外へ
洞窟の外は森の中だった。
木の枝には小鳥が停まり、木々を揺らす風が吹いている。
外に出た事を実感しているとシキさんが後ろから追いかけてきた。それも、不機嫌そうに
「勝手に走り出すな、戯け!」
「ご、ごめんなさい、つい……」
「……ふん、まぁいい」
「急ぐぞ、ここはエルフ共の狩り場だからな」
「は、はい」
シキさんが先導し、先へ歩いて行く
後ろ姿を眺めながらも、森の景色を堪能していると
角の生えた兎が私の方を見ながら、怯えていた。
狼だからかなぁ、可愛い生き物を愛でる事はできぬというのか……
等と兎を見ながら思っていると腹の虫が鳴る。
「なんだ、腹が減ったのか」
「え、ええ、まぁ……」
「なら、あのツノウサキを食えばいい。待ってやる」
なんだってぇ……?食えと?あの可愛い生き物を?
いや、狼だからそうだろうけど、元人間の私には荷が重いわ……
私が兎の方を見ながら固まっていると、シキさんが苛立ち始める。
しゃーないか、狼だしどのみち食わなきゃいかんよなぁ……
私は身構え、兎は自分に狙いをつかれたのを感じとったのか逃げていく。だが
遅い。まるで、ナメクジを目で追っているようだ
私は走り、兎の目の前へと移動する。兎は慌て前足でブレーキをかける。かと、思ったらそのまま私へ
と角を向け突撃してきた。
やっぱ遅いなぁ……
私はなんなく、横へ移動し回避する。
首筋ががら空きだったので、胸が痛いが私は牙を兎へと突き立てた。
数秒もせず兎は痙攣しながらも絶命した。
やってしまった……
そんな気持ちが心を埋め尽くそうとするが、牙についた血の甘い味がそれを振り払った。
甘い……美味しいなぁ、病院食とは大違いだ
私は感謝を込めながら兎を食べた。