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防御特化とリベンジ4。

作戦会議を終えた二人はペインを呼ぶと並んで向かい合う。


「準備はできたようだな」


「大丈夫です!」


「はい」


「楽しみにしている。もし、その未知の連携に負かされるというなら、観戦エリアで見ているだろうメンバーに全て聞き直さなくてはな」

ペインとレイ、メイプルとシロップ、サリーと朧。

三人と三匹が距離を取って戦闘態勢に入った。


「行くぞ!レイ、【聖竜の加護】【聖なる守護】!」


「メイプル、いつも通り!」


「任せて!」

決闘開始を示す合図ともに、ペインとサリーが走り出す。それはペインにとって想定通りで都合のいい展開だった。

ペインとしても一撃死しうるのはメイプルの【悪食】の方であり、メイプルは必要以上に近づきたくない存在。

あの遠距離からではメイプルはサリーを巻き込まなければ影響力を出せず、サリーとの勝負に集中できる。



はずだった。



「【全武装展開】【攻撃開始】!」


「……!」

ペインは驚愕に目を見開く。サリーの背後からばら撒かれたのは大量の弾丸。

この攻撃から汲み取れるリスクリターン、ペインの思考はこの攻撃が自分に与えうるダメージというリターンと、サリーの負うリスクが全く釣り合っていないことを直感していた。

一撃もらえば即死かつ背後からの攻撃。

メイプルとサリーの戦略におけるあまりに大きい破綻が、ペインの思考にノイズを走らせる。


「驚きました?」

距離を詰めたサリーが体を捻る。完璧なタイミングで、サリーの真後ろから抜けてきた弾丸がペインの腹部を貫く。

以前直撃させたベルベットと比べてほんの僅かなダメージ。しかし、一瞬の動揺は本物だ。

サリーは勢いのままに斬りかかるが、そこはペインが上手くいなす。


「ああ……!まさか、これがリスクにならないとはな!」

サリーとの剣戟を続けながら、ペインは奥にいるメイプルを意識する。サリーがその身を捻る度、当然のように弾丸が飛んでくる。

果たしてこれを単に信頼と言っていいものか。

メイプルはサリーが100%確実に攻撃を回避するという前提で、一切手加減のない攻撃を仕掛けている。

サリーに一発でも当たれば終わりであるから、ペインはそれをリスクとリターンのつり合わない行動だと捉えた。

しかし、信じ難いことであろうと、本当にサリーが全てを避けられるなら、メイプルの攻撃は合理的だ。


「……ならば!【光輝ノ聖剣】!」


「【跳躍】!【氷柱】!」

ペインの聖剣が光り輝き、前方に隙間のない光を放つ。

それに対して、サリーは【氷柱】を立てながら高く跳び上がり回避を試みた。

しかし、ペインの狙いは別にある。サリーが瞬時に対応できても、メイプルはそうではないだろう。メイプルのばら撒いた弾丸は、ペインの動きを制限するため、ある程度広範囲に散っている。

サリーが飛べば想定外のタイミングでその弾丸はサリーを襲う、それが真の狙いだった。


「私調子がいいんです」

飛び上がった先でサリーが体を捻りダガーを振るう。もはや当然のことのように二本のダガーが弾いた二つの弾丸、それは弾かれ変わった軌道の先で【氷柱】に直撃し跳ね返ると、吸い寄せられるようにペインに向かってきた。


