防御特化と日常2。
回転する大槌で炎を巻き上げながら大量のモンスターを粉砕したメイプル達は、満足いくだけのドロップアイテムを手に入れ、燃え盛る炎の壁をすり抜けて外へと出てくる。
「流石の攻撃力だったね!こんなに簡単にたくさん集まっちゃった!」
「メイプルさんとサリーさんのお陰です!」
「モンスターをたくさん集めてもらえたので……」
マイとユイの攻撃に耐えられる雑魚モンスターは存在しない。二人の攻撃力に合わせたHPのモンスターをその辺りに配置するわけにもいかないからだ。
結果として狩りはすこぶる順調に進み、レベルも上がった。メイプルとマイユイの連携は無慈悲かつ強力だ。
メイプルの防御を突破し、マイとユイの攻撃に耐える。
フィールドがそんな怪物の跋扈する魔境と化す頃まで、この安定した蹂躙を止められるものはいない。
「今日はそろそろ終わりかな」
「そうだねー。休憩しながらだったけど疲れちゃったかも」
「動かなくていい分楽にはなりましたけど……」
「結構長く続けてましたから」
サリーが【水操術】のスキルを持っていることもあり、モンスターは絶え間なく呼び寄せられる。
途中から回転する大槌はそのままに、四人は椅子を取り出してくつろいでいた。
メイプルがいる限りことここでの戦闘において不測の事態など起こり得ない。
そんな四人が今日は終わりにしようかと思っていると、ちょうどそこにクロムとカスミがやってきた。
「おーまだここにいたか」
「どうだ。そちらは順調だろうか?」
「はい!マイとユイがすごくって!」
メイプルが手に入れたドロップアイテムの数を伝えると二人は想像以上だというふうに目を丸くする。
「前から思ってはいたが……流石に八本持ちになってから破壊力が段違いだよなあ」
「細かい操作はまだできないんですけど……」
「まとめて動かすのはもうばっちりです!」
「二人の場合はそれで十分だろう」
かすりでもすれば爆散確定。細かい動作など必要ない。大槌が名前通り大きな武器であるため、敵に全ての武器を突きつければ相当大回りしなくては避けられない。
「二人もここで狩りですか?私達は切り上げようかなと思っていたところで」
「いや、ちょっと近くを通りかかったからな。ハクならすぐだと思って寄ってみたんだ。それに、一つ面白そうなものを見つけたからその報告も兼ねてだ」
面白そうなもの。カスミからそういった報告があるのは珍しい。これまで【楓の木】面白そうなものを見つけてくるのは大体メイプルだったのだ。
もっとも、本人は見つけようと思って見つけているわけではないのだが。
「メイプルが転移先で【再誕の闇】を手に入れただろ?あんな感じで転移できるポイントを見つけたんだよ」
「ただ、転移先は思った以上に先が長そうだったからな。一旦引いてきたというわけだ」
「どんな感じだったの?」
カスミ曰く、真っ黒な草木が生い茂り、【再誕の闇】にも似た靄があちこちに漂う不気味な場所とのことだ。
「何かありそうです!」
「いかにも……って感じです」
十層の実装前に、残っていた九層のクエストを進めていくうちに偶然見つけたもので、転移先のエリアのボリュームがかなりありそうだったため、【楓の木】全員でしっかり攻略する方がいいと踏んだのだ。
「どうだ?十層前に一つ冒険していくっていうのは」
「賛成です!」
「イズさんとカナデにも聞いておきましょう。何かギミックがあったら二人の力も必要になりそうです」
「ふむ、まずは日程を合わせるところからだな」
「どんなモンスターがいるかな?お姉ちゃん」
「あんまり素早くないといいな……」
「まあそこは俺達でカバーする。期待してるぜ、なんてったってうちのメインアタッカーだからな」
「「はいっ!」」
イベント以外にも目的は見つかった。マイとユイのおかげでアイテム集めも問題ない【楓の木】は全員でその未知のエリアへと向かうことにしたのだった。




