防御特化と大詰め。
装備品とアイテムを確認した二人は外へと出て雲のベンチに腰掛ける。
「『雨避けの兜』……」
「せっかくだったらさっき欲しかったよね。また大雨の所あるかなあ?」
文字通り雨が降っていてもそれに当たらなくなる効果を持った兜だが、使い道はかなり限定的だ。
「まあ……今売ってるってことは使い道もあるってことなんじゃない?」
「いざって時に取り出せるように覚えておこっと!」
「それがいいと思う」
五層エリアのボスも一癖ある性能ではあるが、まだまだ倒せない相手と言う程ではない。
「先は長そうだねー」
「他のエリアと違ってこの雲の中をひたすら上るだけでやることは明確だし、その分ある程度長いのはありそう」
五層エリアは途中参加ができないため、ここは最後まで二人で戦い抜く必要がある。
「四層エリアはそのうちまた全員集まって攻略するタイミングが来るだろうし、そこで進捗確認かなあ」
「六層エリアと八層エリアも進めてくれてるもんね」
「クロムさんの話を聞く分には結構進んでるっぽかったから、もしかしたらそっちが先になるかも……流石に行かないとなあ」
「その時はまた口の中に入れていくから安心して!」
「そうしようかな……」
【暴虐】には味方輸送の能力もある。かろうじて。本来の用途からは外れるが、視界を確実に塞ぎ、メイプルの防御力の壁の内側に格納できるのは強力なのかもしれない。そう、特に六層エリアへ向かうサリーにとっては。
「この後はどうする?」
「うーん、途中まで進めても町からになっちゃうし、多分次の町までは結構かかっちゃうよね」
「そうだね。道中もギミックとか多そうだし、ボスもいるだろうから」
「じゃあここまでかなあ」
「うん。一攻略一フロアって感じで進められればいいんじゃないかな。余裕があったらもう一つ先の町まで行けばいいし」
「そうしよう!」
「ん、オーケー。今日はこんな所かな」
「またゲームで!」
「その前にリアルで会うけどね」
「それもそっか。じゃあまた明日!」
「うん、また明日」
今日のところはこれまで。二人は笑顔で手を振るとログアウトして現実世界へ帰っていくのだった。
所変わって八層エリアのギルドホーム。転移してやってきたのは六層エリア攻略中のクロム、マイ、ユイの三人だった。
「お疲れ様ー。どう、そっちは順調かな?」
三人を出迎えたのは机の上に大きな地図を広げたカナデだった。
「おう。マイとユイが手を貸してくれれば倒せない敵はいないからな。お陰でクエストもガンガン進められる」
「カナデさんはどうですか?」
「私達では力になれそうになかったので……」
「こっちも順調だね。ただどうしても戦闘は発生しそうだし、そこはメイプルとサリーを呼ぼうかなって。どのエリアも楽しんでクリアしたいだろうしさ。あ、六層エリアは例外かな?」
「ここは謎解き要素があるんだったか?」
「うん。二人に説明する時に分かりやすいよう書き起こしてるんだ。簡単に言うと文字を解読して適切な順で海底遺跡を巡る必要があるって感じだね」
「運よく……ってのは無理そうだな」
「そうだね。メイプル程の運があっても厳しいかも」
「それは……」
「すっごく難しそうです」
「遺跡の中でも文字を解読する必要が出てくるだろうし、僕もついていくつもり。まああとは二人次第ってとこかな」
「メイプル達は五層エリアだったか?」
「カスミさんを手伝ったあとは……雲の迷宮に行っているはずです」
「じゃああとは最終戦闘前まで辿り着けたエリアから順にってことになるかな」
「おう。いよいよ大詰めってとこだな」
「ふふっ、まだまだ倒さないといけない敵はいるしそこは皆次第ではあるけどさ」
そうは言うものの、カナデは【楓の木】の勝利を疑ってはいないようだ。
人数は少ないながらも、メイプルとサリーの目標である魔王討伐に向けて、全速力で向かっていく【楓の木】なのだった。