「驚かされる……!」

ペインは片方を盾で受け、片方を剣で斬り落とす。この跳弾は偶然ではないという確信と共に。


「もっと夢中になってくれていいですよ。まだまだ魅せられますから」

サリーは回転するように走りながら、メイプルからの援護を受ける。

背後からの銃弾のうち常に一つはペインを狙うように避け、残りは弾いて跳弾に変えてそれ自体が生き物かのようにペインに襲いかかる。


「あり得るのか……!」


「はい、見た通り」

実際にその目で見ていなければ信じられなかっただろう人の身を外れた神の技。

ステップを踏もうと前に踏み込もうと、跳弾は未来を見ているかのようにペインを捉え、サリーのダガーはペインを斬り裂く。

恐ろしいほどに研ぎ澄まされた技は、ペインにも遥か届かない域。

サリーは実質二人分の攻撃を完璧に捌きつつ、そのうち半分は自分の攻撃に変換しているのだ。

それも、最強のプレイヤーと言ってもいいペインを相手に。


「レイ、【聖竜の息吹】!」

ペインはレイのブレスで一度サリーを拒絶した。

サリーも素早くそれを察知し、地面に糸を伸ばして高速で撤退しながらメイプルの弾丸を跳弾に変えてペインに撃ち込む。

それはペインに直撃し、ダメージを重ねるがサリーはその様子を見て目を細め、メイプルに攻撃中断の合図を出す。


「どうやら分かっているらしい」


「はい。私はペインさんと相性が悪い」

その身で隠して狙った弾丸。

跳弾に変えて狙った銃弾。

隙を突いて斬りつけたダガーでの一撃。

サリーが一方的に傷をつける展開にも拘らず、ペインの受けたダメージは三割程度、それもすぐに自動回復により治っていく。

サリーのヒットアンドアウェイは的確で、反撃を受けることはない。


技術で勝り、しかし素の能力で大きく劣る。


ペインにメイプルのような異常な事象を引き起こす特殊なスキルはない。その強さの本質は高いステータスと、そのステータスに補正をかける強力かつ大量のパッシブスキル。

サリーの攻撃ではダメージを与えることはできても、ペインを倒し切ることはできない。

肉を切らせて骨を断つ。

ペインの戦闘スタイルにおいて回避の優先順位は低い。受けてから斬り返すことのリスクは低く、近づいてきた相手に自分が受けたダメージ以上のダメージを返すことができる。

圧倒的なステータスを持つ肉体が誰一人真似できないペインの強さ。

それは、ほぼ全ての相手のダメージトレードを破壊するのだ。


「しかし既に二度も驚かされた。それだけでなくまだ手札を隠している」


「どうでしょうね。でも、もっともっと、目を離せなくさせてあげます」

ペインが自分に一度【ヒール】をかければ減ったHPは元通り。サリーが全てを尽くして磨き上げた技術をステータスで粉砕する。

単純だからこそ、どうしようもない差。

サリーがメイプルの銃弾を弾くのと同じように、そこには絶対があった。

故にペインの意識の向く先をサリーは敏感に察知していた。

ペインが常に気にしている唯一の負け筋、それはメイプルの【悪食】。

ペインはメイプルが距離を詰めてこないかどうかだけは警戒し続けていた。

そんなことは承知の上、サリーはメイプルの【悪食】をペインに突き刺すために今前に立っているのだ。


「仕切り直して……行くぞ!」


「はい。まだまだここからです」

メイプルの射撃再開と共にペインとサリーは再び駆け出した。




「はぁっ!」


「ふっ!」

ギィンギィンと鳴り響く剣のぶつかり合う音。

メイプルの銃弾を自在に操るサリーと、自分のステータスの優位を理解して斬り返すペイン。

十、二十、繰り返される剣戟の中で、ペインはサリーを崩すための隙を探す。


「【毒竜】!」


「【水の道】!」


「なるほど……!【退魔ノ聖剣】!」

メイプルの【毒竜】を【水の道】で受け止め、自身の制御下に収めて、水と共に大量の毒を押し付ける。

【毒無効】があれどメイプルの毒は受けられない。ペインは【退魔ノ聖剣】のスキル解除によって、毒水を斬り裂いて消滅させるが、サリーも攻撃の手を緩めない。


「【ウェーブライド】!」

生成された大波がサリーの姿を遮る中、ペインは次の攻めのため回り込みつつ、冷静に大波を受け止める選択を取る。


「【古代兵器】!」


「何……!?」

青く細いレーザーが大波を貫き余波によって波に大きな穴が開く。

メイプルは波の向こうで移動するペインを、【古代兵器】を変形させたスナイパーライフルで的確に撃ち抜いた。


「どこまでも!」


「はい」

いや違う。と、ペインは瞬時にそのからくりを理解する。見えないはずの向こう側で鏡合わせのように動いたサリー、そのサリー目掛けてメイプルは撃った。

サリーはこの高速のレーザーすら当然のように避け、サリーを狙えばペインを狙える。

その信頼は最早、信頼を越えて信仰に近く映った。

サリーのミスをメイプルはほんの一欠片も疑っていない。メイプルの動きはそんなものは『ない』と明言しているようなものだ。

メイプルが貫き、波にできた穴をサリーが抜ける。


「【ダブルスラッシュ】!朧【狐火】!」

サリーの武器が赤い光を纏い、朧が炎を放つ。

ペインはメイプルから受けたダメージが致命的でないことを把握し、冷静にサリーのダガーを受け止める。

サリーの【ダブルスラッシュ】が真に【ダブルスラッシュ】でないことは想定済み。

別のスキルが意識に入ったところでサリーは次の手を打つ。


「【鉄砲水】!」

ペインが足元を警戒したその瞬間、長剣のサイズまで伸びたダガーが【ダブルスラッシュ】の軌道を外れ、ペインの肩口に突き刺さり大きな傷を作る。【鉄砲水】その宣言の実態は【変幻自在】であり、武器のリーチを急激に伸ばしてペインの不意を突く。


