、これからはとなりの実験室に移動するね。この教室には戻らないから、荷物を忘れないでね。カロスちゃん、これを持って。あとこれも。これも。これも。何つべこべ言ってるのよ、アイドルのそんな重い荷物を持たせるわけにはいかないでしょう。


 じゃみんな、実験室に入ったら、二人でペアを組んで、席にしてね。


口調は安定しない。

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