プロローグ
ここは剣と魔法の世界。
人は剣を取り、魔法を放ち、魔の手から命を守ることを第一に暮らしていた。
それらをこう呼ばれていた。
―『冒険者』-
『魔』の手から唯一対抗できる存在である。
戦士、魔法使い、僧侶・・・多くの職が存在し、それらを操り世界を冒険する。
それが『冒険者』。
しかし、人間同士の争いも少なくはなかった。
「誰か助けてー!!」
少女の声が街の路地裏から聞こえてくる。
「オラァ、くるんだ」
「いや、やめて」
大男は少女の嫌がる手を引っ張りどこかへ連れて行こうとしていた。
その近くを通りかかったある『男』がいた。
男は眉をひそめた。
「待てよ」
そう言い、少女を大男から引き離す。
「あなたは・・・?」
大男は怒りに満ちていた。
「俺たちの物を横取りするとはテメェ何様だ?」
「横取りなんて俺はしていない。助けてと叫んでいたからこの子を助けた。」
「それを横取りって言うんだよ!コノヤロウ」
大男は背中の大剣を手に持ち、襲い掛かろうとしていた
「おっと?PVPか?いいよ、かかってこいよ」
片手剣を持ち身構える
「ウラアアアアアアアアァァァ」
キンッ
剣と剣がぶつかり合う
「フンッ」
キンッ
カンッ
剣の交じり合う音が路地裏に鳴り響いた。
「どうした?押されているぞ?さっきまでの威勢はどうしたァァァ!」
「くっ・・・」
「死ねぇぇえ!剣技『流し斬り』!!」
剣技『流し斬り』・・・それは足と手に筋力を一点集中させ縦一線に突進、大剣技である。
「ぐっ・・・あっ・・・」
剣技を放たれ男は受け止めたが片手剣を吹き飛ばされてしまった。
「戦士に武器が無いとは最早負けも同然だな。潔く死ぬがいい」
大男は大剣を振りかぶった
「呪文『風の一切れ』!!」
風の刃が大男を切り刻んでいく
「あ・・・ぐっ・・・ま、まさか・・・」
「そう、俺は『魔法戦士』だ。剣よ我が手に戻れ!呪文『リターン』」
剣は男の手元に戻り、大きく振りかぶった
「最弱の職業になる者など・・・う、うああああああや、やめてくれぇぇええ!!」
死を前に男は叫んだ。殺されると。
大男の手前で男は剣を止めた。
「殺す価値もないな。」
大男は白目を向いて気絶していた。
男の職業とはこの世界で最弱と呼ばれる『魔法戦士』であった。
「あ、あなたのお名前は・・・?」
少女が手を掴み涙ぐみながら問う。
「俺の名前は『零』だ。よろしくな。」