「【破壊ノ聖剣】」

しかし、ペインはそんなことは意に介さず踏み込み、聖剣から強烈な輝きを破壊そのものとして放った。


「【黄泉への一歩】!」

放たれたのは前方への超広範囲攻撃。サリーは紙一重のタイミングでそれを回避し、ペインの真上を取る。

メイプルの二発目のスナイパーライフルが着弾したのはまさにその瞬間だった。

攻防一体。完璧な立ち回りでメイプルとサリーはペインを攻め立てる。

全て避け、全て当てる。一連の完璧な連携でペインのHPは残り五割を割ったその瞬間だった。


「レイ、【再生の光】」

レイの光がペインを包み込みペインのHPを全回復させる。


「本当……!」

完成された個。サリーとはまた性質の違う強力な一。ペインは飛び上がったサリーに追撃を仕掛ける。


「【紅蓮波】【ホーリーレイン】!」

強力な魔法もスキルも必要ない。どんなダメージでもサリーには致死量だ。

地面からは炎を、空からは剣から放った光を降り注がせ、不自由な空で対処を強いる。

普段なら攻撃の度気にしなければならないメイプルは今回【身捧ぐ慈愛】を行使できない。

揺らぐ炎の向こうに見えたサリーは背を向け空へと逃げていく。


「朧【黒煙】【神隠し】!」

黒煙の向こうにサリーは消えていく。完璧に挟み込んだペインだったが、ここは【神隠し】を使わせるに止まった。

それでも、貴重な防御札の一枚を切らせたことで十分。ただの回復スキルで受けきることができているペインとの差は大きい。


「流石に逃げ切ったか」


「当然です……【相棒の助力】」

【神隠し】をもう一度使えるようにした。

継承したスキルは正確には分からないが、それが最も妥当であるとペインは判断し、それを頭に入れて剣を構える。


「そろそろ、押し切らせてもらう」


「あと半分削り切る所まで待ってもらえませんか?あ、回復もなしで」


「無理な相談だ」


「分かってます」


「【超加速】!」


「……!【超加速】!」

ペインの加速にサリーが合わせる。しかし、【黄泉への一歩】の空中の足場生成によるステータスダウンも相まって、ペインの速度はサリーを上回っていた。


「【毒竜】!」


「【水竜】!」


「【破魔ノ聖剣】!」

二種の竜が混じり合う奔流を斬り裂く。ペインの足は止まらず、サリーはバックステップを重ねて距離を取ろうとする。


「【ウィンドカッター】!【ファイアボール】!」


「【不動】」

【偽装】した【鉄砲水】に先読みの【不動】を合わせ、噴き出した水を踏み越えてサリーに剣を振るう。


「くっ……!」


「【紅蓮波】!」


「【氷柱】!」

魔法も組み込みサリーを範囲攻撃で攻め立てる。サリーは上へ下へ、ペインより優れた縦方向への機動力でかろうじて捌く。


「レイ、【巨大化】【聖なる光炎】【光の奔流】!……【聖竜の光剣】!」


「次から次に……!【水の道】!」

空に舞い上がったレイから光り輝く炎が吐き出されペインから巨大な光の波が放たれる。

