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防御特化と極光。

「嘘……!?」

ウィルバート同様、ヒナタも作戦の失敗を理解した。妨害できる位置取り。動きを見せた瞬間移動速度を低下させる。

そのはずだった。


ヒナタのスキル宣言に先んじて、【神隠し】によってあらゆる効果を受けない体になったサリーは一瞬にして範囲外へと走り抜けたのである。

貴重な防御リソースを一切の迷いなく切ってみせた、異様な判断の早さが状況を一変させた。


「【緊急充電】!」

驚いて固まっていたヒナタをベルベットの声が引き戻す。

空から降った雷がベルベットに再度電撃を纏わせる。

とはいえこれは文字通り緊急用。【過剰蓄電】のデメリットを受ける時間を遅らせて、ほんの少しの間電撃を使えるようにする最後の手段だ。


「【電磁跳躍】!」

ベルベットは雷を残して一気に跳躍する。ヒナタによる重力制御によって向かう先は空だ。

暗闇に青い炎の尾を引いて、リリィの操縦する飛行機械が二人へと接近する。


「レイ【流星】!」

それを見たペインがレイに乗って一気に空へと舞い上がる。


「落とせ!レイ【聖竜の息吹】!」


「【再生産】【傀儡の城壁】!」

レイの放った輝くブレスは、装備を切り替えたリリィが呼び出した兵士でできた壁を破壊し、足場の機械を砕き割る。


「くっ……!」


「【範囲拡大】【光輝ノ聖剣】!」

空中に投げ出されたリリィとウィルバートに対してそのまま光の奔流を放つ。

それがまさに直撃せんとするその瞬間。二人は強烈な力によって下方向に引っ張られてその攻撃を回避する。


「させません!」

ヒナタが重力を操って下方向へと引っ張ったことで、四人の距離も詰まる。

周囲から大量の魔法が降り注ぐ中、リリィは手にした旗を振った。


「【陣形変更】!」



直後、四人の姿が消失する。



転移に近いこのスキルは、高い外壁が立ちはだかっていようと、プレイヤーに囲まれていようと関係ない。

それを見てカスミとクロムはアイコンタクトを交わすと、真っ直ぐに外壁へと走り出す。

空からはペイン。それを見て続々とその場にいた者が後を追いかける。

瞬間移動ができても、この場から離れられるだけだ。メイプルの【方舟】を知っている三人には、【陣形変更】もそう遠くまで行くことはできないだろうと予測できていた。

門を抜け、フィールドを見渡した所で、カスミはリリィの飛行機械のものだろう青い炎を確認する。


「ハク!【超巨大化】!」


「乗せてもらうぞ!」

反応が早かった【楓の木】の二人、そしてその前を飛行速度に優れたレイが行く。


「よし、追いつける!」


「ああ!同じ機械でもメイプルの飛行ほど速くねえな!」

距離が詰まる中、夜空に浮かんだ青い炎は角度を変えて一気に地面に降りていく。

上空のレイも高度を下げ、ついに四人を視認できる程に近づいた。


「流石に速いっすね!」

再戦。緊張感が空気を張り詰めさせる中。ベルベットの放電によるバチバチという音が静寂を破る。


「【出力上昇】!【極光】!」

ベルベットを中心に超広範囲の地面が光り輝く。

範囲を強化した雷撃。轟音と共に天地を繋ぐ白い柱が三人を押しとどめる。

時間にして数秒。轟音が収まり光の柱が消滅した時、四人の姿はそこにはなかった。


「目眩しか……!」


「探すぞ!どういうわけか索敵は弾かれるらしい。カスミ、逃げ道塞ぐ感じで頼む!」

ベルベットとそれに追従できるヒナタはともかく、リリィとウィルバートを連れてはそう遠くへはいけない。

数秒のうちに消えたのであればすぐそばにいるはずだ。

ペインは空から、カスミとクロムは物陰を攻撃しつつ地上をくまなく探索する。



合流したプレイヤーもそこに加わって全員で辺りを徹底的に探して回ったその結果。


分かったのは、間違いなくこの辺りには誰もいないということだけだった。

姿を消す直前。様子を確認したのはペイン、クロム、カスミの三人だ。


「どういうことだ?んなことあんのか……?」


「途中で見逃してはいないはずだ。なら探していた時点ではそこにいなかったということになる」


「空から見ている分には何かが飛んで逃げたということはない。不審なエフェクトも見えなかった」

となれば【極光】。あの光の柱が姿を隠したその瞬間。突然四人は消失したことになる。そう考えるしかないのだ。


「……何かしらの強力な退却手段によるものだと仮定する。そうすればベルベットとヒナタの無理な突撃にも納得できる」


「それはそうだな」


「ああ、【陣形変更】込みで壁の内側からでも帰れるっていう保険があったってことだ」


「作戦の失敗と同時に使用しなかった。ならそのスキルにも何か条件がある」

ペインはスキルによる脱出であると考えているようで、それはクロムとカスミも同じだった。

一連の動きから鑑みると、帰りは走って帰るつもりだったというより、スキルを準備していたからの方が自然だからだ。


「上手くやられたか」


「だな。まあ、仕方ねえ。サリーに感謝だな」


「凄まじい反応だった。ここまで読んでいたのだろうか?」


「次の策を考える。やはりリスクなしには彼女らを倒すことは難しいようだ」

中心となる戦力が圧倒的防御能力を持つ【楓の木】とバフによる強化中心に集団での戦闘を得意とする【集う聖剣】ということもあり、敵の攻撃を受け切り、切り返すというカウンター気味な戦い方が多くなっていたが、それでは敵に先手を許してしまう。

こちらから仕掛ける。ドレッドがいない今、【集う聖剣】にとっては難しくなったことだが、それでも。【楓の木】を作戦に組み込んで、ペインは次の策を模索するのだった。

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