防御特化と最終調整。
前回のポイント周りを少し調整しておきました。
イベントの日程と内容を把握した楓の木の面々は話し合うとそれぞれにイベントに向けての準備を始めた。
幸い、楓の木は全員が参加出来る日程だったので役割を振り分けていく。
メイプル、ユイ、マイ、イズの四人が拠点防衛。
サリー、クロム、カスミが攻撃。
そしてカナデが防衛と攻撃を兼任する形に決まった。
クロムとカスミはモンスターと戦ってドロップアイテム集め。
これはイズの所持ゴールド増加を狙っているのと、感覚を研ぎ澄ませるための二つの理由があった。
サリーは回避の特訓と言ってギルドホームを出ていく。
ユイとマイは二層へと向かい目立たないように連携を上達させる予定である。
カナデはイズに頼まれて最上級のMPポーションを作るための素材を狙いにフィールドへ向かった。
そしてメイプルはギルドメンバーから自由に探索するように言われたため、ドロップアイテムを集めつつふらふらと三層を歩き回ることに決まった。
サリーは一人、二層のモンスター多発地域に足を踏み入れた。
そして、ただひたすらに攻撃を躱し続ける。それは身に纏う青いオーラが全開まで大きくなっても終わらない。
サリーは集中力の持続時間を伸ばそうと精密な動きを続ける。
幸い、高校生であるサリーは夏休みの途中なため長時間のプレイが可能だった。
「………ふっ!」
ダガーとは思えない威力の攻撃がモンスターの命を刈り取っても次から次へと湧いてくる。
サリーは己に課した目標に届かせようとひたすら体を動かし続けた。
「……うん、徹夜も試してみよう」
サリーは今出来る最善を延々と続けていくのであった。
ユイとマイは二層で戦っていた。
イベントでの作戦が決まり、メイプルを温存するために重要な役割を任せられた二人ははりきっていた。
イズに装備を揃えてもらった二人はそれぞれの髪の色と同じ色の大槌二本と、それに合わせた純白と漆黒の装備を身につけていた。
装飾品には指輪二つとチョーカー。
そのどれもが【STR】を上げるものであり、極限まで攻撃に特化していた。
今は互いを守るように動いている二人だが、メイプルの支援により守りを捨てて攻撃すれば惨劇は免れないだろう。
ユイとマイのステータスを知らないために、中には盾で攻撃を受け止めようと考える者もいるだろう。
盾の性能にもよるが、盾ごと爆散すらありえる。
そうなった時に敵対した者たちは冷静でいられない。
そうして訳の分からないうちに攻撃を受けて終わりである。
「【ダブルインパクト】!」
スキルによって叩きつけられる連撃などオーバーキルでしかない。
ここ最近で二人もスキルをいくつか取得していた。
その中には【投擲】も含まれている。
そして二人のインベントリは、イズに渡されたバスケットボールほどの大きさの鉄球が埋め尽くしていたのだった。
ただ、二人は今回それを使うことはなかった。
自由にしていていいと言われたメイプルはシロップのレベルを上げつつ、毒竜に武装を破壊してもらっていた。
全ての武装が破壊されればもう一度【機械神】を発動させることが出来る。
そうすれば防御力が上がる。
メイプルはこれをイベントまでの日課にすることにした。
「あっ!シロップレベル上がったんだねー!」
メイプルがシロップの頭を撫でて、にこにこと笑う。
「スキルが増えてる。【城壁】?」
【城壁】はスキル発動から三十秒間、絆の架け橋装備者の周囲に破壊可能な壁を生み出し続けるというものである。
メイプルが試しに使わせてみると、メイプルを中心に二メートルほどの距離をとって高い壁が瞬時にせり上がった。
こちらから攻撃は出来そうにないが、相手も同じである。
敵視点から見た時に、それはさながら卵であった。
中から生まれるものの姿はどう転んでも凶悪である。
「朧はどんなスキルを覚えるのかなぁ……まだ成長するよね?」
メイプルは毒竜に武装を破壊してもらったところで後回しにしていたとあるスキルの巻物を買いに向かった。
そのスキルは【ピアースガード】。
つまり、大盾に与えられた貫通攻撃対策である。
このスキルを使えば貫通効果を無効化することが出来る。
ドタバタしていて取得出来ずにいたメイプルだったが、その存在を忘れてはいなかった。
ギルド本体の強化も無事に終わり、カナデの魔導書も着々と増えていく。
イズのゴールドも満足いくだけ溜まり、【新境地】でのアイテム製作も無事に十分な量が用意出来た。
サリーは疲労を抜いて最終調整まで完璧にやりきった。
クロムとカスミはギルドの性能を最大まで上げきり、メイプルはより硬く、ユイとマイはより高火力になった。
そうして準備期間の内に各自やるべきことをやりきったところで、ついにイベントがやってきた。
今回は八人での参加である。
「目指すは上位で!」
「異議なし!」
ギルドを立ち上げたメイプルとサリーのこのゲーム初の団体戦。
少数精鋭の力を見せつけてやろうと意気込んで、八人揃って光に包まれてバトルフィールドへと転移した。
次回、イベント開始。
ユイとマイは鎧というよりフリルとかがついた可愛らしい服装をイメージして下さい。
撲殺天使。