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防御特化と魔力収集。

探索を繰り返しているうち日々は過ぎていく。ここに至るまでにさまざまなスキルを手に入れてきた楓達にとって、十層のモンスターは強力ではあるものの決して勝てない相手ではなかった。大きく躓くこともなく、順調にクエストをクリアしていきベーシックな一層エリアのクエストは概ね制覇したと言っていい状況だ。

もちろん、隠しイベントなどはあるだろうが、それは魔王へ続くクエストとは直接関係がないため、ここは一旦後回しだ。

二人は荷物をまとめて教室を出ると今日も帰路に着く。


「どう楓、今日って行けそう?」


「うん!ふふふ、そのために先に勉強しておきました!」


「おー、いいね」


「理沙は大丈夫?」


「今更それで止められちゃうようなヘマはしないって」


「なら安心だね!」


「じゃあ帰ったらゲーム内で会おうか。そろそろ強いボスの気配って感じだったし」


「気合いいれていこー!」

二人は早足で家まで帰り着くと、ささっと着替えを済ませて『New World Online』へと飛び込んだ。




メイプルがギルドホームへやってくると、そこには既にサリーが待っていた。


「お待たせ」


「こっちも今来たとこ」

サリーの方へと駆け寄っていくメイプルは、ここで十層のギルドホーム特有のあることに気づく。


「あ、もう全部繋がってるんだね」


「みたいだね。皆のお陰。あとでお礼言っておこう」

各町へとつながる魔法陣。浅く広く【楓の木】がバラバラに探索してくれたお陰で全ての町を自由に行き来できるようになった。

これでようやく十層探索の下地も整ったと言える。


「さて、今日は強そうなボスがいるだろうクエストを受けにいく訳だけど」


「まだ情報も出揃ってないんだよね」

確認したクエスト名からして恐らく大ボス。ただ、前回のログイン時は時間が足りずに次回持ち越しとなったため、細かい内容は二人にも分からない。


「どの町からも探索を進められるから、自由度が高くなった分全体的に情報は不足気味」


「順番が決まってたら皆同じ所に行くから参考にしやすいけど十層は……」


「そういうこと」


「誰かに手伝ってもらう?万全を期すって感じで!」


「しっかり勝ちたいし、それも悪くないね。メイプルが連絡取れる中で今日来れそうな人はいる?」

メイプルがメッセージを送れる相手なら、誰が来ても頼もしい。規格外に強くなったメイプルの交友関係は自然と強者でいっぱいになっていた。メイプルは早速メッセージを送るとしばし返信を待つ。


「……来てくれるって!」


「お、これで相当なボスが来ても戦えそうだね」

二人がしばらく待っていると魔法陣が光り輝きギルドホームに二人のプレイヤーがやってくる。


「メイプルさん!」


「攻略は順調ですか?」


「マイ、ユイー!手伝ってくれてありがとう!」


「「ボス相手なら私達に任せてくださいっ!」」

メイプルが声をかけたのはマイとユイ。初めて会ってスカウトした時から随分経って、今や【楓の木】の枠を飛び越えて全プレイヤーの中でもトップと言っていい攻撃力を持ち、すっかり頼れるメインアタッカーとして成長した二人だ。


