防御特化と日常4。
隠しエリアへと侵入した八人に早速モンスターが襲いかかる。黒いもやを纏った鎧、さらに盾と剣を構えて防御を固めて人間達が暗がりから次々に出てきて、その行手を阻まんとする。
「「ええいっ!」」
といっても、あくまで『阻もうとした』それだけだ。マイとユイの振り回す大槌が命中するだけで、固めた防御は意味をなさず、盾ごとひしゃげ、ぐしゃっと潰れて爆散する。
「おしっ、ちゃんと効くな」
「数は多いが一撃であることに変わりがないなら問題ないだろう」
フルメンバーの【楓の木】がとる戦略はいくつかのステップに分かれる。
第一ステップはメインアタッカーであるマイとユイに、全員でバフをかけてバックアップするというものだ。
これが単純明快かつ強力。故にまずはここからスタートさせる。モンスターがこの試練を乗り越えられるものかどうかのチェックが入るのだ。
一撃がそれ以外か。気にするのはそこだけでいい。
「目指すはあのお城ね」
「うんうん、この調子なら苦戦せずに辿り着けそうだね」
「さっすが攻撃極振り!」
「文字通り手数も増えたしね」
【救いの手】による遠隔操作は接近されたくない二人の弱点をカバーするのにぴったりだった。
「ただのモンスターなら……!」
「任せてくださいっ!」
その言葉通り迫り来るモンスターを叩き潰して、八人は着々と城に近づいていく。
とはいえ、全てのモンスターをシャットアウトできるわけではない。八人を囲うように回転させる大槌は上下や各大槌間に隙間ができてしまう。
プレイヤーと違い的確にそこをついてはこないものの、すり抜けることもある。
「【ダブルスラッシュ】」
「【バーストフレイム】!」
「【血刀】!」
ただ、それはあくまで第一段階を突破しただけにすぎない。
当たれば即死のハンマーを抜けた先、待ち構える【楓の木】の面々に貫通攻撃を当てることでしか、勝負の土俵に上がれはしないのだ。
すり抜けるモンスターに飲み集中するメイプル達による手厚いカバー。ここを乗り越える。
端的に言うと、それは無理である。
あまりに荷が重すぎる。吹き飛んでいくモンスターを責めるのも酷というものだ。
蹂躙、鏖殺。無慈悲に全てを殴り倒して、一行の前に城の入り口が近づいてきた。
「おー……おっきいねー」
「中が作り込まれてるなら結構広そう。トラップにも気をつけて」
「うん!」
城までの道のりは前座も前座。これくらいは乗り越えてこれなければならない。
「ここからが本番かな?ふふ、基本戦法は変わらないだろうけど」
「そうね。アイテムはまだまだあるわ。バフもかけ放題よ」
「変な奴が出てきたら俺とカスミとサリーメインで対処しよう。二人の攻撃を素直に受けてくれる奴はどうとでもなる」
「ですね。スピードタイプとか遠距離攻撃はこっちでやりましょう」
向き不向きに合わせて中心に据えるアタッカーを変更する。全員の戦闘スタイルにはそれぞれ強みと弱みがある。それを分かった上で強みを活かして戦うことが重要だ。
それぞれの隙や弱点を埋めることが八人で戦う意義である。
細かな装飾がなされた大きな扉。城の入り口に立ったメイプルは振り返って七人を見る。
「じゃあ、開けまーす!」
全員が頷くのを確認してメイプルが扉に触れると、赤い光が走り、ひとりでに重い音を立てて扉が開き始める。
何かが待ち受けるであろう最奥に向けて、【楓の木】の古城探索が始まった。




