防御特化と日常7。
「ふふふ、大量大量!」
「隅まで探索したかいがあったね」
出てくるモンスターを対処しきれることが分かったメイプル達は、全通路の探索を終えて各通路への分岐点まで戻ってくる。
スキルスクロールこそなかったものの、全ての宝箱を開けた結果、素材や装備、高額換金が可能なアイテムなど十分すぎる成果を得ることができた。
「ちょうど必要なものも見つかったしな」
「後回しにしておいて正解だったわね」
「偶然正しい攻略順だったというわけだ」
一階正面へ伸びる通路の先で手に入れたのは二階の通路を開放するための鍵だった。
二階についても左右の通路には鍵らしきものはなかった。となれば、使い先は残る正面の通路を閉ざす扉。これしかない。
「もう他に僕らが探索できる場所はないみたいだし……」
「「早速行ってみましょう!」」
「うん!行こう!」
【身捧ぐ慈愛】を発動したままのメイプルを先頭に八人が鍵を開けて先の様子を確認する。
ほんの少し通路が伸びた先は奥に扉が一つある円形の部屋だった。半径が十メートルほどと、ここまで探索してきた通路や小部屋とは雰囲気が違う。
部屋と通路の境界に立って天井から床までじっと見渡してみるが、静まり返った部屋の中には何の気配もない。
「んー、ボスっぽいけど……」
「奥に扉があるからな。外観的にも最奥って感じじゃない」
「だが、何が出てきてもおかしくはない。注意しよう」
「まず入った瞬間だね」
「そうね。使えるかもしれないから、ここに先に大砲は設置しておくわ」
敵の気配がないのなら事前準備もし放題だ。マイとユイにはかけられるだけのバフをかけて、部屋に砲口を向けて大砲を並べていく。
何もいないのなら回収すればいいだけである。
「じゃあせーので!」
メイプルの掛け声で全員でタイミングを合わせて部屋へと侵入する。
それと同時、空中に黒い炎が発生し、凄まじい勢いで空中に広がる。
そしてその直後炎が弾けたかと思うと、中から黒い鱗に覆われた手足、同色の翼と尾を持った少女が現れる。
それは九層における炎と荒地の国の国王その人だった。
「念入りに隠しておいたはずだが……よくここまでこれたもんだな」
王は空中に炎の塊をいくつか生み出すと、それを一気に膨れ上がらせて、メイプル達に向かってにっと笑みを見せる。
「思わぬ来客だ。遊んでけよ。ま、炭にならないよう気をつけてな!」
「メイプル!構えて!」
「【ピアースガード】【救済の残光】!」
「そうらっ!」
有無を言わせぬ先制攻撃。
部屋を埋め尽くす巨大な黒い火球は地面に接触すると同時、天井まで伸びる火柱となり八人を包み込むのだった。