「二人の方は探索は順調?」


「私達は今はカナデさんとイズさんと一緒に三層っぽい所を中心に探索中です……!」


「いくつか条件があるんですけど、それを達成していけば三層みたいな飛行機械も使えたりするみたいです!」

十層限定だったりといくつか制限はあるようだが、自在に空を飛べるブーツ型の飛行機械があれば縦横無尽に飛び回って自由度の高い戦闘ができるだろう。


「機械の方から攻略するのが正解だったかあ」


「私達で効率のいい手に入れ方を教えられると思います!」


「助かる!あの靴あるだけで三層の戦闘は別次元のことができたし。何はともあれ持ってはおきたいね」

やはりまだ未探索の場所も魅力的な要素で溢れている。時間がいくらあっても足りないくらいだ。


「こっちも順調!探索でスキルも手に入れたよ」


「「どんなスキルですか?」」


「えーっとね。分裂して私の見た目の毒を作るんだ」


「「??」」


「その後破裂して毒を撒き散らしてくれるの!」


「「????」」


「間違ってはないけどね」

二人の頭の中では、裂けてそれぞれに動き出したメイプルが、内側から爆発するイメージが流れていた。出来の悪い想像上の宇宙人か何かだろうか。


「それは実際に見てもらった方が早いとして、今回は二人にボス討伐を手伝って欲しいんだ」


「は、はい!」


「大丈夫です……!」

いきなり驚かされてしまったが、ここは一旦気を取り直して四人はクエストを受けに行く。


「あ、でも二人ってクエスト受けられるのかな?」

メイプルが今回受けに行くのは、前提となるクエストをいくつかクリアしたことで出現したものだ。マイとユイはその前提となるクエストをクリアしていない。


「そこに関しては大丈夫。クエストは受けられないんだけどついてきて手伝ってもらうことはできるし、最終的に魔王討伐にも参加できる」


「ほんと!?」


「本当本当。だから安心してクエストを進めればいいよ」

サリーはどうしてなのかはまだ言わないものの、メイプルの不安は解消された。これで心置きなく四人でボスの討伐に向かうことができる。


「じゃあクエストを受けに行こう!」

メイプルは三人を連れてクエストを受けに行く。向かうのはこれまでクエストを受けていたものと同じ建物。そこまでの道も慣れたもの、迷うことなく真っ直ぐ目的地へと向かい、いつも通り室内にいるリーダーである男性に声をかける。


「よく来てくれた。君達のお陰で脅威は順調に排除できている。本当に助かっているよ。そこでだ、そんな君達に折り入って頼みがある」

告げられたのはこれまでで最も強力と言っていい魔王の手先が暴れているということ。そして依頼内容は単純明快。それの撃破だ。


「一筋縄ではいかない相手だ。こちらも調査を行い対策としてアイテムを用意した。数は少ないが持っていって助けとして欲しい」


「ありがとうございます!」

メイプルは男からアイテムを受け取る。両の手のひらの上には野球のボールくらいの大きさ、重さの黒い球が三つ。


「しばらくすればまた用意できる。なくなったなら尋ねてくれ」

つまり、なくなった場合は補給できるが、最大数は三個ということになるだろうとサリーが補足する。


「大事に使わないと……!」


「あとで効果を確認しておきましょう!」


「ボスに効くアイテムのはずです」


「君達の力を信じている。活発化している他の魔物はこちらで抑えてみせる。君達の戦いの邪魔はさせない」


「はいっ!」

クエスト達成条件はボスの撃破。報酬には『魔王の魔力・I』という見慣れない単語が書かれている。ともあれクエストを受け終えたメイプル達は建物から出て、そのことについて話しながらフィールド方向へと向かっていく。


「その『魔王の魔力』が十層のボスにつながるキーアイテムらしいよ」


「なるほど」


「これならどのクエストまで進めればいいか分かりやすくて助かります」


「他のエリアも最後のクエストでアイテムが手に入るんでしょうか……?」


「そこはまだ分からない。なんだかんだ言ってこの町から攻略する人が一番多いみたいで、他のエリアの情報はかなり少なかったんだよね」

攻略するのがどこからでもいいなら、癖がなく十層に続くダンジョンの出口からも近いこの町を最初に選ぶプレイヤーが多いのもおかしなことではない。


「そのあたりは楽しみにしておくとして……今回はツキミとユキミに乗っていくのが一番速いかな」

マイとユイもメイプル同様、ステータスがあまりにも極端なためドラゴンに乗ることはできない。ここはテイムモンスターの力を借りるより他にないだろう。


「ツキミ!」


「ユキミ!」

ツキミとユキミの背に乗ってフィールドを走り抜けていく。マイとユイが自分達を囲うように『救いの手』に持たせた大槌を周回させていることで、近づくモンスターは順に即死して消えていく。


「これなら目的地までは問題なさそうだね」


「すごーい!」


「モンスターを倒すのは」


「得意分野です!」

その言葉に偽りなし。タフなモンスターも耐えられず、素早いモンスターも全ての大槌を躱すことは不可能だ。

基本的にはレベル上げのために存在する、フィールドのどうということないモンスター達では、もはや一秒足を止めることもできない。

メイプル達としてもこんな所で止まっているつもりもない。目指すはボスの元、ただそれだけだと四人はマップが示すクエストの目的地まで駆けていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そこのけそこのけダブルハリケーンが通る。
[良い点] 魔王の魔力を集める。 どこかの祭壇に捧げる。 魔王が復活し始める。 それをメイプルが喰う。 メイプルが魔王になる。 こういう流れですね分かります。
[良い点] マイもユイも強くなったものだ。 [気になる点] >>クエストは受けられないんだけどついてきて手伝ってもらうことはできる 戦力として連れて行く事ができるのは大きいですね。 [一言] 低レベ…
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