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防御特化と四層エリア3。

合流したメイプル達はギルドホームでカスミに成果を見せる。


「ちゃーんと間違ったものは一つも買わなかったよ!」


「流石だ。二人ともセンスがいいな」


「それはメモのお陰。でも楽しかったな。私はあんまりじっくり買い物したりしてこなかったし」

装備品も最初にユニークシリーズを確保できており、店売りの消費アイテムを使うようなスタイルでもない。

メイプルと一緒でもなければ非戦闘用の服やインテリアといったアイテムをほとんど買わないため、ある種新鮮な気持ちで楽しむことができたようだ。


「これでクエストは達成できる。そうだな……これで言っていたポイントがまた一定まで貯まったんだ。分かりやすく言うなら……四層の時の通行許可証のような」


「つまりそのポイントがキリのいい数字になったってこと?」


「そういうことだ。四層のように新たに踏み入ることができる新エリアというのはないが、そのタイミングでクエストが増えることがある」


「ふむふむ」


「進行度に合わせたクエスト解放かあ」


「ああ、せっかくだからな。時間があるなら二人ともパーティーを組んだ状態で一周したいと考えている。新発生のクエスト以外にも何かが見つかる可能性もある」

人数やアイテムがクエスト発生に関わってくるため、三人で行くことでしか見つからないものがあってもおかしくはない。

そもそも一人で行って見つかるクエストなら今日でなくとも問題はない。


「いいよ。クエストの内容によってはまた役に立てそうだし」


「案内してもらっちゃおう!」


「任せてくれ。面白い店もいくつもある」


「楽しみにしておくね」

三人でいるうちにやれることをやる。観光を兼ねたクエスト探しのため、三人は町へと繰り出した。





ギルドホームから出た三人。カスミが先導して和の町並みを移動する。


「カスミも最初に来た時はびっくりした?中に入ると夜になっちゃうの」


「ああ、流石に驚いた。ただ……嬉しくもあった。やはり、四層の怪しげな雰囲気は夜でこそ際立つからな」


「この隔絶された感じ……一つの大きなダンジョンみたいなものだよね」


「近いかもしれないな。よし、まずは情報収集をするとしよう」

カスミは二人に目配せをすると一つの店の中へ入っていく。二人もそれに合わせて店へと入ると、中は並んだテーブルをそれぞれ囲んで雑談をする妖怪達で溢れかえっていた。


「私達も席に着こう。奥が空いているな」

カスミに促されるまま奥のテーブルを囲んだ三人はテーブルに置かれたメニューに目を通す。


「注文しつつしばらく待とう。ここは情報が集まる店の一つなんだ。それに団子と抹茶が美味いぞ」


「へー……じゃあそのセットにしておこっと!」


「私もそうする。こういう時は分かっている人のおすすめを選んでおくのが一番」

情報収集はどうすればいいかピンと来ていないが、メニューを見て美味しいものを頼むことはできる。

少しして、メイプルとサリーの前には三個ずつ団子が刺さった串が五本、定番のみたらしから少し変わり種まで綺麗な朱塗りの台に乗って出てきた。

それを食べつつ、頃合いを見て二人も辺りを見渡す。情報収集というからには、何かできるアクションがあるはずだ。


「「あっ」」

振り返ると何人かの客の上にアイコンが出ており、これが情報を得られるNPCを指していることはすぐに分かった。


「注文してしばらく待つと情報収集ができるようになる。特別見つけるのが難しい訳ではないがフィールド攻略一辺倒では辿り着けないという訳だ」


「だね。カスミはここは自力で?」


「いや、ここは他を探索しているうちに誰かが見つけた場所になるな。ちょうどいいタイミングで利用できて助かった覚えがある」


「中を見るだけじゃなくてちゃんと注文しないといけないのって見逃しちゃいそうだよね」


「でも観光好きの人……それこそメイプルなんかは比較的早く見つけてもおかしくない作りだから面白いかも」


「どうやら新しい情報もあるようだ。少し聞いてくる」


「はーい」


「私達が聞けるようなのはカスミはもう聞いた後だろうしね」

二人が席で待っていると、カスミは一人の筋骨隆々の鬼から話を聞いて戻ってくる。


「面白い話が聞けた。が……二人の助けが欲しい内容だ」


「戦闘?」


「ああ、事情は分かっている。まずはイズが用意している装備ができてからだ」


「どんな所?」


「強烈な重力が働いている異空間だ。二人が何度か出くわしたらしい重力方向を変えるようなものではなく、大きく飛んだり跳ねたりができず投射物は落ちる」


「げ……」


「た、大変そう」


「私とサリーにとってその条件は戦闘スタイルと相性が悪い。可能ならメイプルの力は借りたいと思っている」

機動力が攻めの核になっている二人と違って、メイプルはどっしり構えて戦える。

重力に阻害され得意の遠距離攻撃はできないものの、【身捧ぐ慈愛】を活かして安全に距離を詰められればカスミとサリーの攻撃参加もしやすくなる。


「もちろんです!」


「ありがたい。ならそれは予定しておくとして、今日は他にもいくつか町を回ろう」


「まだまだクエストが増えていてもおかしくないしね」


「そういうことだ」

幸先よく新規クエストの発見には成功したが、まだこの店は一軒目。もしカスミが今見つけた超重力エリアよりも高難度なエリアが出てくればそちらの攻略を優先したい。比較する対象を増やすためにも町の中の散策は不可欠だ。

