転生先は狼でした。
目を開くと真っ白な空間の中で青年が少し呆れた様子で問いかけてきた。
「君さぁ、もっと生きたい!とか、死にたくない!とかないわけ?」
そんな事言われてもどうしようもなかったから。というか、あんた誰
「俺?そうだなぁ……命の管理人さんだな!」
アッハイ。で、その管理人さんが私にどのようなご用件で?
「いやぁ、ほら現実で厳しいじゃん?悲しい人生を送って、死んではい終わりー、なんて嫌っしょー?」
いや……別にどうでもいいっす……お帰りください……
「嫌だよねー!うんうん、そこで俺はそんな人達に救いの手を差し伸べてあげるのです!」
あ、こいつ話聞かない奴だな、クソッ
「そこで俺がやる救いとは……ほら、今流行ってんだろ?異世界転生とか転移とか」
まあ、小説とかアニメでよくあるね。あんま見れなかったけど
「その異世界転生をあなたにお届けしたいと思います!」
いらん、帰れ。休ませろ
「うんうん、いい返事だ!じゃ、レッツ異世界!」
待って、マジで話を聞け。いらないって言ってるで_________
青年に反対の言葉を口にしようとするが、目の前が真っ暗になり、私は意識を落とす。
私はこれからどうなるのだろうか、意識が徐々に回復しつつあるとそんな思考を持つ。
未だに視界は暗いままで、しかもベトベトした何かが身体にまとわりついており、少し息苦しい。
なんとか息をしようと鼻から必死に呼吸をくり返す。
すると、ざらりとして湿った何かが私を顔をなぞっていく、それのお陰なのか徐々に視界に光が飛び込んでくる。
完全に視界が広がり、周りの様子を見る。
目の前には私の数十倍の大きさがあり、赤と黒の毛並みの狼が威圧めいた目で見下ろしていた。
私は恐怖で震え上がり、手足を震わせる事しか出来なくなった。頭が救難信号を発しこの場から逃げろと命令するが動かない。
動け!動け!と、手で足を叩こうとするが足には届かず、ただ空を叩く。
だって、私の手は長く鋭い爪が生え、犬科特有の肉球が付いていた。
これは、あれか?あの青年(奴)は私の転生先を……
ふと、近くにある水溜まりが目に留まり、私の顔を写す。
写ったのは先ほどの狼と同じ毛並みの子狼が写っていた。
転生先は狼でした。