防御特化と悲願。
メイプル達は無事三層エリアを突破して、それぞれが各エリアに散っていく。
全員が必ず再集結するのは、また『魔王の魔力』を手に入れるための戦いの時だろう。
無事に攻略を済ませ、次にメイプルとサリーが目をつけたのは五層エリアだ。
ギルドメンバーが手をつけておらず、丁度リリィ達にきっかけももらったところ。他のエリアとの進行度を揃えておくことで、効率よく『魔王の魔力』も集められるだろう。
五層エリアはパーティー内で最も進みの悪いプレイヤーに合わせてエリア攻略が進む。故に足並みを揃えることが重要になるため、次回の攻略日を決めてメイプルと二人乗り込む予定なのだ。
今日のサリーはそれまでの空いた時間を使って、いつもの二人と決闘を続けていた。
「今日はなかなか調子いいっす!」
「そうだねー。もっと当たってくれてもいいのにー」
サリーとだけではなく、同じタイミングに来ている時はベルベットとフレデリカのマッチも行われる。相性差があるため十回やれば七回はベルベットが勝つといったところだが、ベルベットが接近戦に持ち込んで上回るか、フレデリカが弾幕で圧倒するかはその日の調子によって変わってくる。
調子によって変わらないのは一つだけ。サリーが必ず勝つということだ。
今日も一通り戦い終え、訓練所で一息つくとやがて感想を口にし始める。
「フレデリカはさ【マナの海】使わないの?」
「んー、使わなーい」
「そういえばそうっすね。あれを使われたらもっと厳しいと思うっす」
前回のイベントで一度だけ見たフレデリカの奥の手。文字通り多重魔法以上の弾幕、数え切れないほどの魔法陣を展開し攻撃する超多重魔法を使えば、ベルベットにももっと勝つことができ、ともすればサリーにも勝ちうる。
それほどの出力があるのに使わないでいるのには訳があるはずだと二人はフレデリカの方を見る。
「ベルベットはまだしも……サリーはちょっと見せたらすぐ合わせてくるでしょー?まだちゃんと戦うチャンスがあるんだしー、その時までとっておかないと」
節目となるイベント。そこでは対人戦も予定されている。それがどんな形になるかはまだ不明瞭な部分が多いが、戦えるというならフレデリカはサリーと戦いに行くだろう。
「勝ち逃げはさせないんだからねー」
「負けないよ。今だけは」
「うっ……どうかなー、そのために超多重魔法は残してある訳だしねー」
自信あり気にプレッシャーを放つサリーに少し気圧されながらも対抗するフレデリカ。
それを見ながらベルベットは今日の決闘を一人振り返る。
フレデリカは良くも悪くもいつも通り。既に戦術はある程度把握しており、【マナの海】を使ってこない限り相性や関係は覆らない。
それに比べてサリーには変化があった。初めて決闘をした時ですらそのプレイヤースキルには驚かされたが、今はその頃は手を抜いていたのだと感じられるほど、サリーの動きは正確で隙のないものになっていた。
雷の雨を避けるのは当たり前で、目眩しからの奇襲や新たな仕掛けを使っての攻撃も捌ききる。
端的に言えば、仕上がっている。一体何と戦うつもりなのかというほど完璧に。
「……」
いや、ベルベットはサリーが誰と戦うつもりなのかを知っている。ただ、その相手がこのサリーに対処できる光景は思い浮かばないのだ。
いい勝負になる、そんな未来はあるだろうか。
止まることを知らないサリーの上達、研ぎ澄まされていく技術に思いを馳せていると、ふとサリーと目があった。
「全力でやらないと意味がないから」
「……そうっすね」
表情に出ていただろうかと、ベルベットは首を軽く振っていつも通りを意識する。
手を抜くつもりは欠片もないというなら、戦う相手が、メイプルがこの領域まで来るしかない。それが難しいことだとしても、そうでなければサリーの悲願は成就しえない。
「迷う理由も分かるっす」
「……そう、ありがとう」
「?」
何はともあれ時は過ぎる。多くのプレイヤーがそれぞれの理由を持って待つ対人戦はいずれ必ずやってくるのである。
421名前:名無しの弓使い
十層広過ぎるかも
422名前:名無しの槍使い
そっちはどこから攻略してる?
423名前:名無しの弓使い
一層エリアは終わって今八層エリア
面倒な気がするところから潰そうと思って……
424名前:名無しの大盾使い
謎解きがあるとかって聞いたけど
425名前:名無しの弓使い
そう!
難しいんだこれが……
攻略情報も絶妙に少ないし
426名前:名無しの大剣使い
俺のギルドみたいに前から進めていくと八層エリアは最後になるから少ないのかもな
427名前:名無しの大盾使い
うちは順調に進んでいるとは聞いている
428名前:名無しの弓使い
タスケテクダサイ……
429名前:名無しの魔法使い
結構なんでも上手く攻略してくよな
人数めちゃくちゃ少ないのに
430名前:名無しの大盾使い
皆一芸特化だからなあ
ハマった時の爆発力は高いぞ
431名前:名無しの魔法使い
ハマっている場面多くないですか?
432名前:名無しの槍使い
特化先が一つで済んでいるかは怪しい
433名前:名無しの大剣使い
それはそう
まー困ったら声かけてくれれば情報提供くらいはできる
攻略した所に限るがな!
434名前:名無しの弓使い
十分過ぎる
ありがてえ……
435名前:名無しの魔法使い
やっぱ隠しスキル探しはしばらく先だなあ
今はクエストに集中したい
436名前:名無しの大剣使い
偶然の発見に期待しておこうぜ
437名前:名無しの槍使い
それで見つかるんならきっと今頃俺の槍は七つに分裂しながら火と氷を放ってる
438名前:名無しの魔法使い
分かる
でも狙いようもないもんな
439名前:名無しの大盾使い
俺もそろそろ何か見つけてえ
差が開いていく
440名前:名無しの弓使い
自分に適合するかどうかもあるしなあ
俺の魔法が強くなってもいまいち噛み合わない
441名前:名無しの魔法使い
LUKのステータスどこ
442名前:名無しの弓使い
ないよ
ないはずだよ
443名前:名無しの槍使い
ないはずなんだよなあ
444名前:名無しの大剣使い
風水始めるしかねえ!
スキル運上昇の陣を作ろう!
445名前:名無しの魔法使い
まずは朝の占いからいくか
446名前:名無しの弓使い
まずは無課金運気UPチャレンジから
かしこい