サリーは避ける。この規模の範囲攻撃をばら撒かれてはミリ単位の回避は不可能だ。隙間がなければ回避はできない。

着地した瞬間に合わせてペインが迫る。その目は数瞬後のサリーの死を捉えているようだった。


「くっ……!」


「はっ!」


「まだっ!」


「レイ、【聖炎連鎖】」

繰り返した足場生成で落ちた【AGI】がのしかかり、ペインの攻めがサリーを上回る。

数度の剣戟の後、ギィンと音を立ててサリーのダガーのうち片方が弾き上げられた瞬間、均衡は完全に崩れた。


「【破魔ノ聖剣】!」

【神隠し】は発動してもその上から斬り倒す。【聖炎連鎖】の追撃効果で無敵後に策があろうとそれすら許さない。


「夢中になった?」


「【カバームーブ】!」

サリーの言葉がやけに響いたような気がした直後、横からの強い衝撃。

HPが全損したと同時に生存用のスキルがHPを一だけ残した感覚。

ペインが咄嗟に衝撃を受けた方向を見る。


ほんの一瞬意識から外れた。

いや、外させられた。

そこには、空気から溶け出るように透明化が解けていくメイプルの姿があった。

透明化というあり得ないメイプルの未知のスキル。【カバームーブ】は範囲外、そもそも使えたとしてどうやって何に飛んでくることができたのか。

思考は混迷を極め、されど全ての現状把握を一旦脇に置いてペインは立て直しを図る。


「レイ!来い!【ヒール】!」


「【城壁】!」


「……!」

【城壁】を発動したのはサリー。レイの合流を防ぎ、ペインを自分達もろとも岩の檻に閉じ込める。そこでペインは仕組みを全て理解した。


「シロップ、朧……!」


「朧、【神隠し】!」


「シロップ、【大自然】!」

サリーの肩に乗った朧がメイプルの声に反応して、駆け出したメイプルを全ての攻撃から守る。

メイプルの肩にしがみついたシロップが、サリーの声に反応して太い蔓を生み出しペインの逃げ場を奪う。


そう、二つの【絆の架け橋】は戦闘前に入れ替えられた。互いの肩に乗ったテイムモンスターの主は別であり、サリーが使わせた【黒煙】は煙玉、【狐火】は【偽装】された【ファイアボール】、【神隠し】は研ぎ澄まされきったサリーの技術により避けただけの荒技。

味方には【カバームーブ】が発動できる。サリーに飛べずとも、肩の朧にメイプルは飛べる。

サリーが注意を完全に引き死にかけて、メイプルがペインの意識から外れるその一瞬、【瞬影】からの自爆飛行そして【カバームーブ】で肩の朧に届く範囲まで必ず下がってきてみせる。


メイプルはただ一つこの秘策を伝えられていた。


故にメイプルは待った。

必要以上に攻めずサリーの作った隙に、自分が確実にペインの意識から消えるように、サリーとの距離だけを気にして、じっとじっとこの一瞬この一撃のために。


故にサリーは誘った。

回避盾として注意を引いては凌ぎ、朧が自分のテイムモンスターであると偽って、【カバームーブ】がまだ生きているスキルであることを悟らせず、ただ一つ本命の攻撃に繋ぐために。


