幕間 二年生の昼休み
ソフィア「ねぇねぇ、あれを見て」
カロス「なんだ? ほ―、一年か。もう実技やってるんだ。いいな―うちは一周遅れるのによ」
ラルフ「仕方ないだろう。クリスティーナ先生、学会に行っちゃったし」
フィーナ「クリスティーナ『ちゃん』と呼ばないと怒られるわよ」
ラルフ「……本人いない場合は勘弁してくれ。さすがにあれはきついよ」
フィーナ「まぁ……一味違うのは確かね。生真面目なオズワルド先生に比べちゃ結構落差が激しい。でも授業内容は真面目じゃない」
カロス「あれが? どこが?」
ソフィア「あんたは黙って結構。あまり授業聞いてないじゃないか」
カロス「聞いてるよ。だからあれはどこが真面目だって」
フィーナ「アレなところをスルーすれば、説明すべきところは割と説明してるよ。要するに慣れね」
ラルフ「慣れだけの問題じゃない気がするけど……まぁ、予習課題は確かまともなものでほっとした」
カロス「よしゅうかだい?」
ラルフ「え」
ソフィア「あんた、まさか……忘れたの? 死霊術と解剖学の教科書の予習と宿題。先生が戻ってから提出するやつ」
カロス「あっ……あぁ、あれか。いや、今晩やろうと思ってたんだ」
フィーナ「やってないわね。大丈夫か? 去年の期末、割とギリギリじゃなかった?」
カロス「はいはい。お、動いてる動いてる」
ソフィア「なに? あぁ、一年ね。うん、思った通り危なっかしいね」
カロス「おい、あの変な動きは何だ……マジかよ、後ろ後ろ脚の関節、逆方向に固定されてんじゃねぇか。そりゃ動けるわけねぇだろう」
ソフィア「よく言う。あんただって同じことをやったくせに」
カロス「うるせぇな。最初の一回だけだろう。お前だって、最初の時は結び目がすぐ解かれて骨がバラバラに散らばってたんだろう。一旦授業中止になって、みんなが手伝うことになったんじゃないか」
ソフィア「っ……思い出させやがって。覚えてろよ」
フィーナ「はい、喧嘩しない喧嘩しない。それより見てなさい。ちゃんとできる子もいるよ」
ラルフ「本当だ。ちょっと動きが鈍いけど、最初にしちゃ上出来じゃないか。あっちも……あっ、障害物に当たった」
ソフィア「そっちは微動もしない」
フィーナ「ねぇ、珍しいパターンもあるよ」
カロス「……うわっ、あの動きは一体なんなんだ? 気持ち悪い」
フィーナ「前足に注目ね」
カロス「……おい、何で羊の骸骨の片足が豚になったんだ?」
ラルフ「混ぜたんじゃない? 前にもあったじゃない、僕とアルフレッドが農家から注文した山羊はなんか輸送中ほかのやつと混ぜちゃって」
カロス「げっ、思い出した。あれ、分けるのに三人がかりで二時間掛かったな」
ラルフ「手伝ってくれて助かったよ」
ソフィア「だからと言って、そこは気付けよ。補強の時とか魔力注入する時とか、違和感なかったの?」
カロス「ちゃんと解剖の授業を聞いてないからじゃない?」
ソフィア「あんたが言うのかい」
フィーナ「はいはい、隙あらば痴話喧嘩しない。それにしても動けるのはある意味すごいね」
ラルフ「もうキメラじゃないか。意外と大物かも?」
フィーナ「そうね。ちゃんと解剖の授業を聞いていれば……うん」
カロス「おい、意味深な視線はやめろ」
ラルフ「自覚があるんだ……それよりさぁ、早く食堂に行った方がいいじゃない? 一年が上がる前に」
カロス「おお。俺も腹減った」
ソフィア「そうね。今日のメニューはなに?」
フィーナ「えっと、もつ煮、ホルモン焼き、もつそば、ハギス。あとはなんだっけ」
ラルフ「解剖の授業の後はよくこうなるな」
ソフィア「いまさら話のネタすらならないわ。一年の時は夢でも内臓を見るけど」
フィーナ「何もかも、慣れね」
短っ