残りの団子も美味しくいただいて、メイプル達は再度散策へと繰り出した。




上手くクエストに巡り合ってのスタートではあったが、その後は新規クエストに出会えないまま観光メインと言えるような時間が過ぎていった。


「気に入った?」


「えへへ」

メイプルはというと赤い鼻緒の黒下駄に紫の和傘を買って、ユニークシリーズイメージのアイテムを装備してこの街を満喫していた。


「次はここだ。ここも期待できる場所の一つになる」

目の前の建物で特徴的なのは煙を立ち上らせる煙突と、玄関横に立てかけられたツルハシ等の古い道具達だろう。建物の規模や静けさからは最初に向かったような大勢の客が集う店とはまた違った印象を受ける。


「またアイテムショップ?それとも……」


「見れば分かるさ」

カスミが戸を開けると、中の景色が視界に飛び込んでくる。響くのはカンカンと鉄を叩く音。赤い輝きを放ち刀身へと姿を変えていくそれを叩いているのは翁面をつけた一人の男。


「鍛冶屋か」


「おおー、イズさんの工房とは結構違うね」


「イズさんは多才だから」

イズはポーション等のアイテム生成や薬草等の植物の栽培、鎧だけでなくマイとユイに作ったような服も作ることができる。

それと比べてこの工房はまさに鍛冶特化。壁に飾られた分は完成品だろうか。炎の光に照らされて切れ味の良さそうな輝きを放つ武器は装飾も凝ったものがなされており、この鍛治師の腕の良さが窺える。


「さて、どうか……」


「「……?」」

カスミが何かを待っていることを察して、二人もこの部屋唯一のNPCであり、おそらくキーパーソンであろう鍛治師の反応を待つ。

少しすると鍛治師は作業を終えて、面をつけたままこちらにちらと顔を向ける。


「あんたら……面白いもん持ってるな」

その言葉に三人はこれは来たとそれぞれの顔を見て軽く頷く。


「ちょうど頼み事があってね。誰に頼むか迷っていたんだが……あんたらなら力量も申し分ない」

男がそう言うと、クエストが受注可能な時のアイコンがポンと出る。


「もちろん無理にとは言わない。元々こなしてくれるならこっちは誰に頼んでもいいんだ。ここに来たってことは俺に用があるんだろう?依頼の結果次第じゃ手を貸せることも融通できることもある」

そんな条件がなくとも三人の意思は既に固まっている。受けられるクエストは受ける。それが四層エリア攻略の近道だからだ。

三人がクエストを受けると面の奥の瞳が確かにこちらを見つめているのを感じる。


「受けたからには期待している。急ぎで頼んだぞ」

それだけ言うと男はまた鍛冶仕事へと戻っていった。


「クエスト内容は?」


「これも戦闘になりそうな雰囲気だ」


「じゃあそっちも手伝おう!」


「それは助かる。ありがたい」


「皆で協力して魔王まで辿り着かないとだしね!」


「だね。カスミのお陰で四層エリアも進みは良さそうだし、いっそこっちが先でもいいかも」

何はともあれ、まずはイズが急ぎで作ってくれている装備品を受け取るのが先だ。

メイプル達は工房から出ると、四層エリアをぐるっと回って回収できる限りのクエストを回収した。

ただ、大きな戦闘がありそうものは結局最初の二つだけだったため、まずはそれをクリアしてみるところから始めることとなった。


「装備が完成したら呼んでくれればいい。私はその間一人でできる細々としたクエストの方を処理しておくからな」


「分かった」


「装備は作って貰うけど、気をつけて戦わないと駄目だから……頑張らないと!」


「メイプルの立ち回りでかなり変わってくると思うからね。特に重力の強いところはカバーしきれない部分も出てくるはず」

五層エリアでも手痛い一撃を受けて撤退したところだ。メイプルとて油断はしていないが、より一層集中力を高めて道中のモンスターにも向き合おうとするのだった。


イズが全速力で装備を作ってくれたこともあり、ほんの数日で装備は完成しメイプルの元にメッセージが届いた。


「イズさーん!」

ギルドホームの扉を開けるとすぐにイズが出迎えてくれる。隣の机にはキラキラと輝く銀のイヤリングと指輪が置かれており、これが用意した装備なのだろう。


「一応、目立たないようにできるだけサイズの小さい装備にしたわ。これならダメージを受けない限りHPが増えていることも気づかれないと思うわよ」


「ありがとうございます!」

イヤリングは頭装備として、指輪は見た目通り装飾品として、これでメイプルの能力も一段階ぐんと上がる。

イズの配慮で装備自体は小さなものにしてもらえたため対人戦も見据えられる。


『守護騎士の耳飾り・Ⅹ』

HP+300

『守護騎士の指輪・Ⅹ』

HP+300


「おおー!すごーい!」

特別なスキルこそないものの、HPに特化して作られた装備はイズの言った通り増加ステータスに関してはユニークシリーズを上回るような数値だ。


「これで少しでも探索が楽になれば嬉しいわ」


「はいっ!頑張ってきます!」


「また何か必要なものがあったら言ってね」


「はい!カスミと四層エリアへ行くので素材が手に入ったらイズさんに!」


「ふふふ、楽しみにしているわ」

受け取った装備品を早速身につけて、メイプルは四層エリアへと向かうことにした。

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― 新着の感想 ―
どうぶつの森で贋作混じりの美術品販売キツネを思い出した回でした
[一言] 贋作少しは買わなかったかぁ。 それはそれで、ギルドホームに飾ったり、それがキーでなんかクエスト発生とかもなさそうか。
[良い点] >>「あんたら……面白いもん持ってるな」 これが符牒なものでしょうね。 [気になる点] 甘味処の描写が少ないところが気になりました。 [一言] 鍛冶屋の親父いいですね。
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