「やあああっ!」

【神隠し】を受けて迫るメイプルにペインが抗う術はない。

無敵のメイプルはペインに肉薄するとそのまま大盾を振り抜いた。


「ぐっ……!はっはは……なるほどまた一つ、得難い経験を得た、な」

大盾の直撃を受け【悪食】が発動し、ペインの体を食い千切る。


「また、やろう」


「はいっ!」


「負けませんよ」

それだけ言い残すと、ペインは素晴らしいものを見たような、満足そうな表情で消滅していくのだった。






宣言通り敗北と同時に、今の戦いを見ていた【集う聖剣】のメンバーとの意見交換のため、観戦エリアへペインは消えた。

残されたのはメイプルとサリー二人だけだ。


気づけばいつの間にか、空はイベントフィールドの終わりが近づいているかのように、どこか寂しげな夕暮れへ移り紅に染まっている。

二人はこれ以上歩き回る必要もないと、どちらからともなく地面に腰を下ろして話し始めた。


「はー……ナイスファイトメイプル」


「うん!よかったー、上手くいって……」


「本当本当、あれメイプルが割り込まなかったら私死んでたからね」

最後の瞬間、演技ではペインは引きつけきれない。そこには本物の死の香りがなければ。

サリーは不利と分かった上で正面から斬り合い、順当に負けてペインを引き返せない線の向こうへ呼び込んだ。

メイプルがそこに飛び込めなければ、サリーは死ぬより他にない。


「メイプルは結構戦った?」


「うん!ミィとも戦ったんだよ!」


「本当に?……どうだった?」


「危なかったけど勝てたんだ!えっとね【火炎牢】が……」

メイプルが話す今回のイベントのことを、サリーは楽しそうに相槌を打ちながらじっと聞く。

このイベント一つ取っても話題は尽きないようで、あれがね、これがねとメイプルは笑顔で話を続ける。


「メイプルが楽しそうで、よかった」


「うん、思ってたよりもずーっとずっと楽しかったかも!」


「ふふっ、うん」


「えへへ」

何ともなしに顔を見合わせて笑い合う。

終わりが近いからだろうか、特に意識せずとも思い出が勝手に溢れてくるのだ。


「私こんなにゲームを長く遊ぶとは思ってなかったなあ」


「私もそう思ってたよ。ちょっと遅れて参戦することになって、聞いてみたらすごいことになってるんだもん」


「あはは、ねー。こんなことになるなんて」


「誰も思ってなかっただろうね」


「たっくさん冒険して皆と会えて、いろんな景色も見たし、美味しいものも食べられたし!」


「大満足?」


「もっちろん!」


「勧めてきた中で初めて大成功の結果だなぁ」


「ハマって見るといいところが分かってくるものだねえ」


「お、すっかり上級者?」


「ええー?まだまだだよー」

他愛のない話。

されど二人にとってこれほど大事な話もなかった。


「サリーにはお礼をしないと。こんなに面白いものに誘ってくれてありがとう!」


「面白くしたのはきっとメイプル自身だけど……素直に受け取っておくとしようかな。どういたしまして」


「ねね、お礼何がいい?一つ……いや三つ!美味しいスイーツとか宿題の手伝いでもいいよ!」


「おおー、三つも?太っ腹だなあ」


「太っ腹はちょっと……」


「大盤振る舞いだなあ」


「そっちで!」


「でも……気にしなくてもいいのに」


「サリーはよくても、私がお礼したいんだ。たくさんの楽しいをくれたことのお礼!」

メイプルはそう言うとにこっと笑ってサリーを見る。


「そこまで言ってくれるなら……そうだな……お願い一つ、いい?」


「うんうん!」

サリーは一度眼を閉じ大きく息を吸って、見つめてくるメイプルの方を見返した。






「私と戦ってくれる?」

これまでの想いを全て乗せて。

ようやく紡がれた言葉は静かな夕暮れに響く。

この日二人は、いつか見た夢に追いついた。


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きたか!
最後の文節で泣いた やっと言えたんやなって
登場人物すべてが、ゲームを全力で楽しんでいて節度ある態度の、この作品が大好きです。 もうすぐゲームを一区切りさせる、メイプルとサリーを思うと、かなり寂しいです。作品の行方も気になる〜。 でも、リアル…
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